めんどい奴だなぁ
「くっくっ・・・くっくっくっくっくっくっくっくっ・・・」
ヨンマセが自分のターンを始める前に奇妙な笑いを出していた。
「くっくっくっくっくっくっ・・・奴らは我らがなにも出せないと思い込み、自分達の今出せる最大限を出してきた。 それがこちらの作戦だとも知らずに。」
どうやらこちらが勝手に戦略的ミスを犯していると思っているようだ。 おめでたい奴。 本当ならそんなのに乗っかる必要など無いのだが、なんかあまりの道化っぷりに逆になにをするのか興味が出てきた。
「そんなに言うんだったら見せてみて下さいよ。 このままじゃ、あんたら二人ともお陀仏だぜ?」
「ふん。 その言葉、すぐに我に対しての泣きの言葉に換えてくれる。 我のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 我はコストを6つ支払い、魔法カード「懲戒処分」発動。」
『魔法カード:懲戒処分 レアリティ 水色 コスト 6
手札を1枚捨て場に送る事で、相手フィールドに存在するモンスターは2ターンの間、コンバットタイムに参加できない。』
その魔法が発動した瞬間、俺達のモンスターの上から鎖が現れて、押し潰されてしまう。
「はっはっはっ! いくら屈強な戦士を出されようとも、捕まってしまえばなにも出来ぬ木偶の坊と同じよ。 我の前にひれ伏すだけなのだからな!」
確かに攻撃も防御も出来ないのならば、やりようはあるだろうだが、それも2ターンの間だ。 しかも変な話、こんな程度で優位に立っていると思っているのは、もはや鼻で笑ってしまいそうになる。
「我を侮辱したことを後悔させてやる!」
いや、侮辱なんてした覚えは全く無いのだが?
「コンバットタイム! 民達よ! 我のために働け!」
そう言ってモンスター達は俺のライフコアを攻撃する。 たかが10ダメージ、されど10ダメージ。 序盤としてはいいダメージと言えるだろう。
「くっくっくっくっ。 この調子で貴様のその嘲笑った顔を苦痛に変えてやる。 クールタイムに入り、我はエンディングを迎える。」
そしてこれ以上なにもすることなく相手は終えた。 なんだよ、もっとなにかあるのかと思ったが、威張るだけ威張ってそれだけかい。
「大丈夫で御座るか。 セイジ殿。」
「この程度のダメージ、今まで食らってきたものに比べたら拍子抜けもいいところです。 特に気にしてはいません。」
「それなら心配は無用で御座るな。 拙者の開戦、そして山札を引く。 戦闘準備。 拙者は今引いた旧騎士王 ハイラースをコストを支払わず召喚するで御座る。 さらにハイラースの効果により、捨て場にある札を山札に戻すで御座る。」
零斗さんのいつものコンボが炸裂する。 零斗さんの引き運もさることなごら、やはりハンドレスの真骨頂となれば誰も止められない。
「戦闘開始! ハイラースで民達を攻撃するで御座る。」
相手が先程出した「懲戒処分」の効果は前のターンで出ていたモンスターのみに適応されている。 つまりその後から出てきたモンスターは攻撃が可能だ。 しかし
「ふん。 そんなちゃちな攻撃で我のモンスターが倒せるか。」
それに関しては同感だが、別に一撃で倒そうなんて零斗さん自身も考えてはいない。 おそらくは攻撃をすることに意味があるのだろう。 ハイラースの一撃は、民達の一部を凪払った位で留まる。 だがそれで十分なのだろう。
「拙者は元より、民達への攻撃のために戦闘を仕掛けたのではないで御座るよ。 拙者は捨て場に存在する魔法札「隙間縫いの矢尻」を代償を払い発動するで御座る。」
『魔法カード:隙間縫いの矢尻 レアリティ 水色 コスト4
コンバットタイム時に相手モンスターを戦闘で破壊できなかった時、自分フィールドに存在する、一番高い攻撃力の半分のダメージを相手のライフコアに与える。
この効果はこのカードが捨て場にある時しか使えず、1試合に1度しか使用が出来ない。』
ヨンマセのライフコアに1つの矢尻が刺さった。 しかもあの民衆がいる中でだ。 民衆が開けたその僅かな隙間に矢尻を飛ばしたのだ。 (立体映像だから本来は関係無いのだが、雰囲気的にそう感じておこう。) これで更にヨンマセのライフを減らすことが出来た。
「くっ! またこのヨンマセに小狡い攻撃を・・・!」
「戦場などに縛られた規則はない。 生命の削りあいなのだから、生きるためなら人道を捨てることも厭わない。 拙者はそんな世界で生きてきたで御座る。」
「だったら下々だけで争っていれば良いだろう! 我はこのような戦場は望んでいない!」
「望む望まないなぞ、命懸けで戦う者達の前では無意味で御座る。 休息に入り、拙者は休戦を迎えるで御座る。」
「私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 ヨンマセ様。 私が奴らの戦術に打撃を与えましょう。 私はコストを9つ支払い、「狡猾な狂言吐き」を召喚。」
