この国の王は嫌われ者?
あれから間街を早々に出発し(あいつらに会わない為なのと、あいつらも俺達に会いたくないだろう)、ドーホースを走らせて、次の領土に入ることにした。 ここはまだ検問という類いは無いらしく、看板を見かけただけでそのまま走らせた。
「さて、次なる国「トヅナ」に入ったな。」
「前の国とはまた違った感じがするっす。 ここ、一応森なんすよね?」
ファルケンが疑問に思うのも無理はない。 この辺り一帯だけ、何故か道が舗装されており、まるでこちら側から来るのに対して、自分達は拒まないと言った具合だ。
「隣の国は戦争国家だったのに、こんなのを作ったら「どうぞ攻め込んできて下さい」って言っている様なものじゃない?」
「分かってやっているのかどうかが定かではないで御座るが、造られたのはおそらく最近で御座ろう。」
「どうしてそう思うんです?」
「拙者もこの近くに偵察を任された事があったで御座るが、拙者が傭兵だった時代には見かけなかったで御座るからな。 と言っても、その偵察もそれなりに昔ゆえ、実際のところは分からないが現状で御座る。」
つまり詳しいことは分からない、と。 この国の王様の頭が余程の馬鹿で無いことを祈ろうそうしよう。
ドーホース達と丸1日程走らせて(ちゃんとペース配分した上で)、ようやく大きな街に着いた。 繁栄はしていないが、特に住民も困っている様子もないと言った印象だ。
「どう思う? ベルジア。」
「平和ボケをしていると言えば聞こえは悪いが、あながち間違いでは無いだろう? それにここで暴れでもしたら、それこそ沽券に関わるからな。」
「それにしてもあれねぇ。 殺伐とはしてないけど、なーんか空気が澱んでいるわね。 ギスギスしてるって言えばいいのかしら?」
「仲が、悪いと、言うこと、ですか?」
「本当はあたいたちが気にすることじゃないんだけどねアリフレアちゃん。 でもセイジ君のお仕事の事を考えると、ちょっと良くないかもね。」
俺達の周りを見てみると、僅かながらに不満のようなものが見える感じがする。 聞き込みがてら、どう言った場所なのか調べてみるか。
「すみません。」
「ん? ・・・おお、いらっしゃい。 旅のお方?」
「そうです。 と言っても別の目的もありまして。」
「別の目的?」
「ええ、少々この国の王様と我が国の交渉の話を・・・」
そう言うと店主は、険しい顔へと変わった。 と言っても俺達がお客なのは分かっているので、極力崩さないようにはしているようだが。
「あんたら、どこかの国の使者とかなら止めておきな。 この国はあんたらの国に損を被るかもしれんぞ。」
「自分の住んでる国なのにそんなことを言っていいんすか?」
ファルケンは亜人でありながらも、なんだかんだで温かい町の人達の優しさに触れていただけに、店主の言葉には思うところがあったようだ。
「どうかなぁ。 俺達だって、国を治めてる人間に対してそんなことは言いたくないさ。 だが噂を耳にしていると、信用が出来なくなってくるんだよ。」
「噂とは?」
「この辺りはそれなりに店の競争率も激しいし、入れ替えのために必死なんだ。 で、空き家が出来るとすぐに色んなやつが店を出したがるんだな。 大抵はこの辺りの店と似たり寄ったりな店になるんだ。 話を聞くと、土地の所有権を手に入れるために王様と勝負するんだとよ。」
「勝負というと・・・カードバトルですか?」
「おう。 だがここからが妙らしいんだ。 なんでも制約上でのカードバトルらしいんだがな。 スキルが発動出来ないらしいんだ。」
「・・・スキルが発動出来ない?」
制約カードバトルではスキルを使用することが可能で、1人に1つ、その人の性格等でスキルが発動する。 またスキルが発現するのは、スキルの条件下にならなければ発現は出来ないのだ。
それなのに先程の店主の台詞は発動出来ないと言った具合だった。 つまりスキルを使用しているのに、そのスキルの効果が出ていないということになる。 高度な難問を突き付けられた気分だ。
「店主の話をどう思う? セイジ。」
あれから食べ物屋だった店主から、適当に人数分の食べ物を身繕い、そのまま適当な場所で馬車を止めて、その中で食べ物を食べつつ、考え事をしていた。
「まずはあらゆる可能性を考えたい。 みんなの意見を聞いてから、俺の見解を話す。」
