空中散歩
2人でそう唱えると、地面に足がついていない感覚になる。 実際下を見てみるとふんわりと浮いているので、そうなるのだが。 後ろを見ると同じようにドーホース達もその荷馬車も浮いているので、魔法は成功していることだろう。
「セイジ様。 凄い魔法量ですね。」
「あ、やっぱり馬車ともなると相当量必要なんだ。」
「それもありますが、浮遊できる高さも、魔法量によって変化します。 私のと合わせてここまでの高さは凄いことですよ。」
確かに城よりも高い位置に飛んでいるのは不思議なものだ。 サンタクロースとかになった気分だ。
「さてと、ならハーキュリーに向かって飛んでいきますか。 道案内頼めるか? ファルケン。」
「了解したっす! こっちっすね。」
そうしてファルケンを先導として、俺達は空を飛んでいくことにしたのだった。
しばらく浮遊に慣れるために飛んでいたが、大分身体が馴染んできたようなので、荷馬車の方へと向かい、中にいるみんなに声をかけた。
「アリフレア、外を見てごらん。」
荷馬車の後方のカーテンを開けてあげる。
「うわぁ! ほ、本当に、空を、飛んでいます!」
アリフレアは外を見るなり目を輝かせた。 この子は最初にあった時からこうだった。 好奇心旺盛というよりも、知らない世界を見ることが楽しくて仕方ないのだろう。
「なんというか、アリフレアさんを見ていると、こちらまで元気になりますね。」
「最初はこんな風じゃなかったからね。 俺も余計にそう感じるよ。 他のみんなはいいのか?」
「ちょっと風が冷たいからボクはいいかな。」
ゼルダはトカゲの亜人故に、変温動物な彼女は前の高所での温度差にやられていたので、それもしょうがないかとも思った。
「ファルケン。 今はどの辺りを飛んでる?」
「そうっすねぇ。 あの感じだとアイルメーヌって感じっすかねぇ。」
ファルケンの言葉に、以外と進まないのかと思った。 そしてそんな言葉に、馬車の逆側にいたミルレがこちらに聞いてきた。
「セイジ様。 少し気になったことを聞いても、よろしいでしょうか?」
「どうした?」
「彼、ファルケンさんと呼ばれましたか。 彼は亜人という種族で間違いないのでしょうか?」
「ああ、間違ってないぜ。 あいつは鷹の亜人なんだと。 因みにゼルダがさっき風が冷たいからって言ってたよな? ゼルダも亜人なんだ。」
「そうだったのですね。 亜人ということなら、私も半分は妖精族の血が流れていますので、ある意味似た者同士なのかなと。」
そう照れたようにいうミルレ。 俺としては亜人迫害思考じゃなければ問題はない。ミルレはそう言う子じゃないのは何となく分かるし。
「やっぱり国境の事を考えなくて済むのは、便利なものだよな。 その分結構疲れるけれど。」
城を出てから数時間位経った頃。 現在はハーレーストラの上空を飛んでいる。 アイルメーヌとハーレーストラは国土がそこそこあるので、最短でも結構かかってしまうのだ。 まあ、森の中を走ったりしなくなっただけ楽にはなってるんだがな。
「セイジ殿。 夜の飛行は止めておいた方がよいでは御座らぬか?」
荷馬車の近くを飛んでいたため、零斗さんの声が聞こえてきた。 先程から空での大きなトラブルは起きていない。 遭遇するのも野鳥位だし。
「大丈夫ですよ零斗さん。 俺も夜はオストラレスで休息を取るつもりですから。」
「そのままハーキュリーには行かないのか?」
「この飛行魔法、結構魔法量持ってかれるんだよ。 それに馬車や人を持ってるから、それ相応に魔法量が減ってるんだよね。」
「それでもここまでの飛行能力は凄いと思いますよ? セイジ様の魔法量のなせる業です。」
それは確かにそうなんだよな。 サヴィと合流したら1回どのくらいの魔法量なのか本気で見て貰うか。
「それがひとつの理由で、もうひとつは夜の海は危険だという事だ。」
