狙われた王族
「それはそれは。 とても大変だったことでしょう。」
「はい。 でも今は、ご主人様が、おられますので、なにも、不安ではありません。」
やはりアリフレアはミルレ様とはすぐに打ち解けるか。 妖精族の年齢感覚は分からないが、それでもアリフレアと同じか少し上程度。 年代が近ければ話しやすいだろう。 とはいえアリフレアの場合は俺と出会う前の生い立ちの事もあるから、同情しているのかもしれないが、そこは触れないでおこう。
「セイジ殿。 あのミルレという少女。 どうやら後ろだてするようなものはないように感じるで御座る。」
「でもさすがに気が早すぎるんじゃないッスか? いくら水晶で見たって言ったって、師匠を一目見ただけでお婿にするって、どうなってるんスかね?」
零斗さんとファルケンはまだ疑いがあるようで、警戒は解いていない。 確かにこちらとしても突発的に言われては身構えるのは当然だろう。
そんなことを思っていると、サヴィが俺達のいる部屋のドアを開けて、中に入ってくる。
「簡潔に話すわ。 まず王様がかかっていたのはただの病じゃないわ。 これは他方からの毒による、身体の弱体化よ。」
「他方からのって、毒を盛られたって事か?」
「ええ。 しかも気が付かないように、微量ずつね。」
毒か。 どちらにしても厄介な事には変わり無いか。
「しかし微量ずつなら、毒は体内に蓄積されて、抗体が出来上がったりしていないのか?」
「残念だけどセイジ君の言っているのは「物理毒」。 液体や固体で存在する毒で、それなら幼少期から本当に微量ずつ飲めば、身体に免疫がついて、その毒に耐性がつく話はあたいも本で読んだわ。 だけどこの毒は「魔法毒」の方。 魔法の力で生成された毒で、更に厄介なのはその魔法毒が王様の身体に複数存在すること。 日に日に違う魔法毒を盛られていたのね。 食事や薬に入れやすいから。」
毒にも種類があるのは知っていたが、まさか物理的な物でないとは。
「あの、父は、治るのでしょうか?」
ミルレ様がそう不安がるのも無理はない。 自分の父親が病であるだけでなく、毒を盛られていたのだから、いつ亡くなるのか気が気でならないのだろう。
「完治するまでには時間がかかるけど、とりあえずすぐに死ぬって事もないし、大丈夫よ。 毒の方が複数あるから同時には消せないから、何日か留まることになるけど、問題ないわよね?」
「それは心配しなくていいぞ。 問題はどうやって魔法毒を入れたか、じゃないか?」
その言葉にその場にいる人全員が静まり返る。 もしこれで王の暗殺など決まったものなら、国家反逆罪で死罪は免れない。 仮に免れても王族ならば身分の剥奪位か。
「毒を盛るとするなら食事だろうか? 給仕や調理係が怪しくなってくるが・・・基本的に王族の食事は毒味も兼ねることもある。 もしかしたらそこじゃないかもしれないな。」
「分かんないッスよ? 毒味役だって、毒味をした後に毒を盛る事だって出来ないッスか?」
「む、それには気が付かなかった。」
「ちょっと待った。 さっきも言ったけど、王様は魔法毒にかかっているの。 つまり、遠隔でも毒を入れるのは可能だわ。 直接かけるのとは違うから、あれだと1年近くは年月がかけられてるわ。」
色々と議論が飛び交っているが、俺は毒の盛り方ではなく、犯人にとって、王が死んだときになにを得られるのかという部分を考えていた。 狙う理由は様々ある。 収益、地位、そしてミルレ様との内縁と婚約。 もしくはミルレ様がハーフフェアリーだと言うことを知っていて、その力を物にする、もしくは次世代に受け継がせる。 そんな考えが頭の中からわんさか出てくる。
「ご主人様? どこか痛いのです、か?」
「ん? あぁ、ごめんごめん。 もしも今の王様がいなくなったらって、ちょっと考えちゃって。」
「父が、ですか?」
「ミルレ様。 まずは確認なんだけど、君や君のお父さんが妖精族だということは、ここにいる人以外だと、誰がいるのかな?」
