追跡者の接触
朝ごはんを満喫したので俺達は改めて情報収集の為、朝のヒノマルへと出向く。 とは言っても朝が早すぎるせいで周りに歩いている人はほとんどいない。 俺達のような外から来た人間にも会わない。
「静かな、朝ですね。 ご主人様。」
「静かすぎるのも逆に不気味だかな。」
「何故だ?」
「俺と零斗さんは朝早くに、それも日の出を見るくらいの時間に起きていたんだ。 でも外で動いていたのは新聞配達の少年が数人だった。 実際にベルジアがロビーに降りてきた時にあの場にいたのは俺と零斗さんを含めても1人2人位しかいなかっただろ?」
「それ事態は何ら不思議なことじゃないと思うけど?」
サヴィの一言に俺は、現代日本人の特徴が出てるなと、直感的に思った。 この時間で動いているのは、この時代(背景)だったら配達員か農家位のものだろう。 ましてやここにいるのは、零斗さんを除けばそんなのには無縁のところにいた人材じゃないか。
「・・・いや、アリフレアは違うか。」
「ご主人様?」
余計な事を考えてないで、今後の事を考えなければいけない。 今朝の新聞の事を考えれば、一番偉い人間に合うのが、真実を知るには手っ取り早いが、ここは他の国の干渉を長く受けてこなかった島国。 お偉いさんなんてものは、パレードか何かで出てこなければ、会うことも不可能だろう。
「・・・もう少しだけ目立つ行動でもしてみるか?」
「目立つって、具体的にはどうやって?」
サヴィの疑問に俺も頭を悩ます。 確かにただ暴れたり騒ぎを起こすだけではガヤと同じだ。 もっとお偉いさんが目を引くような事をしなければいけない。 ただし、印象操作も大切である。 なにせ向こうもこちらを手探り状態で情報を集めている。 危険人物だと思われるにはいかないのだ。
「さてさて、どうしたものかなぁ。 この時間帯だとまだ店らしい店もやってないだろうしなぁ。」
そう呟いた時に、数人の子供達が前を通り過ぎていく。 手にはカードのようなものが握られていた。
「まさかもうすでにこの国にもカードゲームという概念が存在しているのか?」
「いや、そう言うわけではなさそうで御座るよ。 あそこを見るで御座る、セイジ殿。」
俺の疑問を打ち消したのは零斗さん。 そして先程通り過ぎた子供達はその場所だけ区画されている場所に、その子供達を含めた多くの子供が集まっていた。
「あれはなんの集まりだ?」
「なにやら遊んでいるように見えますね。 セイジ様、見に行きませんか?」
ミルレに手を引かれてその輪の中まで見ることになった。 子供達がやっていたものは、これまた懐かしい物ばかりだった。
「昨日見てた独楽や竹とんぼ・・・お、あのカードはメンコの札だったのか。」
そう納得してると、子供の一人がメンコの札を地面に叩きつける。
「なっ・・・! なにをしているのだ! あれではカードに傷が付いてしまうではないか!」
「いやいや。 あれはああいう遊びなんだよベルジア。」
「なんだと?」
「地面に自分の持ち札を叩きつけ、他の札をひっくり返せば自分の物になる、というものである。 それにあの札に使われている素材は少し鉄の入った紙ゆえ、多少の傷くらいならなんら支障はないでござる。」
「む、むぅ? セイジやレイトが言うのなら、いいのか・・・?」
ベルジアは納得いかないように首を傾げる。 こう見ていると、如何に日本の文化が異質なのかが手に取るように分かる。 というよりもこの世界じゃそんなのは一般常識にはならないか。 カードは基本的にAI領域内での話だし、カードバトルをするのもAIだから表に出る事って無いんだよな。
「ご主人様。 あちらは、なにをしているの、ですか?」
そう言ってアリフレアの方を見るとおはじきをして遊んでいる子供達の姿があった。
「ああ、あれはおはじきだよ。 あの光っている石と石を弾きあう遊び・・・あれ? どうだったっけ?」
