これぞ正しく神罰
全てを掲げ、「作られた引き」を行った。
「俺はコストを30払い「極楽鳥 アストレリチア」を召喚!」
極楽鳥 アストレリチア。 それはこのフィールドに居る全ての地上生物は見ることすらも許されない超高高度に存在するモンスター。 故に
「極楽鳥 アストレリチアは自身の効果以外の効果を受け付けない! そして召喚時効果により、フィールドに居るHPが10以下のモンスターは全て破壊される。 その前に「染み渡った晴天」の効果を発動し、俺はアストレリチアのコスト分ライフコアを回復する。」
アストレリチアはいかなるモンスターをもその領域にいることを許さない。 神々しい光と共に、サーカスボール、ジェムケリー、そして救われし少女は消えていった。 その神々しい光は俺に癒しの光を与える。
「ははは! モンスター効果で自滅してるじゃねぇか! それに効果が通用しないだあ? こいつの効果を忘れたか!? こいつが破壊されたところで俺の捨て場からモンスターは召喚される! これがどういう事か分かるか? お前は自分で自分を殺したんだよ!」
奴の虚言などもはや俺の耳には聞こえない。 いや、聞かないようにしていた。 もうこのモンスターが出た以上、負ける見込みは薄れたのだから。
「コンバットタイム。 アストレリチアでグレイドルバウンサーに攻撃。 たとえどれだけ強力なカード効果を持っていたとしても、この遥か上空に居るアストレリチアには届かない。」
そんな事を言っていたら、上から光線のようなものが降ってきて、グレイドルバウンサーを傲慢なる装飾ごと破壊した。 だがこれで倒れるとは当然思っては居ない。
「グレイドルバウンサーの効果! このカードが破壊された時、捨て場に存在するグレイドルバウンサー以外のモンスター全てを、コストを支払わずに召喚する! 折角出したのに無駄どころか更に仲間を増やした事になったなぁ!」
いい加減奴の言葉がストレスになってくる。 分かってないで攻撃を仕掛けたと思うのか。 俺のエースが本当にアストレリチアだけだと思うのか。 スキルで出したカードで完全な勝利を本当にもたらしてくれると思っているのか。 アストレリチアが出たのなんかはただの偶然の産物。 だが俺はアストレリチアを出したことで分かる。 こいつが全てを解決してくれることを。
「スリーピースブロックでダブルプロテクトウォーリアに攻撃。 ま、そんな攻撃をしたところで意味はないがな。」
俺は既に悟っていた。 俺がスキルを発動したこと。 そしてグレイドルバウンサー以上のモンスターやこちらの攻撃を耐え凌ぐインタラプトカードがないことを。
「そんな攻撃痛くも痒くもない。 さあ、宣言しな。 自分の終わりを。」
「クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える。」
「ははははは! これで俺の勝ちだ! お前はもう成す術なく俺に破れるんだ! それこそ俺の完全勝利を持ってしてな! 俺のオープニング、そしてドロー! プラポレーションタイム!」
あいつは随分と笑っているが、もはや俺には元々滑稽だったものが更に滑稽になったようにしか見えなくなっていた。 というよりも、俺の作られた引きは今までだと相手に次の一撃を与えないための、言わば超逆転の1枚なのだが、今回の場合は違っていた。
止めの一撃になるカードを何故出さなかったのか。 それは俺が怒ることを止めたことに有ると思う。 感情が昂るからこその俺のスキルなのに、その怒りがどこかに行ってしまった。 それほどまでに、相手が道化とも捉えれるくらいに可笑しい様に見えているからであろう。 奴はおそらくハイテンション状態になっているせいで、頭の中で正しい判断が出来ていないのかもしれない。
「手札のカードはいまいちだが、そのままコンバットタイム! ダブルプロテクトウォーリアでスリーピースブロックを攻撃!」
そしてダメージを与えるべく、スリーピースブロックを攻撃した。 ダメージを受けるが、先にライフを回復していたので、まだ余裕は生まれる。
「スリーピースブロックの効果により、「ツーピースブロック」として再度召喚を行う。」
「へ! 数が一個減った位じゃねぇか! ならそのまま遠距離魔童子でツーピースブロックを攻撃!」
そしてツーピースブロックも破壊される。
「ツーピースブロックの効果、「ワンピースブロック」としてフィールドのモンスターの装備カードとなる。 アストレリチアに装備は出来るが、効果は発揮されない。」
「どうせ上の奴は死なないんだ。 攻撃しても無駄だな。 クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える! 結局は空を飛ぶ木偶の坊ってな。 ははは!」
なんとでも笑っていろ。 お前はアストレリチアを攻撃しなかった。 それがどんなことを意味するのか、今に分かる事だろう。
「俺のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。」
