報告、報告、報告
あれから貿易についてどうなったかと言えば、正直俺達が見てもかなり少ないと感じた。 具体的には木箱3つに積めるだけ積めた感じ。 これじゃあ貿易にすらならないのだが、逆にヒノマル側は貰わないとのこととなった。 つまりヒノマルとヨンマセの国との貿易はこれっきりといった具合だ。 手切れ金みたいだな。
『もう一度来るようならどうするんです?』
『改心していないようならば追い返すだけだ。 と言っておくことにするよ。 お主達もこの国にはあまり来ないだろうしな。』
『この国はまた来ますよ。 居心地がいいので。』
実際は懐かしさからくるホームシックの様なものなんだけどな。 零斗さんも同じことを考えているかもな。
そして俺達は特に足早にはならなかったが、ハーキュリーに帰ることにした。 名残惜しさは案外無いものであった。 もしかしたらもう一度来ると心の中に決めたからだろうか?
今回は先の国について知ることが出来たし、お土産もあるしいい旅行にはなったかなと思うところだ。
「空は飛んでいかなくても良かったのか?」
「前も言ったが魔法に関しては未知の領域に近いから、あまり公に使うのは悪いというやつさ。」
実際海の上なんかは飛んでいった方が速いのは当然なのだが、それで離れていってしまってはなんの意味もない。 郷には郷に従えというやつである。
1日半の船旅も終わり、ハーキュリーの地に戻ってくる。
「っはぁ~! この空気久しぶり~! 確かにいい国だったけど、ちょっと堅苦しい部分があったのよねぇ。 ま、それもひっくるめてあの国の魅力なんだろうけど。」
「そうですね。 良い旅となりました。」
サヴィとミルレもなんだかんだで満足しているようだ。 その証拠に別に来ている必要はないにも関わらず、まだ着物をしていたのだ。 アリフレアも向こうのメイド服のままだ。
「それもそうなのだが、今回の件はどのように説明する予定だ? セイジ。」
「そうさなぁ・・・今回の事は異例中の異例とも言えるし・・・まずは危険な国じゃないって事だけでも説明はするつもりだが。」
脅威にもならなければ戦争などを起こそうとも考えてなどいない。 友好的とは言えないが、少なくとも敵意を見せる様子はない。 報告するならばこんな辺りか。 変に脅威になるような事じゃなければミカラ様も特に何も言わないだろう。 そう思いながら俺達は宮殿に向かうのだった。
「お待ちしておりましたよ、セイジ。」
応接室に案内された俺達はミカラ様と対面する。 勿論そこにはゼルダとファルケンもいた。 ゼルダは帰る場所が場所だからこの場にいるのは分かるが、ファルケンは帰らなかったのか? それとも子供達に言った手前、帰るに帰れなくなった方が正しいか?
「ご無沙汰しておりました、ミカラ様。 とはいえ、かれこれ1週間程しか経っていないのですが。」
「それだけこの国に思い入れがあるということでしょう。 それでどうでしたか? ヒノマルは?」
ヒノマルでの出来事とこれまでの経緯を諸々説明する。 俺や零斗さんにとってはかなり懐かしい国だったこと、ヒノマルは貿易について考えていること、今後敵意を持たなければ向こうも干渉はしてこないこと。 そんな具合に話を出した。
「なるほど。 ヒノマルは独特な文化のある国。 なので余計に貿易を行う時はより慎重にならなければいけないということですね。」
「話についてはこちらで通して貰えば伝えることは出来ますので。」
とはいえハーキュリーに関しては新たにヒノマルと貿易を組まなくても国政は完全に出来ている。 他文化を取り入れるかはミカラ様次第というところだろう。
「あ、そうだ。 メスリ様はいらっしゃるでしょうか?」
「あの子なら恐らくは工房にいるわ。 どうかしたの?」
「デッキケースに新たな機能を付けられないか、少しばかり聞きたくて。」
「工房に、向かわれる、のですか? ご主人様。」
「そんなところ。 ここにいるものも連れていっても?」
「無下には扱わないでしょう。 邪魔のならないように配慮を。 それとこれが工房までの地図になりますわ。」
そうミカラ様から許可が出たので、一礼したあと、俺達は応接室を出て、工房への地図を見ながらその場所に向かうことにした。
「工房っていうから大きいのかと思ったっすけど、案外こじんまりしてるっすね。」
