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カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第3章 世界の異変と転生者
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交渉には交渉を

 2人だけで会話をしているところに急に俺が割り込んだことに、当事者達は互いに驚いていた。


『む? どうしたと言うのだ?』

「なんだ? お前は?」

「いやぁすみませんねぇ。 ちょーっとばかし話に割り込ませて貰いますが、その条件では、貿易にならないのではないでしょうか?」

「なにを知ったようなことを。 こちらの言語も分からない奴に、あれこれ言われる筋合いは・・・」

『じゃあこっちの言葉でもう一度言ってやろうか? その交渉じゃあこの国の利益にはならないってな。』


 ヒノマルの言葉で話すと、通訳の男は一層驚いた表情を見せた。


「お前もこの国の言葉を・・・まさか「ハーフ」か?」

「それには当てはまらないが、こっちの言葉の意味も理解できるし、話すことも出来る。 この意味、今なら分かるよな?」


 それは通訳にも分かっているようで、顔をしかめた。 大方向こうの方が利益になるように交渉を進めていたのだろう。 なにせ三月朗様はこういったものに慣れている様子はない。 いや、今までほとんど閉鎖的な国だっただけに、他国の知識が無いのは目に見えていた。 向こうもそこを突いたのだろう。


「おい、なにをしておるのだ? なにやら聞き捨てならない言葉を聞いたのだが?」


 向こうのでっぷりもこちらの変化に気が付いたようで、不穏な空気を漂わせていた。 そして通訳が戻り事の顛末を話す。


「ほほぅ? 我々の交渉にケチをつけるか。 身分知らずな奴だとは思うが、一応聞いてやろう。 我々の交渉のどこに不満があるのだ?」

「あんたら全体的にこの辺り一帯の価値を根こそぎ持っていこうとしてるだろ? その中で自分達が出せる最大の利息を最小限に抑えてやがる。 物々交換にしては不釣り合いだ。」

「だからなんだ? そっちの王はこれで了承をしようとしているのだ。 なんの文句も無かろうて。」

「それがまず問題なんだっての。 こっちの価値は確かに高いが、それとそっちが出す品や情報が明らかに釣り合ってないんだ。 こっち側が分からないのを良いことに、好き勝手やろうとしてたんなら、ここで止めさせて貰うぞ。」

「貿易などその後にいくらでも調整が効くだろう? 機転を生かせば良いではないのか?」

「その前にとんずらしようとしてるんだろ? 魂胆が見え見えなんだよ、あんた。」


 そう指摘するとヨンマセはしかめ面よりも更に顔を歪めた。 どうやら知識半分な思考力でもその答えにたどり着けたようだ。


 ヒノマルは今の今まで海外との交流をしてこなかった。 この辺りは「避けてきた」とも捉えられるが、とにかく自分達の住む国以外の情報を入れていなかった。


 それが唐突な鎖国解放のための貿易交渉。 情報源は通訳からだろう。 見たこと、聞いたこと、感じたことの無い異国の物を売り出せば、利益になるのは当然だ。 そして現在総合的な価値を決められるとなれば、安く仕入れて高く売る。 商売として当たり前の事をしようとしていたのだ。


『なにを話しているのだセイジ? 利益にならないとはどういう意味だ?』

『三月朗様、ここはセイジ殿に任せるで御座る。 下手にお出になられてはならないで御座る。』


 後ろで声をかけようとした三月朗様を零斗さんが止める。 止めてくれていることに感謝しながら、俺は目の前の2人に新たな交渉を持ち掛けることにした。


「とはいえそっちの言うように、この貿易の事も完全に損をしている訳じゃない。 それに俺はあくまでもお付きだから、本来なら口出しは無用なんだよな。」

「ならばとっとと失せるがいい。 我らの話を遮るなぞ、言語道断ぞ?」


 今回に関しては正しくその通りなのだが、このまま引き下がったら恐らくは図に乗るだろう。 だから俺は俺なりのやり方で交渉をすることにした。


「じゃあこれで話を着けようぜ?」


 そう言って俺は腰に手を掛ける。 そうするとヨンマセと通訳は身構えた。 どうやら俺が武器、しかも銃を所持していると思っているのだろう。 ビビらせる為に本当に出してもいいが、それでは交渉にならない。 だから普通に出すことにした。 自分のデッキケースを。


「・・・それは・・・」

「あんたらの国なら一般常識だよな? 制約的にこの話を着けようって事さ。」


 制約カードゲームなら合法的に契約を出来るし、文句も言えない。 言葉や紙媒体なんかよりも確実に破ることの出来ない手だ。


 ヨンマセは驚きはしたものの、武器を取り出されなかったことに胸を撫で下ろし、鼻で笑った。


「面白い。 この国の娯楽には少々刺激が足らぬと思っていたのだ。 受けてやる。 ただし時間は貰うぞ。 具体的には明日の明朝までだ。 我としてもカードなどほとんど触らぬのでな。」

「構わないぜ。 ならこっちからも条件を出させて貰おう。 あんたとのサシじゃなくて、タッグルールで制約は行わせて貰う。 そっちの奴が逃げられないようにな。 で、俺のペアは俺の仲間の零斗さんと組ませて貰う。 言っておくが零斗さんも両方の言語を知ってるからな。」