「わ、私は、あのお店の、人が、嘘を、言っているように、見えません、でした。」
「じゃあ王様に関する噂が本当だって? あたいはそうは思わないわね。 王様は全うな事をしている。 だけど、住民が総出をあげて嘘をついている。」
「俺っちは国全体が嘘をついていると思うっす。 「王様はそう言うことをするんだ」という嘘を、住民にすり付けておくんすよ。 そうすれば大嘘国の完成っす。」
「ボクも店主は嘘をついているという意見だね。 そうして王様を陥れるのかも。」
「拙者は王の噂が嘘であり、それを王自体が発していると考えるで御座る。 さすれぱ噂が広まり、みるみるうちに芋づる式で御座る。」
色んな意見がとんだ中で、まだベルジアだけは発言をしていない。
「どうしたっすかベルジア。 ベルジアも何か言うっす。」
「次期領主なりに考えを纏めてるんだろ。 今は考えさせてやれ。」
そうファルケンに俺は釘を刺す。 そして数分後、ようやくベルジアが口を開いた。
「私は・・・その噂を流した人物が気になっている。 なぜそのようなことまでしたのか、だ。」
「それがどうかしたのかい? 別に気にするような事じゃ・・・」
「ゼルダ。 話を纏めさせて貰っていいか?」
ゼルダが何かを言いかける前に俺がそれを止める。 その俺の台詞にゼルダは止まった。
「今回のこの国の話について大きく3つの仮説がある。 1つ目は王様のスキル無効の話だ。」
「でも、その話は、噂だって、言ってましたよ?」
「噂であろうと本当であろうと、そんなスキルの有無は絶対に確認はしておきたい。 有れば対策しなければならないし、無かったら無かったで別のスキルで対抗してくる可能性だって否定できない。」
「ちょっと待って下さいよ。 ボク達、というかセージさんは、もう戦うつもりなのですか? この国の王様と。」
「あぁ、これは残り2つの仮説も兼ねてだ。 話を続ける。 2つ目は住民、さっきの場合は店主だ。 その店主が嘘をついている場合だ。 噂も王様の悪どい考えも実は作り話ということだ。」
「それが嘘なら王様の行いを明るみにすればいいってことかしら?」
「そう言うことだ。 住民に知らせていないからこうなってると考えれば、自業自得かもしれない。」
個人としては内国問題にまで加担はしたくないのでな。 身内の話は身内でやってくれと投げやりになる。 内戦や暗殺が起きてないことを考えれば、平和ボケも役には立つ。
「で、最後の3つ目。 噂を流した人物が王様を恨んでいる。」
「逆恨みで御座るか。 あまり大きな国ではない故、あり得ぬことでも無いだろう。」
「王様は、悪い事を、してない、のですか?」
「そう言うことになるな。 第一スキルが使えなくなったぐらいで、そんなに焦ることかと、俺は思ったな。」
「確かに。 制約上でなければ、ただのカードゲーム。 私達が遊ぶのと何ら変わりはない。 勝負でのいざこざは生まれるかもしれないが。」
「そこが狙いかもな。」
そうは思いつつも情報が足りないし、真相を確かめるには本人に直接会うのがこういった場合は手っ取り早いのだが、闇雲に突っ込めば返り討ちもあり得る。
「とはいえ聞き込みで踏み込んだらいけない部分もあるかもしれないしなぁ。 この国を見定めないといけない案件だ。 どうやって王様と接触する?」
ハーキュリーからは大分離れてしまっているし、ここら辺りまでくると、そもそも国自体も把握できなくなってきている。 この世界にどれだけの国があるか分からないが、この辺りで一度ハーキュリーに戻る算段を立てた方が良いかもしれない。 それはそれとしても、今回も直接会うのはかなり厳しいかもしれない。 かといって何度も同じ方法は使いたくない。 というか外交官というだけで話が通じるとも限らない。
「セイジ君。 正面突破は無理でも裏口からなら入れるんじゃない?」
「いや、そんな泥棒みたいな・・・って言ってもいられないか。 その案はまた後だ。 まずは外交官ということを伝えてみてからだな。 信用できないのは向こうも同じ筈だから、立場としてはイーブンだし。」
そんなわけで俺達は、沈みかけている太陽を見て、明日に備えようということにして、今から宿を借りるのもあれなので、そのまま馬車で寝ることにした。 なんとかならんこともある、そう言う世界だ。




