時代遅れのお偉いさん
『俺達を見ていた人数が他の観光客よりも明らかに多かったことについて、ある程度は分かっているつもりだがそっちの口から理由を聞きたい。』
馬車を発車させてからの一言目にしてはキツいかも知れないが、こちとら見ず知らずの土地(俺と零斗さんにとっては見慣れた土地)で監視をされ続けたんだ。 深いな想いはしてなくても理由がなきゃ納得しない。
『我々の側近から聞きました話で、あなた達はこの国の言語を難なく聞き、そして我々に対し会話をしていると。 丁度今のあなたと私のように。』
その答えに返しては大体予測はついていた。 他の観光客が理解できずに困惑しているなかですらすらと喋れたら異質に見えるだろう。 この国の人間との間に産まれた子供でなければどのみち喋れないだろうしな。
『このヒノマルの言葉を喋れただけで拙者らを見ていたで御座るか? 喋れるだけなら他の観光客にもこれまでいたで御座ろう?』
『そうですね。 もう1つの方が決定的な要因でしたよ。』
『もう1つの要因?』
『あなた達はこの国の文化を知っていた。 知りすぎている位に。 今現在でその話をつけようとしている中で、まだ外の世界に出ていない我々の文化を事細かく知っているとなれば、気にかけるのは当然だと思いませんか?』
気にかけると言うか気にしていたの方が正しいだろ。 まあこの国の事を知るには一番手っ取り早い方法にはたどり着いたがな。
「先程からそちらだけで話を進めないでくれ。 私達にも話をしてくれ。」
ベルジアが俺達に声をかける。 おっと、ヒノマルの言葉はベルジア達には分からないんだっけか。 話の内容には気を付けないといけないか。
「実はな、この国に着いてから、俺達は監視みたいな形を取られてたんだよ。 人知れずな。」
「あたいは気が付いていたけれど、特に被害を加える気も無かったみたいだから放置してたわ。」
その判断は間違ってなかったよ。 ここで変に攻撃なんか加えてたらこんな形にはなってないからな。
『そしてあなた方はこの国で起きた事件を解決致しました。 これは1つの功績としてあなた達の価値を高めたものとなります。』
『事件の解決って・・・あんな盗っ人1人懲らしめたくらいでか?』
『自警団でもなかなか巧妙に避けられるものですから捕まえるのが少々困難だったのですよ。 今回捕まえたのは一味の1人だったのですが、奴から少しでも情報が引き出せればと考えています。』
『そんなのはそっちの都合だろ。 ただそれだけの事でなぜお偉いさんに会える? そんなことで信頼を得るようじゃ、騙しあいもある外交関係なんか出来っこないだろ?』
この国の現状の厳しさを痛感的に伝えるのだが、それがお偉いさんには分かっていないようだ。
『だからこそ、外の世界から来て、かつこの国の文化を知っているあなた達を招待するのです。 上様には既に報告済みです。』
それで断ったらどうするつもりだったんだよ。 相手の都合を考えないのと否定的になることを考えてないな。 お偉いさんに会って、直接交渉もやぶさかじゃないなと、心の中で思っていた。
『着きました。』
そう言って馬車から降りると、そこにそびえ立っていたのは
「・・・完全に天守閣だ・・・」
日本のお城、正しくその想いに刈られる。 零斗さんも似たような感情になったらしい。
「ご主人様、てんしゅかくって、なんですか?」
「簡単に言えばこの国のお城だよ。 でもこの堀の大きさだと城下町、お城の下に創られる町があるかも。」
「城と言うには随分と変わった造りをしているな。 それに色も統一化されていない。」
「向こうの造りとこの国の造りじゃ建て方も違うだろうしな。 中を見ると更にびっくりするだろうぜ。」
『入場許可を貰えました。 どうぞこちらに。』
俺達で会話をしていると、門が開かれる。 そして石造りの階段を登ると、ザ・江戸と言った雰囲気の城下町が目の前に広がった。 そして隣にいた零斗さんが、歩きながら俺にしか聞こえないような声で語りかけてきた。
「セイジ殿。 どうやら時代遅れの、というのはあながち間違いでも無さそうで御座るな。」
