周りの目が気になる
俺達がラムネを楽しんでいるなかで、俺達の中からではない視線があったのを俺は見逃していなかった。
「・・・セイジ殿、今のは・・・」
「今は泳がしておきましょう。 それにこっちの言葉で話せばよっぽど向こうには聞こえないですし、目を向けてるのは俺達だけじゃないみたいですしね。」
俺は視線の先にいる刺客のような人を横目で確認すると、俺達の事を見ているのは当然、定期的にあちらこちらに目線を向けている。 おそらく先程降りてきた観光客の確認をしているのだろう。
「我々よりもあちらの方が怪しく見えるで御座るよ。」
「元々慣れてないのかもしれないですね。 ま、向こうが接近してこない限りは無干渉で大丈夫です。」
「なにをぶつくさと2人で話しているのだ?」
どうやらベルジアにはあの視線には気が付いていないみたいだ。 俺や零斗さんに分かったという事は、それなりに特殊な隠れ方をしているのかもしれない。
「なんでもねぇよ。 さてと、ラムネがあったという事は、なんか別のものもあるかもなぁ。」
「セイジ殿。 あの子供達が遊んでいる玩具はもしや・・・」
そう零斗さんに誘われながら、他のみんなも引き連れるように歩くのだった。
それからというもの街を歩けば、色んな懐かしいものが目に入ってくる。
先程の子供が遊んでいたのは独楽と竹とんぼ。 竹とんぼは簡単に作れるし、独楽は回せれば面白いので、他のみんなも楽しんだ。
入ったお店で抹茶と団子に舌鼓をうち(みんなは抹茶の味にはついていけなかったようで、凄く苦い顔をしていた。)、模擬刀を吟味したりした。
俺と零斗さんは、前の世界のタイムスリップしたような感覚で懐かしみ、他のみんな、ヒノマルの独特な文化を楽しんでいた。
しかし感じている視線を切ることは出来なかった。 一度離れたかと思ったら別の刺客が配置されている。 多分ある程度範囲が決められていて、それですぐに見失わないようにしているのだろう。
「セイジ殿。 この行為について考えるで御座る?」
「観光客全体に対象を選んでいるってことは、他国からの侵略を気にしているのではないでしょうか? それにしてはやりすぎな部分もありますが。」
俺の予想を軽く説明する。 零斗さんも概ね予想は一緒のようで、警戒よりも見張りの方が近い。
「ご主人様達、何のお話を、なさっているのですか?」
「アリフレアちゃん。 セイジ君達はあたいたちを守ろうとしているの。 あんまり余計な心配をしないであげて?」
アリフレアがこちらに聞いてきたが、それをサヴィが止める。 この分だとサヴィは気が付いているようだが、そっちも気を回さないで、普通に楽しんで貰いたい。
「どうするで御座る? こちらから動きを見せれば、向こうも乗ってくるとは思うで御座るが。」
「見張っている数は半径内でも2、3人が多くてもいるだけです。 ですが他よりは多いかと。」
「我々が警戒されるのには訳がありそうで御座るな。」
「おそらく最初にこちらの言葉が喋れたことが起因かと思います。 この国は独自の文化と言語があります。 なのにそれを他国の人間が知っているとなれば、何かしらの干渉をしてくると考えているのでしょう。」
そうなると下手にこちらが余計な行動をすれば、更に俺達に目が向けられる事だろう。 俺達はこの国の現状を知りたいだけだ。 無駄な争いは今は避けたいところだ。
「もう少し様子見で御座るか?」
「ですね。 互いに出ずっぱりなのはありますが、こちらが完全に不利です。 なるべくは変なことはしないように・・・」
「だ、誰かその男を捕まえて! 私のバックが盗られたのよ!」
どうするかと悩んでいると、そう遠くない場所からそんな女性の声がした。 後方を見ると、こちらに向かってくる男、緑の風呂敷を被ったいかにもな奴が近付いて来ていた。
『けけけ。 外の世界の物はこの国じゃ物珍しがられるからなぁ。 高くはないだろうが金にはなるぜ!』
向こう側が聞こえていないのをいいことに喋っている盗人だったが、その先にいる俺達をみると、すぐに顔をしかめた。
『あ? おい! 退きやがれそこの観光客! 怪我したくはないだろ!?』
どうせ聞こえていないだろうと思って、大声を出せば退いてくれるだろうと勝手に思い上がっている。 だが先程の女性が「盗られた」と言っていて、こちらは『退け』と叫んでいる。 つまりどちらの言っていることの理解できる俺と零斗さんがいたのがおそらく運の尽きだったのかもしれない。
『あ? な、なんで退かねぇんだ! このままじゃぶつかるってんだろ!?』
『汝は我々が言葉の分からぬ観光客だと思っているようで御座るな。』
『げ!? その姿は! それに今この国の言葉を・・・!』
『もう1つ言っておけば、お前は聞き取れなかったかも知れないが、向こうさんは「盗られた」って言ってるんだよね。 ま、明らかすぎるのもどうかとも思うが、やったことによる制裁は受けて貰おうか。』
こちらが喋りながらも突っ込んでくる盗人。 逃げるつもりではあるので当然減速なんてしない。
『しゃらくせぇ! そのままお前らを無理矢理退かして逃げきってやる!』
そうするのは当然だろうなと俺も零斗さんも思った。 だから俺と零斗さんは突っ込んでくる盗人を敢えて避ける。
『うお!? ったた!?』
盗人は当たって砕けろ精神だったのだろう。 俺達が避けたことに驚きバランスを崩した。 その崩れたところを、俺と零斗さんでそのまま地面に伏せさせる。
『うがっ! ち、畜生!』
『汝を逃がす程、拙者もセイジ殿もやわではないでござる。』
『くそぅ! 時代遅れの侍風情め! ここまで国が変わっているのに、上だけはなにも変わっちゃいねぇ! なんで黒船の乗ってきた奴の言うことを聞かねぇんだ!』
『黒船?』
盗人の言い分に少し引っ掛かる部分が出てくる。 今の風景は記憶が正しければ明治初期の街並みのはず。 それにまだ初期ならばまげはあってもおかしくはない。 それに黒船・・・
盗人が岡っ引き(警察)に連れていかれるのを見ながら、俺は考える。
「どうやら歴史は、あくまでもこちらよりという話になっているで御座るな。」
「正直歴史は強くなかったからなぁ。 でも明治時代よりも前の話なのに、国の背景としては明治時代・・・零斗さん。 俺はこの世界、いや、この国の歴史は、前の世界とは違うと割り切った方が良さそうですよ。」
「うむ。 下手に混濁させるよりも、分別は大事で御座るな。 これでこの国での出来事を、心置きなく変化させることが出来るようになったで御座る。」
「その言い方語弊ありません?」
そんなやり取りを零斗さんとしている間に、盗人に盗られた人との対話も終えたところだった。
「話は付けてきたよ。 それにしても物騒な国だねぇ。 人から強奪なんて。」
「そう言う時代もあったってことさ。 でも盗人がいる程貧困さが激しいようには見えないんだけどな。」
戦争が始まっているわけではないのに困窮している様子はない。 そう考えると、やはりお偉いさんの働きが行き届いていないのだろうか?
「まあいいや。 とにかく情報を集めよう。 今日はこのまま宿を探すか。 現状の把握が目的だし、変化も少ないだろうから、情報は紙媒体にしてみますかね。」
そう言いながら俺は、みんなを引き連れて、本日の宿を探すことにした。 後ろから感じる気配と共に。
だんだん短くなってきていると感じられますが、仕事頭で書いていると、こんな風になります。