「ええっと、同じく地位を与えている人の数名でしょうか? でもほとんどは父の顔馴染みですよ?」
「その人達に息子、王子に値する人はいるかな?」
「ええ、何人かは。」
となるとこの線もはずすわけにはいかなくなったわけだ。
「あの、いくらなんでも父の顔馴染みですよ? 父を殺そうとするなんて・・・」
さすがに昔から知っている仲なだけに、疑いはしないか。 でもこれは国の問題でもある。 そして実際に起ころうとしている。 ミルレ様の未来のためにも、ここは言っておかなければならない。
「これが急に亡くなったなら色々と考えたかもしれないけれど、今回はゆっくりな毒殺だ。 これを病であることにして、ミルレ様に王位を継承させた後、弱っている王様のところに「我が息子を」とせがんでくるかもしれない。 国の反映だのなんだのと言い分をつけながらね。」
ミルレ様を脅すつもりはない。 だがあくまでもそういう事もあるということだけは言っておかなければ、ミルレ様自身のためにもならない、というわけだ。
「とにかく犯人探しは今じゃなくても言いとはいえ、警戒は必要だろうな。 王様を一人にしない、とまではいかなくても、厳重警戒はいるだろうな。」
提案はするが、実行するかはそちら次第だ。
「ならば、セイジ様は、私のお部屋で、一夜を過ごして、くれますか?」
その予想外の答えに、俺もみんなも固まるしか道は残されていなかった。
「・・・あの、さ。 一応言っておくけど、俺はまだ君の婿になったつもりはないし、まだ会って2時間と経ってない男を自分の部屋に招き入れて一晩過ごさせるというのは、少し常識外れというか、もっと別の方法が・・・」
「駄目・・・でしょうか?」
その言葉と涙腺を潤ませた目で上目遣いをされる。 ぐっ・・・その行動に心を奪われそうだ。 こんなことで理性を失う俺ではない・・・が・・・
「・・・分かりました。 ですが部屋にいるだけです。 一緒に寝たりはしませんからね。」
「はい!」
それだけを念入りに推して、とりあえずは王族を守ることだけを考えることにした。 守るといっても、侵入者が来ないようにするだけなので、拍子抜けな部分もあるが、これを怠ることで変わる運命があるのなら、変えてやろうじゃないか。
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そして夜になり、城にいる者が寝静まった頃。 城のそこには当然警備隊は配置されているが、予期せぬ場所にはいない。 その隙間を縫うように進むんで行く影が一つ。 その人物は上を見上げる。 目標は2階の部屋にいるのは確実。 それを知った上で影は、城に使われているレンガの隙間に指を掛ける。 普通の人間ならば登れないであろう場所から2階へと登っていく。
そしてその窓・・・ではなく更に上にある通気孔の中へと入る。 この通気孔だけは唯一他の部屋からも繋がっているため、大きく設計されていた。 そしてその通気孔から部屋へと入ることに成功した影は、目標であるカシオ王の元へやってくる。 カシオ王はひどく衰弱気味で、このままにしておけば、後数ヶ月で病気と判断されて、すぐにでもミルレに王位を引き継がせる形になることだろう。
だが影の目的として、今回はその確認のために来たのではない。 むしろ今の状況の方が、厄介なことになってしまったと悟った影は、懐に忍ばせておいた、一つのペティナイフを取り出す。 影としてはここで命を落として貰わねば計画が狂ってしまう。 そしてその影は月明かりに照らされたナイフを・・・
「おっと、そこまでだ。 動くんじゃないぞ。」
影は他方からの声に驚きを隠せなかった。 それもそのはずだ。 何故ならここにいた治療していった人間はいなくなって、本来ならここにいるのは王1人だと情報をくれたのだ。
ではなぜ彼がいる? 計画を破綻させようとするその発端になっている彼が、そこにいるのか。 影は理解が出来なかった。
後半は誰の視点なのでしょうか? みなさまの想像にお任せ致します




