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カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第二の章 世界を回る
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一つのやり逃し

「わざわざ清司さんから来られるなんて、どうかなさいました・・・と聞くのは野暮なようですね。」


 俺が夢の中で会おうとしていた趣旨が分かったようで、神様も特に深くは聞いては来なかった。


「俺が死んだあの後、あの周りにいた人達はどうなったのかな? いや、そんな世界的に影響があったとかは思ってないけど、あの時の事を思い出されてたらね。 ちょっと気になったんだ。」


 そう、俺が麻痺記憶(パラライズヴィジョン)の中で見せられたものは、前世の記憶。 俺が死ぬ直前までの記憶だ。


 この手の話がある場合は、基本的には思い出したくないと思うのが、個人としては、思い出してしまった以上は、知りたいと思うのは誰の影響だろうか。


「そうですね。 結論から言えば、あなたの行いは、様々なところで影響があったようです。」

「まあ、事故を起こしてしまったし、流石に影響でますよね。」

「何故そこまで悲観的になるのですか。 もう少し良心的に物事を見てくださいよ。」


 そう言われてもこっちは死に目を見せられてるのだからいい気分にはなれるわけがない訳で。 そんなことを知ってか知らずか、神様は手のひらにディスプレイの様なものを見せてくれた。


「これは?」

「あなたの知りたい事を映像で見せるのですよ。 分からないところがあれば補足はしますので。」


 そう言ってディスプレイを見せてくる。 俺が見ているのはある場所だった。 そしてそれがなんなのか瞬時に分かる。 それは祭場。 俺の葬式祭場だった。


「・・・それにしては人が多い気がするんだけど?」

「家族や親戚の他にも、学校の友人などがいますが、その他にも警察の方も入っていますよ。」

「なんで警察まで?」

「忘れましたか? あなたの事故死したのですよ?」


 その辺りでようやく理解できた。 おそらくは事故関係者だろう。 だから人がそこそこ多いのか。


「とは言ってもあなたの今いる時間と向こうの時間の流れは違いますので、これは転生してすぐの時になります。 具体的にはアルフィストを旅立った後くらいです」


 それって結構前じゃね? いや、時間の流れが違うなら関係は薄いか。


「でも自分の葬式を上から見るって、なんか気味が悪いな。 自分の死に顔を見るわけでしょ? 「天国から見てる」って言う表現はよく使われるけど、こんな感じなのかな?」


 不謹慎極まりないことを自分で言っている自覚はあるが、そう思ってしまっているのは仕方の無いことだ。 そんな中で本格的に葬式が始まった。 木魚を叩く音とお坊さんの呪文めいた言葉を聞きながら、お焼香を立てている。 小さい頃に親戚の方が亡くなって、何回か経験したことはあるが、自分がやられる立場になるとは思っても見なかった。 しかもこんなに早くに。


 お通夜は終わったものの、この後次の日には火葬場に行く。 その間俺は自分のいつの頃かの写真と白菊に囲まれ、そして棺の中に眠っている状態だ。 俺の()()肉体はそこで二度と目を開けることはない。


 みんなすぐに帰るのかと思いきや、そこそこの人達が俺の棺の前に立っていた。 先頭は当然両親だ。 俺は一人っ子だったので、一番辛い思いをしていることだろう。


「清司・・・お前が死んでしまった事を悲しむよりも、身を呈してでも子供の命を救ったお前の行為に、父さんは誇りに思っている。 ここにいる人達は、お前が何者でもない人間などとは、思わないだろう。」

「もしも天国から見ているのなら、自分のしたことは、間違いじゃないと、ハッキリと言わせて。 色々と気を遣わせていたかもしれないけれど、私達の事は大丈夫だから、天国で、ゆっくりと・・・休んで・・・」


 母さんが途絶え途絶えに泣き始めてしまう。 そうなるのも無理はない。 子供は親よりも先に死ぬ方が重罪だとよく言われるが、今回はその限りではないのかもしれない。


 次に棺の前に来たのは俺の遊び仲間で、数少ない友人達だ。 あいつらも涙ながらに俺の棺の前に立っている。


「なんで・・・なんでお前が死ぬことになるんだよ! たった数時間前まで、一緒になって遊んでいたじゃないか! お前は! お前は人を救ったのに! どうして!」

「野村。 前に言っていたよな。 「自分の事を誰も見てくれなくてもいいから誰かのためになりながら生きていたい」って。 でも今ならどうかな? 死んでしまったけれど、沢山の人に、君の事を知って貰っている。 それも悪いことじゃないと思わない?」

「あの時早く帰ろうなんて言わなければ・・・いや、そんなのは結果論だよね。 起きてしまった事はしょうがない。 だけどこんな結末はあんまりだと思うんだ。 今の僕達は、どんな感情で君を見送ればいいのか分からないよ。」


