王からの直接報酬
『勝者 ノムラ セイジ これにより、セイジの無罪が証明されます。』
AI領域が消滅していき、そこにいたのは倒れているマヤコンとそれを見守っていたみんな。 更には目が覚めたカシオ王が立っていた。
「カシオ王、お目覚めになられたのですか?」
「うむ。 まだ身体は完全ではないがな。」
「なら横になられていた方が・・・」
「いや、これはこの国の沽券に関わる問題である。 簡単には眠れぬよ。」
そう言って衛兵の数名が倒れているマヤコンを連れていく。 抵抗できないのかとも見ていたが、どうやらあまりの事で気絶してしまっているようで、ただえっちらおっちらと運ばれていっただけだった。
「彼の詳しい話は明日にする。 今日は部屋で眠る方が良い。 寝付けなければ少々考えるが。」
「いえ、おそらくもう大丈夫ですよ。 明日になればある程度は自白するんじゃないです?」
「ならば良いがな。」
そうして俺達はみんなミルレ様の部屋に行き、改めて眠りにつくのだった。
「さて昨日のマヤコン大臣の件だが、大臣は昔から我が国の大臣としてはいたものの、深く交流はしておらん家系だった。 その事を嫉妬に感じ、求婚は迫っていたものの、わしが拒否をし続けていたので、大臣の家で世話をしている魔術師に、微量ずつ毒を盛っていたようだが、治ると焦った大臣は、今回のような手段を取ったと自白した。 どうも意気消沈気味だったので、嘘を取り繕う頭も失くなっていたのだろう。 わしやミルレが妖精族だと聞いたのは、魔術師が遠隔で聞いていたからとも話した。」
翌朝になりそのようなことがカシオ王から報告があった。 強行手段の方は、余程焦りがあったんだなと、本気で感じた。
「ちなみにマヤコン大臣の息子との面識は?」
「あるにはある。 が、素行に関して言えば、地位にふんぞり返っている馬鹿息子と言った具合だ。 あんなのを婿として迎え入れる気など、こちらには更々無かった。」
どっち道王様が死んでも変化は無かったって事か。 無駄に罪を重ねただけだったな。 合掌。
「それで処罰はどうなるんです?」
「未遂とはいえ王のわしを殺そうとしていたのだ。 国家反逆罪でマヤコン大臣本人は打ち首、お家は取り壊される・・・と、言いたいところだが、罪の償いをただただ死罪にするのもわしの気が少々済まない。」
「というと?」
「あやつはわしをこのようになるまで苦しめたのだ。 大臣にはそれ相応の苦痛を与えねば、わしが報われぬ。 大臣もその息子も地位にしがみついているだけで、なにもしていないようなものだったので、肉体労働の刑に処したのだ。 もちろんしばらくは無償でな。」
それを人は甘いというだろう。 だがなんの苦労もせずに高い地位など本来ならばあり得ない。 下々の苦労を知って初めて上につけるのだ。 そう見に染み込ませたいのだろう。 だから俺はなにも言わないようにした。
「大臣の処遇の話はこれくらいにして、セイジ殿。 そなたはわしの命の恩人だ。 なにか恩を返したいところではあるが、なにか望むものはあるか?」
「いえ、これといっては特に。 ほとんど成り行きのようなものですし、そのようなものを受けとる事は出来ませんよ。 そもそも我々はハーキュリーとの同盟を結ぶために来ただけでしたから。」
ここでなにかを求めようものなら、恩着せがましいにも程がある。 どっち道持って帰るに持って帰れないから、貰ってもしょうがなかったりするんだけども。
「ふふっ。 王直々の御礼を受け取らないとは。 欲がないと言えば聞こえが悪いが、謙虚なのだろう。」
そんなのが目的で王様を助けた訳じゃないし、さっきも言ったがこれは成り行きでこうなっただけなのだ。 御礼云々ではないだろうな。
「しかしわしとて恩人に対してなにもあげないわけにもいかん。 そこでどうだろう? 我が娘、ミルレ・フェアラティスを、そなたの妃として娶ってもらう、という形はどうかな?」
「あ、やっぱりそう言う流れになります?」
姫が好意を持っていて、自分の命の恩人ともなれば、こうなるのは意外にも必然的だったのかもしれない。 というか今回の事で確定させてしまった自分も自分だけど。
「ご主人様、王族?」