『モンスター:狡猾な狂言吐き レアリティ 桃 コスト 9
種族 アンチマン
このカードの召喚に成功した時、相手モンスターを1体選択し、このターン自分フィールドに置く。 この効果で置かれたモンスターは攻撃力、体力は半分になる。
ATK 10 HP 8』
「狡猾な狂言吐きの効果を発動。 そちらの騎士をこちらに渡してもらおうか。」
そう言うと狂言吐きがハイラースに近付いた後、何かを囁きはじめ、ハイラースは項垂れた様子となり、そのまま狂言吐きの元に付いていってしまった。
「ハイラース! なんと卑劣な手を・・・!」
「敵を引き入れるのも戦略だと言えば、納得してもらえるかな?」
向こうも向こうで正論を吐いてくる。 これで思うのは脅威なのはヨンマセではなく、こっちの通訳者ではないかという所だ。 両者の言い分が分かるからこそ、互いの都合がいいように操作も出来る。 影の暗躍者と言った所だろうな。
「コンバットタイム。 私のモンスターであなたに総攻撃を仕掛けます。」
これを食らえば零斗さんのライフコアは一気に減ってしまう。 だがこちらとてただやられる訳じゃない。
「俺はコストを7つ支払い、インタラプトカード「無防備という幻惑」を発動。」
『魔法カード(インタラプト):無防備という幻惑 レアリティ 紫 コスト7
相手のライフコアへの直接攻撃時、手札を1枚捨て場に送る事で、コンバットタイムを終了させる。』
「俺は手札を1枚捨て場に送る。 これにより、零斗さんへの攻撃は起こらない。」
その宣言に、相手モンスターは全員動きを止めた。 そしてコンバットタイムが終了するので、このままクールタイムに入ることになる。
「ちっ。 往生際の悪い・・・クールタイムに入り、あなたのモンスターは戻ります。 そして私はエンディングを迎える。」
この時に思ったのは、何故「御三家」の効果を使わなかったのか、という疑問である。 確かに壁となるモンスターは少なくなるが、攻撃力で言えばその方が上がるし、なにより相手のモンスターを使えば更に優位には立てたはず。
戦略的ミスか、数的優位に溺れたか分からないが、相手の未熟さはよく伝わった。
「俺のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。」
「ふん。 仲間を守ったのは良いが、お前の手札はその1枚。 まだまだ試合は始まったばかり。 自ら不利にする道理が分からないな。 これも貧富の差というものか?」
勝手に上になっていると思ってるやつは放っておいて、俺は手札を確認する。 そして相手の戦略について推測する。 ヨンマセの方はまだ完全に把握は出来ないが、通訳者の方は敵を引き入れる戦術だろう。 しかしそれはこちらが手札が無い戦術だと分かれば、手札から奪うことは出来なくなっているので、ある程度戦術は変えてくることだろう。 どのみち俺も零斗さんも今場にいるモンスターでは後1ターンは攻撃が出来ない。(ハイラースは対象外だったので攻撃は出来るが。) まあ今は引いたカードを使うだけだ。 今の状況に合うカードが来てくれたしな。
「俺は今引いた魔法カード「ゼロ・ブースト」を発動する。」
『魔法カード:ゼロ・ブースト レアリティ 桃 コスト -
このカードは使用した瞬間に手札が0枚にならなければ発動する事が出来ない。
自分のライフコアを5支払う度に、カードを1枚ドローする。 このカード効果で減ったライフコアはクールタイム後に戻ってこない。』
かなり条件が厳しいカードではあるが入れたのには訳がある。 それは俺の今のデッキでも零斗さんの様に「引いたら発動するカード」が俺のカードストックの中に無かったので、手札が0枚の場合のリカバリーが必要になっていたのだ。 完全にハンドレスで戦うことは出来ないが、少しでも力になればという、俺なりの戦略的考え方だ。
「俺はライフコアを10支払う。 そして効果によりカードを2枚ドローする。」
カードを引いて確認する。 ・・・今はあまり意味はないが出さないよりはいいだろう。
「俺はコストを6つ支払い、「ノーバレットスナイパー」を召喚。」
『モンスター:ノーバレットスナイパー レアリティ 紫 コスト6
種族 悪魔族
このカードは手札が0枚でなければコンバットタイムに攻撃出来ない。
ATK 14 HP 6』
「クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える。」
現状
ヨンマセ ライフコア 81
英雄国の民達
通訳者 ライフコア 100
古を生きた御三家
狡猾な狂言師
清司 ライフコア 70
背水流剣技正統後継者 陣
ノーバレットスナイパー
零斗 ライフコア 100
旧騎士ハイラース
追放されし縁の下 淵上
立ち上がる敗北者 轡