「方向感覚が分からないまま進むと、目的地を見失う。 船と同じ理屈というわけか。」
「そういうこった。 だから下手して早く帰るよりは、安全に行った方がいいだろ?」
それよりも俺の魔法量が無くなって、海に落ちる方が悲惨だ。 ならば無理を過信しない方が何倍もマシである。
「師匠。 どの辺りで降りるっすか?」
「ん、そうだなぁ。 この状態で街に入ると色々と目立ちそうだから、森の中に入るか。 今日は森の中で一夜を過ごすか。」
「そんなことをしてもよいので御座ろうか。 今回は一国の姫と同伴しているので御座るが。 いや、それを言うならベルジア殿も次期領主で御座るな。」
「私の事は気にするな。 成り上がりだったということもあって、この旅に苦悩はしていない。」
それならそれでいいんだけどよ。 そんなわけで、ある程度先に進んだ辺りで着地をするようにファルケンに報告をし、俺達は空中散歩をもう少し楽しむのだった。
一度夜を開けた翌日。 オストラレスの森から一気に海へと飛んでいった。 流石のドーホース達も驚きを隠せないようだ。
「海です! 海が見えますよ! ご主人様!」
アリフレアは興奮気味に下を観ていた。
「アリフレア。 身を乗り出すのはいいけど、あんまり乗りすぎると落ちちゃうぞ。」
「はぅ! ごめんなさい・・・」
いや、別に怒ったわけでは無いのだが・・・ 事実危険ではあったので、まあアリフレアが気を付けてくれればそれでいいんだけども。
「俺っちも海を飛ぶなんて初めての事っすよ。」
「あれ? 前に船で来たときは飛んでなかったのか?」
「師匠。 俺っちは亜人っすよ? 外で飛んでたら大騒ぎになるじゃないっすか。」
おっと、そう言えばそうか。 まあこの現象も事実目をつけられるがな。
「お、師匠。 見えてきたんじゃないっすか?」
そうファルケンが指差す先に大陸が見えてきた。 一応ファルケンの地図との兼ね合いの確認の元で進んでいたので、十中八九ハーキュリーの島国だろう。
「あれがセイジ様の生まれ故郷なのですね。」
「正確には違うけど・・・まあいいか。」
そうして近付いてきた辺りで、俺は確認しておきたいことがあった。 主にファルケンとベルジアに。
「なぁ、このまま一度、お前達の生まれ故郷に飛んでいくことも出来るが、どうする?」
質問を受けたベルジアとファルケンは少しだけ考えた後に
「せっかくだが、後回しでも構わない。 それよりも報告の方が先だろう。」
「俺っちも同じ意見っす。 そもそも帰ってきたら子供達に捕まるっすから、しばらく離れられなくなるっすよ。」
そうかと思いつつ、俺達はハーキュリーの国王であるミカラ様の元に行くのだった。
そうしてハーキュリーの首都近くに下ろして、後はドーホース達の走りに任せた、 何だかんだで走りたがってたし。
「止まれ。 ここは宮廷であるぞ。」
「すみません、ミカラ様に会いたいのですが。」
「なに? ・・・おお、誰かと思えば君か。 君が帰ってきたらすぐに案内させろと言われているんだ。 入っていきなさい。」
門番の人に顔パスさせると、ドーホース達を近くに置いて、宮殿の中に入っていく。 そして目的の人物のところまで歩いていき、そしてその戸を開けた。
「ミカラ様。 セイジ ノムラ。 ただいま帰還いたしました。」
そうして膝をつく俺達一向に、ミカラ様は座りながらも、待っていたかのように声をかけた。
「お帰りなさいセイジ。 早速報告を・・・と言いたいところですが、貴方に会わせたい人物がいるのです。」
「会わせたい人物?」
すぐに呼んできますので、ここでお待ちになっていなさいな。 貴方の方でも色々と変化があったようですし、それも諸々話し合っていきましょう。
そうしてミカラ様は俺達を置いて出て行った。
移動手段を手に入れました。
これで少しは移動も楽になる・・・はず。