「さすがに王位継承には関係ないよアリフレア。 王族の関係者にはなるけれど。」
「はっはっはっ。 わしら妖精族としても、子孫を残せることが出来るのが唯一の喜びでもあるからな。 わしとしても、少々荷が下りる。」
その辺りは人間の種の繁栄と同じ考えなんだな。 とはいっても数を増やしすぎるのも良くないのだろう。 地道な種族存亡はかなり危険な賭けだろうな。
「でもハーフフェアリー族のミルレ様と、普通の人間のセイジ君との間の子供って、妖精族の血統はどうなるのよ? まさか1/4になるとか言わないでしょうね?」
「そこまで血統自体は薄くならんよ。 それに人間の中にも、魔力量がそれなりにあるものもいる。 妖精族も魔法使い族には劣るが、魔法の関係は使えるからの。 もしも配偶者に魔力があるのなら、その子供はハーフか純粋な妖精族になることだろう。」
へぇ、植物とかの遺伝の法則とかではないのか。 だからこそ相手は選ぶんだろうな。
そんなことを話を聞きつつも考えていると、こちらに歩いてきて、俺の目の前で止まったミルレ様の姿があった。
「私、ミルレ・フェアラティスは、セイジ様の妻として、生涯を共にしたいと存じております。 何卒私めを可愛がってあげてください。」
そう丁寧に頭を下げるミルレ様。 こうなる運命だったのは、果たして神様達もどこまで掴んでいたことやら。 妖精族のお嫁さん・・・ねぇ。 カードゲーム1つで、ここまで大きくなるものなのか。 俺はそう思わざるを得なかったのだった。
「ここまで同盟の話が進んできたなら、一度ハーキュリーに戻りたい所だな。」
「そうだな。 だが私達はあまりにも遠くに来すぎた。 戻るにしても同じ期間戻るとなると、1~2ヶ月はかかるぞ。 それまでにドーホース達を無理させるわけにはいかない。」
そうなんだよなぁ。 それに国によっては本当に面倒になってる場合もあるからなぁ。
「あの。」
俺とベルジアで頭を悩ませていると、ミルレ様からお声がかかる。
「ん? どうかしました? ミルレ様。」
「よろしければ私の飛翔魔法をお使いになられますか?」
「え?」
「私は攻撃魔法などは行えないのですが、支援魔法の方は充実しております。」
「じゃあやっぱりこの国を覆っている結界は・・・」
「私の防御魔法となります。」
会話に聞き耳を立てていたサヴィが納得するようにミルレ様に声をかけた。 そんなミルレ様は、俺に向かってなにかを言いたそうにしていた。
「ミルレ様?」
「セイジ様。 その、私めのことは「ミルレ」と呼び捨てで構いません。 それと、喋り方ももう少し崩して貰って結構ですので・・・」
あぁ、そう言うことか。 確かに彼女は王族ではあるが、それ以前に1人の女の子として俺に見て欲しいという訳か。 その方が親近感は沸くかな?
「分か・・・った。 今後からは気を付け・・・るよ。 ミルレ。」
変な丁寧言葉だったが、慣れるまでに時間がかかるかもしれないな。
「はい。 よろしくお願いいたしますね、セイジ様。」
そっちは直してくれないのか。 まあいいか。 とりあえずは一緒に行動することになるわけか。 お姫様だからという具合で守りすぎない方が、彼女の為にもなるかもな。
「じゃあ早速だけれど、その飛翔魔法でハーキュリーまで、飛んでいこうか。 ミルレ。」
「はい!」
「あたいはカシオ王様の容態を診てからになるから、数日遅れるわ。 飛翔魔法は教えて貰えれば自力で行けるから、心配しなくていいわ。」
そうしてミルレを連れて城の外に出る。
「それで、飛翔魔法にはなにか条件とかあるのか?」
「そうですね。 この飛翔魔法は詠唱した人以外は飛ぶことが出来ないという逃れ欠点なのですが、身体に触れていれば、第三者も飛ぶことが出来るようになりますよ。」
「馬車とかは?」
「魔法量で出来たり出来なかったりします。」
なら俺の魔法量はサヴィの折り紙付きだ。 おそらく馬車も飛ばすことが出来るか。
「俺っちはそのまま羽で飛べるっすから、大丈夫っすよ。」
ファルケンがそう言っているので、俺は前に、ミルレを後ろにおいて、詠唱を唱えることにした。
「ミルレ、準備はいいね?」
「いつでもどうぞ。」
「じゃあ行くぞ。」
『我を空に舞い上がらせたまえ。 ウィンディア。』




