全員集合
2人の友情を確かめあった時には日が暮れてしまっていたので、アルフィストの街で一度泊まることにした。 ベルジアには家があるので、そちらに戻ればよいのでは? と思ったが、ベルジア自身は気にしていないようなので、そのまま夜を明かした。
翌日、俺は一度マーキュリーに戻ることを提案する。 ミカラ様に今後の行き先について色々と相談もしたいからだ。 だがその前にファルケンを回収しに行かなければならないので、「ウィンディア」を使って、ファルケンの産まれ故郷とも言える「イークス」の街に向かうことにした。
「それにしても驚きました。 ここまで亜人との交流が盛んだとは、思っても見ませんでした。」
「ここは特にそう言った人種差別みたいなのに縛られていないからね。 まあ縛られていないって言っても、ゼルダの時みたいに奴隷として遠方から密輸されたこともあったけど。 あれってミカラ様に相談すれば取り締まりの強化とかするのかな?」
「そうだったのですか? ゼルダさん。」
「そうですね。 ボクが連れ去られた時の事はあんまり覚えてないんですけど、セージと出会ってからは、そんなことも忘れちゃったな。」
いや、故郷の事を考えたら忘れたら駄目だろ。 とはいえそれだけ思い出に残ったと考えるなら、それでも良いかとも思えた。
「でもまだまだ亜人の迫害主義は終わっていない。 特にゼルダは珍しい品種の亜人だから、別の意味でも危険だったりするんだ。 もし迫害主義じゃなくても、物珍しさから欲しがる輩もいるかもしれない。 だがゼルダを普通に保護するには色々と限界がある。」
「だからこその「奴隷の首輪」ですか?」
「それでも俺は拒否したんだぜ? それでもゼルダは望んだんだ。 だが奴隷のような扱いはしていない。 アリフレアだってそうだ。」
暗くなりそうな事を言う前に、俺は頭から言葉を打ち消すように首を横に振る。 綺麗なままでいるのは不可能だ。 ならばせめて仲間といる時だけは、聖人になろう。 そう心に決めていた。
「もうすぐイークスが見えてくるな。」
「ああ。 今頃ファルケン、子供達に揉みくちゃにされてんじゃないか?」
「慕われているのならそれも良かろうて。」
ベルジアと会話しながら空を飛んでいると、ふと下から声がし始めた。
「あ! 来たよ! セイジの兄ちゃん達!」
「すげぇ! 大将と同じで空にいる!」
「いいなぁ! 私達も空を飛びたい!」
下を見ればイークスの子供達、ファルケンが面倒を見てきた子供達が、俺達を迎えに来てくれたようだ。
「おーいみんな! ファルケンは近くにいるか?」
「うん! 今はイクシリアさんと話してるから、もし来たらちょっと待っててって言ってた。」
それなら待たせて貰うかと俺達は地上にと降りる。 すると子供達がワラワラと俺達の周りに集まってくる。
「ねぇねぇ! さっきはどうやって飛んでたの!? 師匠みたいに羽が無いのに!」
「魔法の力で飛んでたんだよ。」
「魔法の力!? 魔法って存在するの!?」
意外にも驚いた様子で俺達に話しかけてくる子供達。 ファルケンは魔法の事を話していなかったのか? まあ元々飛べるファルケンがいるわけだし、この子達にとっては、ファルケンの方がヒーローみたいなもんだしな。 話してないのも、そういう意味があるのかもな。
「よーし、じゃあファルケンが来るまで、お兄さんがみんなを空に行かせてあげよう。」
「ほんと!? やったー!!」
子供達が大喜びしている。 空を飛ぶなんて夢のような事をして貰えるのだ。 嬉しくないわけがない。 実際俺も空を飛べた時は本当に感動したものだ。 今となっては普通に飛んでいるが。
「それじゃあみんな、俺のところに集まって。 絶対に離れるんじゃないぞ。 「ウィンディア」。」
そうして子供達と共に空へと浮かび上がる。
「うわぁ! 宙に浮いてる!」
「凄い凄い!」
みんなが喜んでくれてなによりだ。 魔力量的にはまだまだ人を浮かびあげられる感じがする。 荷馬車+5人がそこそこ辛く感じるから、人を浮からせるのは意外と楽なのか?