「そう言うなファルケン。 ミカラ様が言うには個人的欲求から始まったものらしいから、自分で作るだけならそんなに大きい工房は必要ないんだよ。」
そんなことを簡素に話し、工房に足を入れる。
「すみませーん。 メスリ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「ん? すまんが今日は訪問依頼は受け取らんぞい?」
俺が声をかけると、中から老人が現れる。 ヨボヨボそうにみえるが、しっかりと年期は入っている出で立ちだ。
「どうした? じいさん。 ん? おお、セイジ! 帰ってきてたか!」
「ご無沙汰ですメスリ様。 今回使った2つ目のデッキケースについてちょっと相談事がありまして。」
「お? 早速使ったのか。 それで、どうだったよ。」
「自分の使っている物と全く変わらず使えるのはやはり嬉しいものです。 ただ、自分のデッキとは戦えないようなので、それならば戦闘AIを組み込んでみたらどうかと思ったのです。」
「なるほど。 確かに折角作ったデッキはすぐに戦ってみたいものだもんな。 よし、しっかりと作動したなら、後は改良だけだな。 もう少しであるものも試作品が出来るから、それが終わってからにはなるから、時間はかかっちゃうが、構わないか?」
「こちらは問題ないです。 それではこれを。」
「おう。 また試作品は使って貰いたいからお前に渡す。 多分明日には出来るから、母さんの元で旅の疲れを癒してな。 行くぞじいさん。 俺とあんたがいりゃ、早く終わるんだからよ。」
「やれやれ、老人をこき使いおってからに。」
そう言いつつも職人の顔になっている辺り、どうやら最後の生き様を作らせて貰ってるみたいだった。
「どうするっすか? あの二人の邪魔にならない程度に、工房の中でも見学してみるっすか?」
「そうだな。 どんなのが作られているか気になる・・・」
「セイジ殿!」
中に踏み込もうとしたその時、不意に後ろから名前を呼ばれる。 振り返るとそこには息切れをしたムサロ王子がいらっしゃった。
「おお・・・良かった・・・まだ・・・工房に・・・いてくれたの・・・ですね・・・」
「ムサロ様? どうかなさったのですか?」
「実は・・・セイジ殿に・・・お伝えしたいこと・・・がありまして・・・」
「・・・ここではあれですので、宮殿に戻りつつお話は聞きますよ。」
「ここに最初に来た時に言ったと思うけれど、例の異世界の人間だという人物の方に、新たな動きがあったようでね。」
宮殿にたどり着く頃にはすっかり落ち着いた様子になったムサロ王子が、矢継ぎ早にそう説明してくれた。 確かにそいつらの動向は教えてほしかった。 神様も今のところは教えてくれないし。 下界への干渉は神にとっても宜しくないのかも。
「その者達は、武勇伝を語ったり、欲しいものを我が物にしたりしているらしいと我が国の諜報部員からの情報が入ったんだ。 しかもそのうちの1人は海を渡った国で言っているそうなのだよ。」
「海を渡った国というと・・・オストラレスですか。」
「拙者が汝達と出会った国で御座るな。」
今となっては思い出深い国であるあの国でそんな奴が調子こいているのか。 あの小さき王がまだ介入していないところを見ると、様子見か相手を道化師として傍観しているか。 どっちみちあの性格では関わりたくないのだろう。 今回の場合はそれが正解であったりするが。
「この事態に君達を派遣したいのだが・・・」
「それは構いませんよ。 完全に無関係という訳ではないですし。」
「・・・本当にいいのか? こういってはなんだが、半分以上は我々のエゴで頼んでいるようなものなのだぞ? 君達にも拒否権はある。」
「別に断る理由がないというのも事実なので。 ただそうですね・・・」
向こうの要求だけを飲むのもちょっと気持ち的に宜しくないので、ここはひとつだけわがままを言っておこう。
「今回の旅には前回までと同じ様にひとつずつ対応していきますが、その際はこちらの動向はあまり探らないで貰えるとありがたいです。 それと、ここに呼んで欲しい人がいるので、出発はその後でも構いませんね? メスリ様が新しくなにかを作られているようなので、それを受け取る期間も必要だと思うので。」
その要求は受け入れられた。 後はこちらなりに準備をするだけだ。