「セイジ殿。 おはじきは石と石の間に自分のおはじきを入れる遊びで御座るよ。」
「そうでしたっけ? 確かに指を使って間に入るかを図ったこともありますが。」
「拙者も遊んだのは幼少期故、記憶違いがあるかもしれぬで御座るが。」
そういえば零斗さんも喋り方こそ古風だけど、俺と産まれた時間ってほぼ一緒なのをたまに忘れてしまう。 それほどまでに古風な喋りや格好に慣れてしまったというのが、俺の中にあるのかもしれない。
そんなことを考えながら俺達は子供達の邪魔になっては困るだろうとおもい、子供達から離れ、また大通りの方を歩き始めた。 これといって目的は無いが。
『しかし子供がいるということは学校、時代的には寺子屋か。 流石に存在しているよな?』
『寺子屋に通わせる資金がない子供の可能性もあるで御座るよ。 子供が新聞配達というのも、本来ならおかしな話で御座る。』
『でもその割には大人もほとんど見かけないですよ。 出勤時間はもう始まっているんです。』
『明治時代を舞台としているのならば、店をやるのは、どちらかと言えば店の家自体で御座るよ。』
「あの二人、昨日からずっとあんな調子だよね。 なにかあるのかな?」
「我々には分からない感性が二人にあるのだろう。 それを理解するのには、私達には時間がかかることだろう。」
俺と零斗さんだけで考察をしていると、再びあの感覚が戻ってきた。 付け狙われているあの感覚である。
「ご、ご主人様?」
急に後ろを振り向いたからか、アリフレアが驚いてしまったが、そんなことを気にしている場合ではない。 何故なら明らかにその視線が、昨日の倍近くに増えていたからだ。
「どうします零斗さん? 行動するのなら、おそらくここですよ。」
「しかしどのようにするで御座る? 今回はどうやら向こうから来そうな気配で御座るよ。」
「それならそれでこちらとしてはありがたいですがね。」
そう話していると、1人の燕尾服の男が近付いてくる。 あいつも俺達に視線を向けていた1人だ。
『あー、すみません。 少しよろしいでしょうか?』
「え? わ、私にですか?」
おっと、こっちに直接は来なかったか。 向こうも手探り状態なのは分かるが、明らかにこっちよりなのがいるにも関わらずミルレに声をかけるか。 ま、今のミルレは王女らしい格好はしているものの背丈のせいで全くそうは見られていないようだ。 馬子にも衣装・・・ってこれは場合によっては悪口か。 向こうがそう言うことならこっちから出向きますか。
『待ちな。 あんたの目的の人物はこっちだ。』
『分かっていますよ。 少し試しただけです。』
『そんな余計なことしなくても逃げやしない。 なにが目的か言いな。』
『あなた達に会わせたい人物がいる。』
やはりか。 俺と零斗さんは目配せをして、相手を見ていた。
『その人物について少し探ってもいいか?』
『そんなことをせずともすぐに分かる。 君達ならな。』
その言葉に一瞬警戒した。 なにしろ俺と零斗さんはこの国の、ましてやこの世界の人間ではない。 俺達が異世界の人間だとバレたのかと思ったが、どうやらそう言うことでは無さそうなので、すぐに元に戻った。
『着いていくのは俺らだけか?』
『そちらの人達も連れていっても構いませんよ。 我々の会話には介入出来ないようですし。』
どうやら他国の人間には余程話したくないことなのだろう。 だがこのまま俺達だけ知るのも癪なので、とりあえずみんなには心配かけない程度に説明しておこう。
「ちょっとこれからお偉いさんのところに行くんだってさ。 この国にいるから挨拶くらいはいるだろ?」
「そんな話をしていたのか。 それなら行こうではないか。」
ベルジアの言葉に皆も納得して、着いていくことを伝える。 そして俺達はその燕尾服の男が用意した馬車に乗るのだった。