「あ、あの子一緒に浮かんでないよ。」
そう子供の1人が言いながら指差すところを見ると、確かに1人置いてけぼりにされていた。 困ったな。 1回着地すると次の魔力で浮かび上がるのに時間がかかるんだよなぁ。 そう思っていたら、後ろから黒い物体がその子を俺のところまで持ってきた。 そしてその黒い物体の正体は
「あ、大将!」
この街の大将と呼ばれているファルケンだった。
「すいませんっす師匠。 話し込んでたら時間に間に合わなくなっちゃったっす。」
「気にしてねぇよ。 それよりもファルケンも俺らと一緒に旅をすることに決めたのか?」
「うっす。 世界はまだまだ広いっすからね。 見たこともないものを俺っちが見に行くのも、役目みたいなものっすから。」
「そうか。 これからも頼むぜ。」
「うっす!」
夢を見せるのが大人ならば、また壊すのも大人。 だがファルケンはそんなことは絶対にしないだろう。 それがファルケンにとっての生き甲斐であり、プライドだろう。 だが守りたい存在があるというのは、どんな力よりも力をくれる。 それが今に繋がる事になるから。
ひとしきり子供達と空中散歩を楽しんだ後、俺達はイークスの街を離れ、マーキュリーの本殿に向かうことにした。 このまますぐに向かうよりも、ある程度は目的地を定めておきたかったからである。
「師匠。 そもそも次の旅って、ミカラ女王の命令によるものなんすか?」
「んー。 今までみたいな同盟の事は今回は無いんだけど、事情は言っておかないと「あなた達が抱えている問題を解決しますよ。」なんて勇者でもない限りは頼まんだろう。 ま、間接的に関わってるって思わせておけば、納得するんじゃないか?」
「そう言うもんっすかねえ?」
ファルケンが首を傾げるのも無理はない。 なにしろこちらも半信半疑もいいところなのだから。
だからこそ色々と準備が必要だったりするから、こうして戻る事にしたんだ。 文句は受け付けんぞ。
そしてマーキュリーの宮殿に着くと、1人の面影が門の前に座っていた。 なにをしているのかと声をかけようと思ったが、その面影は俺達にとって見慣れた人物だった。
「何をやってるんだ? サヴィ?」
「ああ、セイジ君。 ようやく戻ってきてくれた・・・」
「ようやく? ・・・もしかしてこっちに来てから、ずっとここに座ってたのか?」
「ずっとって訳じゃないけど、あなた達がここにいないって言われたから、仕方なく帰りを待っていたの。 あたいまであちこち移動したら、入れ違いになるでしょ?」
「それはそうだが・・・」
なんかもっと俺達の動向を探るなり、念写したりして、俺達と合流する方法もあったような気もするが、なぜそれを使わなかったのか疑問である。
「あんなものは断片的だったり、乱れたりするから、安定しないのよ。 だったら帰ってくるのが分かっているここにいた方が懸命だと思わない?」
さらりと思考を読まれたが、サヴィが言うのならその通りなのだろう。 魔法も万能では無いようだ。
「ならミカラ様の所に行きますか。 どうせ色々と説明とかしないといけないし。」
そう言って門の人たちに敬礼をした後、俺達は王宮へと入った。
「次に向かう目的地の方は、私が案内を出しておきました。」
俺達が戻ってきて、ミカラ様の第一声がこの言葉だった。 どうやらミカラ様は俺達の今後の動向を既に読んでおられるようだった。 やっぱりこの人には勝てそうにもない。 頭でも権力でも。
「そちらの方ははじめてお会いしますわね。」
「そういえばそうね。 あたいはサブリミナ・ハイロゥ。 魔法使い族なの。」
「へぇ、魔法使い族なんて、本当に存在していたんだ。」
「本の中の登場人物かと思っていたぜ。」
ムサロ王子とメスリ王子もさすがに魔法使い族とは遭遇をしていなかったようだ。
「それで、案内はどこに送ったのですか?」
重要なのはそこである。 今後の行動にも関わってくる重大な問題だ。
「私が送った先はここから前回向かった場所とは逆の位置にある街。 「コルダーナ」ですわ。 ここは先日聞いた通り、ある洞窟に行ったまま戻らないという場所のある街です。 原因を突き止めてきて下さい。」




