ミルレのデッキと洞窟探索
コルダーナに着いたのは夕方近くだが、探索には早く行きたかったため、場所と全員分の依頼用デッキケースとホルスターをもらい、その場所に向かうのだった。
「師匠、さすがに教えてもらった距離なら、ドーホース達を使わなくても良かったんじゃないっスか?」
ファルケンが不思議そうに聞いてくる。 確かにコルダーナの位置からそう遠くない洞窟だと言われた時は、ドーホース達を同行させるか迷ったが、どのみち野宿をする上に、俺達が帰ってこなかった時の事を誰かに伝える役目は必要だと思うので、ドーホース達は連れてきたのだ。
「ま、今回はいても損はないだろみたいな感覚で見てやってくれ。 どこまでこいつらといれるか、分かったもんじゃないからな。」
別れなど突然やってくるのだ。 少しでも長くいてあげるのも、動物の記憶としてはよいものだろう。
「ミルレ、少しいいか?」
洞窟近くまでやってきた俺達は、陽も暮れ始めたので、洞窟に入るのは明日にして野宿をとっていた。 夕飯を食べ終えたあと、皆各々時間を有効に使っている間に、ミルレに声をかけた。
「はい、なんでしょうか。 セイジ様?」
ミルレの様呼びも大分慣れたと思っていたが、やはりまだ感覚がおかしいと思ってしまう。 それはそれとして。
「ミルレのデッキの中身を一応確認しておきたいと思ってな。 まだ知らないのはミルレだけなんだ。」
「そうだったのですか。 ですが私のデッキはあまり戦闘向けではないと思います。」
「それは関係無いさ。 どんなデッキなのかを見たいだけだからさ。」
そう言った後に、ミルレはデッキケースから自分のデッキを取り出す。 流しながらカードを見ているけれど、その中で気になったカードをいくつか紹介しよう。
『モンスター:スターサイン ジェミニ(アール) レアリティ 水色 コスト 5
種族 妖精族
召喚成功時 自分のデッキ、または捨て場に「スターサイン ジェミニ(エール)」が存在する時、そのカードを手札に加える。
このカードは「スターサイン ジェミニ(エール)」がフィールドに存在しない時、現在のステータスは半分となる。
ATK 8 HP 6』
『モンスター:スターサイン ジェミニ(エール) レアリティ 水色 コスト 6
種族 妖精族
召喚成功時、自分のデッキ、または捨て場に「スターサイン ジェミニ(アール)」が存在する時、そのカードを手札に加える。
このカードは「スターサイン ジェミニ(アール)」がフィールドに存在しない時、現在のステータスは半分となる。
ATK 6 HP 8』
『装備カード:星をも穿つ弓矢 レアリティ 桃 コスト 10
「スターサイン」モンスターに装備可能。
このカードを装備したモンスターは1ターンに一度、相手モンスターを選択して、そのモンスターをエンディング時まで捨て場に送ることが出来る。 ただしこの効果を使用したモンスターはコンバットタイム時、攻撃できない。』
『魔法カード:聖なる水を流す水瓶 レアリティ 紫 コスト8
自分の手札、フィールド、捨て場のモンスターを1枚ずつ選択してデッキに戻しシャッフルする。 その後山札の一番上のカードを3枚確認して、その中にモンスターが存在する時、そのモンスターを召喚出来る。 この効果で召喚されたモンスターの「召喚時」効果は発動しない。 残りの2枚はデッキの下に戻す。』
ある程度は絞ってみて分かったのは、ミルレのデッキは星座関係だったということだ。 占いをやっているとは聞いていたがまさか星座占いとは。
「確かに戦闘向けではないか。 まあ、やりようだけどな。」
「それに私はまだ「スキル」の開花が出来ていないんです。」
「うーん。 通常のカードバトルだと出ない可能性は高いけど、かといって無意味に制約カードバトルをしてもなぁ。 ま、その辺りは時が来ればと思っておいていいだろ。」
気長に待つのもまたこの世界での生き方だろう。 そう思いながら俺はミルレから離れ、ファルケンとゼルダのカードバトルを見守ることとした。
「コンバットタイム! 「エアカンガルー」で「Ws ガンシルド」を攻撃!」
「甘いッスよ! 「Ws ガンシルド」は相手モンスターの攻撃による破壊を、一度だけ無効に出来るッス。 戦闘ダメージは受けるッスが、やられるよりはましッス。」
「それは予測済み。 ボクの方もただ攻撃した訳じゃないよ。 「エアカンガルー」は相手モンスターのHPを削りきって戦闘で破壊出来なかった時、もう一度攻撃できる効果があるんだ。 もう一度エアカンガルーのキックをお見舞いするよ!」
「うっ・・・こちらのモンスターの特性を逆に生かしたッスね。 攻撃の破壊を無効に出来るのは一度だけッスから破壊されるッス。」