「ええ、まさか明治時代よりも前の、江戸時代の街並みとは思いもしませんでしたよ。」
「拙者達の格好の方が不自然な位で御座る。」
「いえ、ちょくちょく通行人が自分達と同じ格好をしている人もいます。 時代背景だけ取り残されたと言っても過言ではないですね。」
「もしや外の景色を知らぬ、なんてことは・・・」
「あり得るかもしれませんね。 ここは正しく「井の中の蛙」のような状態ですから。」
俺達がそんな会話をしている間にも町の中に入っていく。 そして城下町の中心部の城の城壁に近づき、案内人が扉を開けるよう言うと、そのまま中に通してくれた。
「なるほど、門から囲うための塀か。 城への侵入は容易くは出来なさそうだな。」
「お前の所も取り入れるか?」
「いや、あの塀を創るだけでもかなりの材料や人手が必要になるだろう。 それにこういってはなんだが、我が領地の人間が攻撃するとは思ってはいない。 ・・・今はな。」
驚異に対しては考えてるって所だな。 今の現状のアルフィストなら確かに大丈夫だろう。 だがそう言ったことでもいつ崩れるかは確かに分からない。 危機感をもって貰えてるだけ他とは違うんだろうな。
「なっ・・・! なんだ!? 中はほぼ筒抜けではないか!」
天守閣の中を見たベルジアの最初の感想だ。 まあ驚くのは無理もないがな。 これで城が建っているとは、思わないだろうな。 日本人にとっては特に驚くことではないのだが、やはりその辺りは変わらないのかもな。
『そちらの人はなにに対して驚いているのですか?』
『おっと、こっちはこっちで向こうの言葉は知らないのか。 吹き抜けな建築構造に驚いているんですよ。 構造としてはあり得ないから。』
『そういうことですか。 しかし完全な吹き抜けではありません。 あちらの他より立派な柱が見えましょう。 あれがこの城の大部分を支えています。 あれはここに根付いていた大木を柱状に形成し、それを囲うようにいくつもの柱を組み立て、この城が出来ている訳です。』
『それを俺らに説明されてもなぁ。 ってことはあんたらの大将さんはこの最上階か?』
『左様でございます。』
そう言いながら俺は上を見上げる。 当たり前と言えば当たり前だが、この高さを階段で昇らなければならないと考えると、やはり気が滅入ってしまう。 だが昇らなければ会わせたい人物にも会えない。 他のみんなには申し訳ないと思いながら、天守閣の上階へ行くために進むのだった。
「ふぅ・・・ふぅ・・・こ・・・こんなにも・・・階段と言うものを・・・侮った事は・・・今までに・・・無かったぞ・・・」
最上階へと続く階段を前にそう言っているのは、足をガタガタさせているベルジアであった。 軟弱じゃないかと思うかもしれないが、ベルジアよりも前に女子陣が先に根をあげていることを前述した上でベルジアはここまでよくなったものだよ。 ちなみに女子陣は既にサヴィの浮遊魔法(超低空)で着いてきている。
「やっぱりこういった所は、日本人独特なんでしょうかね?」
「身体の作りと慣れによるもので御座ろうな。 そう考えれば拙者達の方がおかしいと感じられるで御座る。」
「なるほど。 ベルジア、ここで休んでろ。 俺達で会話してくる。 アリフレア達もここにいてくれ。 確定的な俺と零斗さんで行った方が確実だからな。」
おかしいのは俺達の方だったかと考えつつ、他のみんなを連れずに待機させた。 会話に入ってくる事が出来ないのなら、ついてくることに意味はない。 しばしの辛抱だと思ってくれればそれでいい。 会話が出来ずに困惑されてもフォローしきれない。
俺と零斗さんは階段を上がる。 そして最上階の場所であろう間に到着したところで、その奥に座る人物と目が合い、そしてこう言われた。
『初めまして、であろうな。 余の名は明日真田 三月朗。 呼んだのは他でもない余である。 話をしようではないか、我が国ヒノマルを知る異国の民よ。』
最近思うのが、1話が大体3000字前後で小説を書いているのですが、それのせいで話が進まないのではないか、という勝手な疑問があるんです。
投稿期間が空きすぎているからなのかなとも感じますが。




