その名も傲慢なる装着
俺のフィールドには5体のモンスターが存在する。 そしてそれこそがこのデッキの最大の特徴にもなる。 どれだけ逆境に立たされようともそれをも越えるような、そんなデッキが、俺らしさなんだ。
「染み渡った晴天の効果発動! 自分フィールドのモンスターの攻撃力が5つ上がり、戦闘では破壊されなくなった。 さらに俺は自分フィールドに存在する最も攻撃力の高いモンスターのコスト分、ライフコアを回復することが出来る。」
「な、なんだその滅茶苦茶な効果!? ズルだろ!?そんなの!?」
ズルくなんかあるもんか。 代償は支払ってんだから、ある意味正当な効果だっての。
そして俺が確信を得たのは、このダイトという男は、自分が強いことを慢心しすぎて、自分に対して歯向かったり、正当な理由が無ければよっぽど戦ってこなかったのだろう。 確かに俺のデッキにはこの世界でも珍しいカード効果のものが多く存在するが、なにかと類似するカードは一つや二つ存在するだろうし、こういってはなんだが同じ効果でも、テーマに特化したカードだって存在するかもしれない。 そう言った考えに至らないというのは、自分の戦い方に満足してしまっているからだろう。 それがいまここに来て明かされているとも言えなくもない。
「コンバットタイム! 強襲竜でダブルプロテクトウォーリアを攻撃!」
強襲竜は一気に懐に潜り込んで、攻撃を行おうとするも、横に伸びた大きな盾に阻まれた。 だが火力の上がった盾にはヒビが入った。
「続けてサーカスボールで攻撃!」
そしてサーカスボールの体当たりにより、盾ごとダブルプロテクトウォーリアを倒す。 2回目の攻撃になるのでダイトのライフコアはあまり減らないが、それでも厄介だったモンスターはこれで倒せた。
「更にスリーピースブロックで中級僧侶を攻撃!」
スリーピースブロックの三位一体の攻撃に、中級僧侶はなす術無く倒れた。 今度は一撃なのでライフコアにもある程度は入る。
「ジェムケリーで遠距離魔童子に攻撃! この瞬間、ジェムケリーの効果により、ダイスを2回振る。 まずは1回目。」
1回目のダイスが振られる。 出目は「5」かなりでかい。
「ジェムケリーの効果により、この出目の2倍の数値分攻撃力を上げる。 そして2回目。」
2回目の出目は「3」だった。
「ジェムケリーのもう一つの効果により、このモンスターが戦闘破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける。」
「・・・はっ。 訳わかんねぇ効果だな。 そんなことしてなんになるんだよ?」
「その分相手に与えるダメージが増えれば儲けもんだ。 行け、ジェムケリー!」
ジェムケリーは2つの宝石を取り出して遠距離魔童子に投擲する。 そしてジェムケリーが投げた宝石の2つの内1つが割れ弾け、こちらのライフコアに飛び火する。 だがダメージとしては向こうの方が大きい。
「最後に行くんだ、救われし少女よ。 ライフコアを直接叩け。」
最後の攻撃でダイトのライフコアを確認すると、カウントがコンバットタイムに入る前に比べて大分減っていた。
「クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える。 さあ、そっちの番だぜ?」
あれだけ威勢があったのに、今度は黙りきってしまった。 俯いているせいか表情が全く読めない。
「おーい、どうした? カードを引きな。 手番回ってるぜ?」
さっき向こうが煽ってきたように、こちらも煽ってみる。 とてもじゃないか意味のある行為じゃないのは百も承知だ。
しかしその後で返ってきたのは、呪詛を唱えるかのような細々とした声だった。
「・・・こんなやつに負けるわけがない。 俺は強いんだ。 英雄なんだ。 勇者なんだ。 この世界の人間にそれを知らしめるんだ。 こんなところで負けて良いわけがない。 これは夢だ、俺は悪い夢を見ているんだ。 そうさ、これで仮に負けたとしても「夢でした」で終わりじゃないか。 恐れることなんてなにもないじゃないか。」
「いよいよ気にでも触れたか。」
こっちとしてもまさか声が届いてくるなんて思ってもみなかったが、やつの言葉を察するに、幻想に現を抜かしていたからか、現実を見れなくなっているようだ。 だがそんなことを言ったところで関係無い。
「そんなに夢で終わらせたいならさっさとカードを引きな。 それがどんな結果であろうと、それが最善手だろ?」
その言葉にダイトは身体を震わせた。 今ので完全に越えては行けない一線に踏み込んだのだろう。 だがこっちとしては知ったことではない。 努力無しで簡単に世界を蹂躙するようなやり方なんか認めてなるものか。 少しは現実を見直してもらおうか。
「・・・俺のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。」