元々複数回攻撃が得意だったゼルダだが、その特性を相手モンスターとの兼ね合いも含めた戦術になっている。 複数回攻撃=相手モンスターを仕留めやすいという考えは合っているが、その分相手のライフコアへのダメージが極端に減ってしまうのがゼルダのデッキの長所と短所であった。 火力不足を補う形に整った感じだな。
「俺っちのオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 ・・・おっ、このカードは強力ッスよ? 俺っちはコストを8つ支払い「Ws ダブルスタイ」を召喚するッス。 ダブルスタイは自分の捨て場にあるWsモンスター1体を装備カード扱いに出来るッス。 そしてそのステータスを受け継ぐッス。 さっき送られたガンシルドを装備するッス。」
ファルケンはファルケンで、捨て場からの運用に力が入っているな。 こちらはゼルダとは違うパワー不足ではあるものの、モンスター同士の効果を使いあって、別々の力を発揮している。 2人ともこの旅で十分な成長を遂げているようだ。 そんな二人を見送り、俺は早くに床に着くのだった。
「さて、いよいよ洞窟に入っていくわけだが・・・」
翌朝、俺達は洞窟の入り口の左右から挟むように中を覗く。 当然ながら目の前は日の光など射しておらず、奥がどのくらいの深さと長さか把握がしづらい。
「ファルケンの目でもダメか?」
「俺っちの目もさすがに見えないッス。 光る鉱物もないッス。」
「サヴィ、ミルレ。 この洞窟の構造は?」
「上から見たところ、山などではありませんでしたわ。 岩の一部が欠けて、そこが入り口になっているに過ぎませんでしたわ。」
「そうね。 反響索敵の魔法を使っても、奥よりは下に伸びてる感じ。 しかも一定の距離を進むと大きな空間に出たわ。」
「人の気配は?」
「感じ取れない、というよりなにかに妨害されてる?」
敵がいるのか、魔方陣関係か・・・ いずれにしても直接見ていないと考えると、その辺りが限界かもな。 となるとやはり、行くしかないのか。
「これから洞窟に入る。 が、ある程度メンバーを分散していこうと思う。」
「全滅の可能性を低くするので御座るな。」
「そう言うことです。 まずは俺とアリフレアで入ります。 そして20分経っても戻ってこない場合は、また別の部隊を編成してくれ。 なるべくならある程度戦闘面でバランスが取れた方がいい。」
俺とアリフレアが先行する理由は俺なら戦闘面は全面的にいけるし、負傷者や介護しなければいけない場合に、アリフレアに任せられるからだ。
「行こう、アリフレア。」
「はい、ご主人様。」
「お気を付けて。」
俺とアリフレアは念のため買っておいたランタンを掲げながら奥に進んでいく。 道幅は広くはないが2人が通れない訳でもない。 岩壁に触りながら進んでいるので、異変があればすぐに気が付ける。
「アリフレア、違和感はないか?」
「はい。 今のところは、これと言って。」
俺はアリフレアと手を繋ぎながら歩いている。 互いに異変に気が付きやすくなるのと、片方がいなくなったらすぐに異変だと分かるからだ。
「しかしどこまで下るんだ? サヴィが嘘をついているとは思わないが、それにしても長すぎないか?」
なかなかサヴィが言っていた空間にたどり着けないなと考えていると、アリフレアから手を引っ張られた。
「どうした?」
「ご主人様。 なんだか、壁が、先程よりも、冷たくなっています。」
「冷たく?」
そうして改めて触ると確かに冷たかった。 もっと言えば。なにか湿気ったような感触もあった。
「なんだ? この洞窟のなにかに関係しているのか?」
そんなことを考えていたらなにかの音が聞こえてきた。 しかもそれは後ろから聞こえてくるのだ。
「な、なんの音だ? 今この壁に触れた事でなにかが作動したのか?」
とにかくなにかがマズイと感じた俺はアリフレアを抱えて、急いで洞窟の奥に進んでいく。
「おいおい! 後ろからだったら入り口にはベルジア達がいたはずだぞ!? それとも俺達が見つけていない通路でもあったのか?」
そんなことを今さら考察しても仕方ない。 今は奥にある空間に逃げることが最優先事項だ!
「アリフレア! 俺から離れるなよ!」
「は、はい!」
抱えられているのでそうそう離れることは無いだろうが、念のため言っておいた。 そしてその音の正体が分かってくる。
水だ。 翡翠色をした水が流れ込んで来たのだ。 そしてその圧倒的速度と水量に俺達はあっという間に飲み込まれてしまった。 そして水流が強すぎたせいか、しっかりと首もとを掴んでいた筈のアリフレアが離れてしまった。
この洞窟にこんな罠が仕掛けられていたとは・・・洞窟だから逃げ場もない、このまま溺れ死ぬのか・・・俺達は・・・ そう考えた瞬間に、目を開けていられずに、そのまま闇に飲まれた。
次回は少し変わった風景をお見せします。
後少しだけ投稿を遅らせます。
2022/7/12
修正しました。




