パワーバーンVSハンドレス 3
「まさか、汝がその手を使ってくるとは・・・セイジ殿の影響で御座るか?」
「完全にそうかと言われれば違うが、似たようなものだな。」
零斗さんは冷や汗をたらし、ベルジアは作戦が上手く行ったかのように、少し口角をあげていた。
『モンスター:溶岩竜 マーグラド レアリティ 桃 コスト 8
種族 竜族
このカードが存在する時、相手に与える効果ダメージは2倍となる。
ATK 12 HP 12』
「・・・あれ? あのマーグラドって、コストが8ってなってるけど、「守られた子孫」の効果って、プラポレーションタイムの数の2倍だよね? コストも4つしか支払ってないのに、どうして召喚が出来るんだろう?」
ゼルダがマーグラドの効果を見ていると、そんな疑問を言葉に出した。 ふむ、これはパズルみたいなものかな?
「確かに「守られた子孫」の効果を効率良く使うには、もっと自分のターンを回すか、直接「効果処理」をしなければ、あれだけのモンスターは召喚できない。 だけど、そんなことをしている間にジリジリと手の内が無くなって、結果卵は破壊されるのが自然になっちゃう。」
「だったら・・・」
「でもベルジアは、自分で条件を作り出して、ちゃんと召喚できたって訳。」
「条件?」
「槍竜 ドランスの効果を活用したんだ。 あいつがフィールドに入れば、自分が「竜族」を召喚するためのコストは半分になる。 だから「守られた子孫」を、本来残さなければいけないターンを回すこと無く、あのマーグラドを召喚できたって訳だ。」
とはいえそこまでの機転を利かすことは今までのベルジアではあり得なかった。 自分の都合で動く奴ではなかったが、その分危うさもあったから、これもまた成長の証だろう。
「なるほど。 拙者にあの「守られた子孫」を攻撃させることで、相手の手番で召喚する算段だったで御座るか。 しかし攻撃対象はいなくなっただけで、対象を変更できることは、忘れてないで御座るな?」
零斗さんの言う通り、あの戦法は一時しのぎ位しかならない。 しかも出したモンスターも新衛兵の前にはすぐに破壊されてしまうだろう。
「新衛兵で再度攻撃をマーグラドに攻撃を仕掛けるで御座る。」
まだ攻撃を終えたわけではないのだ。 となればベルジアはどう出てくる?
「当然忘れていないでしたし、そうして攻撃を仕掛けてきてくれたのは、好都合ですよ。」
そう言ってベルジアは手札からカードを使う。
「私はコストを4つ支払い、インタラプトカード「ニ竜の咆哮」発動。 自分フィールドに「竜族」が2対存在するので、コンバットタイムを終了する。」
そこまでが布石だったか。 攻撃はこれ以上は出来ない。
「休息に入り、拙者は休戦するで御座る。 ベルジア殿。 そろそろ自分の領域で、自分の命の灯火を消し去ってしまうぞ。」
今のところ「活火山の火口」の効果を受けているのはベルジアだけ。 しかも「マーグラド」を出したところで、零斗さんには「暗黙を知る者」がいる。 奴を倒さない限りは、零斗さんへのダメージは増えていかない。
「私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。」
この場合、ベルジアはなんとしても「暗黙を知る者」の破壊に専念するか、逆手にとってダメージをあげるかを選択されるのだが、ごり押しが通るほど零斗さんは弱くないし、かといってベルジアも策の練り方はあるだろう。
「私はコストを3つ支払い、ボムドラを召喚する。」
これでベルジアのフィールドは3体。 一方で零斗さんのフィールドには2体いるが、片方は新衛兵なため、なかなか倒すのには骨が折れそうだ。
「コンバットタイム! 槍竜 ドランスで新衛兵に攻撃!」
「受け止めよう。」
おっと、なにもしてこなかったか。 いや、手札があるからなにも出来なかったと言う方が正しいのか? ドランスと新衛兵の激しい戦いが繰り広げられる。
「ドランスはもう一度攻撃が可能! そして疲労し尽くした衛兵ならば、ボムドラでも倒すことは可能! 沈ませるのには時間がかかったが、落ちてもらうぞ!」
ドランスが新衛兵を翻弄している間にボムドラは影からの一閃の為に、音を殺して近付く。 そして攻撃のための火薬を吐いて、新衛兵の背後を爆発させた。 流石の衛兵も後ろからの攻撃には耐えられなかったようで、そのまま前のめりに倒れてしまった。
「随分と倒すのに時間がかかったで御座るな。 しかしこの程度なら、痛くも痒くもないで御座る。」