気力だけで引いてやがるな? さて、何を引いたやら・・・
「・・・くっくっ・・・くっくっくっくっくっくっくっくっ。」
引いたカードを見た途端に笑っている。 奴のデッキのエースカードの登場か。
「・・・おい、もう俺は完全にキレたからな? 泣いて許しを乞いてももう許す気はない。 お前は死ぬ時までとことん痛ぶって痛ぶって、あの時逆らわなければと思わせるくらいに徹底的に嬲り殺しにしてやるからな。」
「御託はいい。 出すならさっさと出せ。」
「・・・っ! その減らず口もここで無くしてやる! 俺はコストを25支払い「秘宝絶対勇者 グレイドルバウンサー」を召喚!」
『モンスター:秘宝絶対勇者 グレイドルバウンサー レアリティ 金 コスト25
種族 人族
自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在する時、攻撃力が半分になる。
このカードは相手フィールドのモンスターにそれぞれ一度ずつ攻撃が出来る。
このカードが破壊された次のオープニング時、自分の捨て場に存在するこのカード以外のモンスターを、コストを支払わずに可能な限り召喚する。
ATK 20 HP 15』
単独での強化、複数回攻撃、破壊時の召喚。 確かに勇者に相応しい能力ではある。 だがこちらもただやられるためにいるわけではない。 攻撃としては痛手となるが、それでも耐えることは出来る。 凌ぎきれれば策はある。
「そして俺はここでスキル エレガント・ワーニングを発動! この効果によってグレイドルバウンサーは完全体になるのだ! どんな敵をも寄せ付けない。 正に優雅な姿へと変貌するのだ!」
そう言い放つダイトの姿は優雅とは程遠い存在である。 こんなやつにそんなスキルが付くのか?
『スキル:傲慢なる装着
「勇者」と名の付いたモンスターに装着可能。 破壊されるまで以下の効果を得る。
・このカードは効果による破壊を無効にする。
・装備したモンスターの攻撃力を5上げる。
・このカードが戦闘でモンスターを破壊できなかった時、相手フィールドのモンスター1体を破壊する。
・装備したモンスターに対する効果を無効にし、その効果を発動したモンスター、魔法、装備、領域カードを破壊する。』
かなりガチガチなスキル装備だな。 というかエレガントってそっちの意味なのか。 多分カタカナ表記だけ見てそう思ってるんだな。
「コンバットタイム! グレイドルバウンサー! その剣で真一文字に切り払ってしまえ!」
グレイドルバウンサーは剣を横に構えると、そのまま力強く剣を振るう。 かなりの衝撃が俺を襲う。
「染み渡った晴天の効果により、モンスターがフィールドに3体以上居る時、戦闘では破壊されない!」
「だがすべての戦闘ダメージの合計は受けてもらう! 耐えきれるかな? この痛みに!」
痛みが一身に伝わってくる。 これ程のダメージは今までに味わったことは無かった。 だからこそ立っていられるか分からなくなっていた。
「ぐっ! くぅ・・・」
「ははははは! そうだ! 俺は強いんだ! みんなひれ伏せ! 俺を讃えろ! 俺が世界なんだ! ははははは!」
戯れ言をほざきやがって。 そんなので付いてくる程人間は馬鹿じゃねぇぞ。 前の世界でどんな風に生きていたのかは知らない。 知らないが腹の中は相当ご立腹だったみたいだ。
「そういえばお前のモンスターは領域カードの効果で戦闘破壊はされないんだったな! でも効果による破壊は出来る! クールタイムに入り、傲慢なる装飾の効果によって、その竜を破壊する!」
剣から光を放ったと思ったら、いつの間にか強襲竜は消えていた。
「エンディングを迎えた時のこの清々しい気持ちはお前が与えてくれたんだ! お前が俺を罵った、そんな罵ったお前を俺が更に上を取る! 最っ高の気分だ! これまでに晴れ晴れとした気分が無かったくらいに! 俺は強者だ! 弱者になんかなってなるものか! 俺は強い! もう俺に勝とうなんて思わない方が身のためなくらいになぁ!」
「・・・そうかい。」
俺は奴の言葉を決して返さず、ただただ聞いていた。 だからこそ内から込み上げてくる怒りを露に出来た。
「・・・次は俺のターンだな。」
「はっ! この装備をしたグレイドルバウンサーに敵う者など存在しない! そのまま地面に跪いていれば、楽になるというものだぞ! ハッハッハッハッハッ・・・な、なんだ!? その光は!?」
ああ、お前に対する人への侮辱が、俺の怒りを最高潮にしたようだ。 こいつはこの世界に留まらせない。 それが俺の、神様から与えられた使命だ!
「俺のオープニング、そして、作られた引き!」
もう正直これのためだけに書いたようなものです。
ちなみに発音もほぼ一緒っぽい感じでした。 Google先生調べでは。