「勝った気でいるのも今のうちだ。 その首を洗って待っているがいい。 誰に対して無礼を働いているのか改めて解釈させてやる。」


 そう言ってヨンマセとお付きはその場から去っていった。 明日までということは黒船に帰るのだろう。 売り言葉に買い言葉でやっていたが、向こうの沸点があまり高くなくてある意味助かった。


『ヨンマセ殿が帰っていったが、なにを話していたのだ?』

『正式な貿易契約をするためにちょっとしたお遊びに付き合った貰うんですよ。』

『それがそうだというのか? それに零斗殿の名前も聞こえたが。』

『ああ、その事ですか・・・すみません零斗さん。 なんの打ち合わせもなく勝手に巻き込んでしまって。』

『拙者は気にしておらんで御座るよ。 概ね話は聞いている。 汝の力になろうぞ。』


 そう言って零斗さんは胸に手を当ててくれる。


『しかし勝負とはいえ、こちらに勝算はあるのか? 向こうの遊びについては我は分からぬが、こちらが少々不利なのでは?』


 そう不安がる三月朗様。 俺はそんなこと微塵も・・・ってああそうか。 この反応からするとって訳じゃないけど、AIカードゲームなんて物はこの国じゃ普及すらしてなかったんだっけ。 向こうの遊びだと思ってるから、こっちがアウェーだと思ってるんだな?


『大丈夫で御座いますよ三月朗様。 例え向こうの遊びだとしても、我々も精通はしておりますので。』


 というかあんなお偉いさん気取りの奴に俺と零斗さんが負けるわけ無いんだよな。 なんだかんだでカードゲームはかなりの数練習試合を重ねている。 だから相手の技量は少なからず見えるようになってきていたりする。


 見えると言っても相手の雰囲気なんかから見ているだけだから、本当の所は分からないが、あれぐらいの奴らなら苦もなく勝てそうなんだよな。


『そ、そうか。 お主が言うのなら信じてみよう。』


 三月朗様はやはり分かっていないように、曖昧な返事をするだけだ。 とりあえずはそれでいい気がする。 分かって貰おうとは思ってないし。


『さてと、向こうが時間をくれと言ったってことは、こっちにも猶予が出来たと言うことだ。 俺達もデッキを作らないと。』

『明日もヨンマセ殿は来るのだろう? ならば我が城を使うと良い。 元々部屋は腐る程ある。 それにお主達の、向こうの遊戯にも興味がある。』


 それはありがたいというか、他のみんなが城の中に残っているから、そうして貰いたかったのだ。 そう思いながら俺達は城に戻ることにした。



「そのようなことがあったのか。 出来れば私も着いていきたかった所だが・・・」

「歩き慣れないこの城の構造に四苦八苦してんだ。 下手に下ればもう登れなくなるだろうぜ。」

「・・・それもそうだろうな。 目の前の料理にも渋々食べている様な者は、着いていく道理にはならん。」


 半ば諦めているベルジアの声を聞きながら俺達は目の前の料理を吟味している。 吟味と言っても俺と零斗さんには前の世界で一般的に食べられていたものばかりだし(というよりもお偉方が食べるものにしてはかなり庶民的だった。)、他のみんなは馴染みの無い料理でも、俺と零斗さんが食べているのを見て普通に食している。 毒味役をやらされてる気分だ。


『それで、ヨンマセ殿との明日の話であるが、改めて勝算を聞いておきたい。』

『三月朗様。 そのようなご心配は無用で御座いますよ。 あちらがすぐに申し出を受けなかったのは、自分達が勝てるようにする為の作戦会議でしかありません。 そのような事をした時点で、我々には大きく有利に動くのです。』

『作戦を練ることが不利になるというのか?』

『この遊戯に置いては、機転と臨機応変さが求められるゆえ、作戦を立てたところでほぼ無に帰すことが多いので御座りまする。』


 零斗さんの言う通りである。 作戦を立てたなはいいが上手く行かないのは、自分達の作戦以外のことを考えないからである。 このゲームはそこまで甘くはない。


『お主達の自信・・・任せよう。』


 その言葉をもらって、俺達は料理を食べるのだった。

 夜、月明かりが照らすなか、俺と零斗さんは明日の試合の事で話をしていた。



『拙者と組むのは構わなかったが、本当に良かったので御座るか?』

『なにがですか?』

『拙者のデッキの特徴を知っている汝には、それ相応の負担になるで御座る。 それが少々心配で御座ったのでな。』

『零斗さん。 確かに普段の俺のデッキなら、相性の関係で不利に働くこともあるでしょう。 だからこそのこれなのですよ。』

『それは・・・なるほど。』

『零斗さんも協力して貰いますよ? 俺と零斗さんという、2人の異世界人による、これまでにないほどのコンビネーションを見せるためにも。』

次回から(ようやく)カードゲームのターンに入ります。


ここまで布石として寝かしておいたもう1つのデッキケースの出番です。


今回の話の中で相手に勝つことは容易い、みたいに言っていますが、圧勝させるつもりは無いです。 


こう言ってはあれなのですが、作者はカードゲームの試合に関しては少し過程を大事にするタイプなので

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