「まだ攻撃は残ってる! マーグラドで暗黙を知る者に攻撃!」
マーグラドの攻撃が暗黙を知る者に当たる。 こちらはしっかりと元のダメージが入る。
「そのモンスターを破壊出来なかったのは残念だが、必ず次で破壊して見せる。 クールタイムに入り、私はエンディングを迎える。 そして「活火山の火口」の効果も受け入れる。」
こうしてベルジアのライフコアが着々と減っていく。 このままでは負ける一方なのだが、これくらいではもうベルジアは揺らいでいなかった。 精神的な成長は、動揺をしないことにもある。 それだけ自分の中に力を付けた証拠なのかもしれない。
「拙者の開戦、そして山札を引く。 戦闘準備。 ベルジア殿。 汝も成長しているように、拙者も成長はしている。」
「ああ。 分かっていないつもりではない。 だからこそ私はレイトを選んだ。」
「故に拙者の成長の証を見せるで御座る。 「暗黙を知る者」を破壊できなかったのは、汝にとって一番の痛手となるで御座ろう。」
そう言いながら、零斗さんは手札のカードを手に取った。
「拙者は代償を20支払い、そして手札と場の「暗黙を知る者」を捨て場に送る事で、この兵を召喚しよう。 我が主は王から一介の冒険者の者となった。 我が剣は皆のために使おう。 「流離いから学びし剣豪 武蔵野」!」
『モンスター:流離いから学びし剣豪 武蔵野 レアリティ 金 コスト 20
種族 衛兵
このカードはコストの他に、手札1枚と自分フィールドのモンスター1体を捨て場に送る事で召喚できる。
手札が0枚の時、相手フィールドのモンスターを破壊した時、相手のライフコアに8のダメージを与える。
自分フィールドにこのモンスターしか存在しない時、自分の捨て場に存在する魔法カードをデッキに戻す。
このカードを攻撃してきたモンスターは、次のコンバットタイム時、攻撃力を半分にする。
ATK 25 HP 40』
あれが零斗さんの新たなるエースモンスター。 昔は傭兵だった面影を残しつつも、無精髭を生やしているその姿はまさに流浪人。 だがそこから挿すような眼は、決して衰えてなどいない。
「戦争準備! 武蔵野でドランスを攻撃! 更に捨て場に存在する「畳返しの隠し武器」を発動するで御座る。」
『魔法カード:畳返しの隠し武器 レアリティ 紫 コスト 5
相手のモンスターの攻撃を無効にする。 手札が0枚で捨て場に存在する時、このカードをモンスター1体の装備カードとして「ATK+5 HP+5」として装備する。』
これで更なる攻撃力の上昇に成功した零斗さん。 それに対しベルジアは対抗策が無いようで、ドランスを破壊させざるを得なくなってしまった。
「・・・良かったのか? ドランスは確かに私のモンスターの召喚を手助けする。 だがダメージを稼ぎたいなら「ボムドラ」がいたのだが?」
「その手には乗らぬで御座る。 汝の場には他に「マーグラド」がいる。 浅くとも負傷は抑えておきたいのも、戦いにおける戦術で御座る。 休息に入り、拙者は休戦に入る。 そして「活火山の火口」の効果が、拙者にも適応するようになった。」
互いにダメージを食らった後に、俺は改めて2人の現状を見る。 この盤面、明らかにベルジアの方が不利になっている。 先程のドランスを破壊されたことによって、高いコストのモンスターの軽減召喚が出来なくなってしまった。 更に悪いことに、純粋火力も今はベルジアの方が低い。 一転攻勢、正しくその言葉が似合う局面だ。
ベルジアに零斗さん。 2人とも俺との出会いかたは敵同士だった。 ベルジアは一領主の考え方の衝突で。 零斗さんは俺と言うもう一人の異世界人の存在を知ったことによって。
だが2人とも、俺達の旅において、変化が起きた。 ベルジアに至っては、スキルが変更される程だ。 そんな2人の戦いに贔屓目は使わない。 2人なりの成長と、戦いの行く末を、ただ見守るだけだから。
「私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 私も、勝ちに拘らせてもらう。 レイト。」
「うむ、その意気や良し! 劇を盛り上げようぞ。」
彼らの劇場は、場面転換と言う形で、新たな戦いへと変化し始めた。
現状
ベルジア ライフコア 45
溶岩竜 マーグラド
ボムドラ
活火山の火口
零斗 ライフコア 52
流離いから学びし剣豪 武蔵野+畳返しの隠し武器