カードを確認する。 すると思わず笑ってしまった。 別に意図していたわけでも、ここまで分かっていたわけでも無いのに、このカードが手元に来るとは。
「俺はコストを24支払い「夢に誘う流離い人」を召喚。 流離い人の効果により、俺は捨て場の「雨降りにさ迷う少女」を、コストを支払わない変わりに、召喚時効果を無効にして召喚する。 そして「染み渡った晴天」が領域展開していることにより、「雨降りにさ迷う少女」は「救われし少女」に変わる。」
この時点で勝利が確定した訳じゃない。 が、「染み渡った晴天」の効果により戦闘破壊が無効になった今、奴の引き運次第の勝利ともなっているのは変わってはいない。 むしろトドメを刺すかのような布陣にすら感じられる。
「コンバットタイム。 アストレリチアでダブルプロテクトウォーリアを攻撃。」
空から放たれた光によりダブルプロテクトウォーリアは綺麗に消滅していった。 ダメージは入らないものの、面倒な盾は一撃を持って倒せた。
「流離い人で中級僧侶を攻撃。」
攻撃力が上がっているので、ギリギリだが倒せる。 これで残った魔童子も倒すことが出来る。
「救われし少女で遠距離魔童子を攻撃。」
救われし少女の攻撃により、魔童子も倒される。 これで相手のフィールドは更地と化したがまだ終わりではない。
「クールタイムに入り、流離い人の効果発動。 このカードが戦闘によって相手のモンスターを破壊した時、そのモンスターを攻撃力を半分にしてこちら側に召喚できる。」
「はっ!? 俺のモンスターを奪うのか!?」
奪う、か。 確かにそれは正しいだろう。 だがこれはカードゲームとはいえ戦いなのだ。 容赦なんかしない。 俺のフィールドに中級僧侶が加わった。
「俺はエンディングを迎える。」
「くそっ! 俺のオープニング、そしてドロー! プラポレーションタイム!」
そしてダイトは引いたカードを見て、顔を歪ませた。
「どうした? この戦局を変えるカードは来たか?」
こんな言葉は当然皮肉だ。 あれだけ豪語しておきながら、いざ戦力がひっくり返ればなにも出来なくなる。
「・・・クールタイムに入り・・・俺はエンディングを迎える! くそっ! くそっ! くそっ!! なんでこんな時に来ないんだ! 俺は勇者の末裔なんだぞ!俺は誰にも負けないんだよ!」
「そんな上辺だけの気持ちだけでやっていけるほど世界は甘くないのは知っていた事だろ?」
俺はもう自分のターンの宣言をしないで、山札からカードを引く。 ここまで来たならもうこれ以上の対話に意味はない。
「自分が強ければ他者からは慕われるだけでいい。 今のこの現状と同じだな。 結局天は、ちゃんと見てるんだよ。」
「お、俺は、負けないんだ・・・こんなところで負けて言い訳が・・・」
「現実も見れない奴に、本当に勝利が有ると思うなら、その考えからやり直さないとな。 コンバットタイム。 アストレリチアの光を受けよ!」
そうして上空から放たれる光が、ダイトを大きく包み込んだ。 そしてダイトのライフコアのカウントが「0」になる。
「クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える。 これが、全ての終幕だ。」
『勝者 セイジ ノムラ。 条件により、ダイトの情報を開示します。』
「ま、そんなものはいらないけどな。 さてと」
結果を聞いたのち、俺はAI領域が閉じる前に果たすべき事をしようとダイトに近付く。 既に虚ろになっていたダイトは俺が近付いたことに気が付いて、俺を睨み付けた。
「こ、今回は負けたが、次は絶対に負けない! あんなスキルがあったからお前は俺に勝てたんだ! スキルのお陰だ! お前の力じゃない!」
それを言うのかこいつ。 じゃあ敢えてそのブーメランを返してやろうかな。 返した上で確実に神様のところに送ってやる。
「ああそうさ。 スキルは神様から貰ったものだ。 だがそれを言うならお前もだろう? 与えられた人物が同じなら、後は自分の実力だろう?」
「黙れ! 今はいい気になっているが、次に会った時は・・・」
「俺達はもう二度と会わねぇよ。 この世界ではな。」
そう言って俺は右手を奴に近付ける。 すると感覚的に右手になにか力が湧いてきた。 そういえばどうやって神様から授かった力を使うのか疑問に思っていたのだが、どうやら自分の思い込みでいいらしい。
「な、なんだよ・・・なにする気だよ!」
「安心しろ、殺しはしない。 だからもう一度本当の、お前をこの世界に送った奴じゃない神様と会って、本当の行き先を示されてこい。」
俺は右手を奴の頭に触れさせると、ダイトは一瞬で空へと上がっていった。 神の世界は天界だと聞くからそう言うことだろう。
「俺はお前が今以上に罪を犯していなければ、正しい世界へと神は導いてくれることを信じている。」
もう届かない台詞をAI領域が閉じる瞬間までに呟いた。
別に主人公を神の使いとかにはする気は無いですが、神から与えられたなら、神の力で返さないとと、自分の中で思ってるだけです。