 三者三様、それぞれで俺が死んでしまった事を嘆いている。 俺はあいつらに、少しでもなにかしてあげられただろうか? ただの友人としてはあまりにも出来すぎていたよな。


 そして今度はある親子が前に来た。 でも俺の知らない人だ。 少なくとも記憶には残っていない。


「ほら、この人があなたを助けてくれたお兄さんよ。 ちゃんと見てあげて。」

「うん。 ・・・ありがとうお兄さん。 僕があの時道路に出ていなかったら、お兄さんがこうして死んじゃうことは無かったんだよね。 ごめんなさい。 天国で、僕たちの事を見守っててね。」


 今の台詞で分かった。 この親子は俺が最後に助けた子供とその親だ。 わざわざ俺の葬式に出向いてくれたのか。 俺の棺から離れ、今度は母さん達の所に向かう。


「本当にありがとうございました。 あなた方のお子さんが身を呈してこの子を投げてくれなければ、今頃亡くなっていたのは私の息子でした。 感謝と共に、ご冥福をお祈りします。」

「人の役に立てれたと思えば、私の息子も本望でしょう。 その思いだけでも、届いてくれればと思いますよ。」

「父さん・・・」


 そして棺の前には、警官らしき人達が立っていた。


「野村 清司さん。 あなたは我々にとっても立派で勇敢な青年だ。 犯人には必ず報いを受けさせる。 法の元で、彼らを裁き、君に、名誉と安永を与えよう。」


 そうして合掌をする警官の人達。 俺は意外にも、多くの人の影響を与えていたようだ。


「あなたの死は、名誉あるものとして刻み込まれていくでしょう。 そしてここからは補足になります。」


 そう言って場面が切り替わり見せてくれたのは法廷。 容疑者である車の男は根本的に酒を飲んでおり、酒気帯び運転をしていたことが判明、助手席の女も同じ様にだ。 酒気帯び運転の方は常習犯のようで、男の方は家族から見限られており、引き取り手はいない。


「法廷の判決は酒気帯び運転と過失運転致死傷害の容疑でおそらく生涯外の空気を浴びることはないでしょう。 そして彼にはあなた方の両親への謝罪料もあるので、簡単には死ねませんよ。」


 判決としては甘いのかも知れないけれど、日本の裁判結果としては、それなりに重いのかもしれない。


「そっか。 それならいいんです。 心残りはとりあえずは無くなりました。 まあ死んでしまって、こっちの世界に転生してしまった以上は、向こうの世界には戻れないでしょうし。」

「満足いただける内容でしたか?」

「それは・・・どうでしょうか。 でも自分が生きていく上での蟠りはありません。 こっちの世界で生き抜くことに専念できますよ。」

「あなたは根も強い人。 このような過去を見ずとも歩んでいける。 ですが心残りがあったのなら、それでよいのでしょう。」


 まあ理不尽に死んだとかだったらまた考えたかもしれないけれど。 いや、あれも十分理不尽か。


「さあ、そろそろ目覚める時ですよ。」

「そうですね。 あ、そうそう神様。」

「なんでしょうか?」

「この世界に転生させていただいて感謝しています。 生きる意味を見いだせなかった自分に、新たな兆しが見えています。 俺は過去をやり直したいとは思いません。 何故なら今が楽しいからです。」


 そう言いながら光に包まれていく。 消えかけている神様の表情は、安心しきった顔だったと、覚えておこう。


「んぅ・・・」


 自分はベッドの中に入っていた。 どうやら普通に寝れたようだ。


「んん、んん・・・」


 近くから声がするので見てみると、そこにはアリフレアがいた。 そういえば今日はあれからアリフレアが離れてくれなかったんだっけ。 余程俺と離れるというトラウマが堪えたらしい。


「・・・ご主人様・・・?」

「あぁ、ちゃんといるぞアリフレア。 大丈夫だ。」

「・・・ご主人様、泣かれていたのですか?」

「え?」


 そう言って目を触ると、確かに涙が通った後があった。 どうやら夢の中で会った人達を見て泣いてしまっていたらしい。 確かに寂しくもある。 だが今の俺には新しい掛け替えの無い仲間がいる。 それでいいじゃないかと思った。 そう思いながらアリフレアの頭を優しく撫でた。


「ご主人様?」

「心配するな。 もう何処にも行きやしないさ。 みんな一緒だ。 な?」


 多分アリフレアに言ってもポカンとする事だろう。 だけどそれでいい。 これ以上はもういいんだ。 アリフレアも抵抗無く撫でられているので、しばらくはこうしているのだった。

彼の過去を精算した形を書きたかったので、このような話を書きました。


ライトノベルで転生した主人公の過去の話って皆さんどうしてるんでしょうか? 大抵は最初だけで切り捨てているのでしょうかね?

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