あの時の俺は
前半はセイジの記憶、後半は元に戻ります
俺が前の世界で行きつけていたゲームセンター。 レトロなゲームから最新鋭のアーケードゲーム、そしてなんと言ってもここは、カードゲームショップとの複合施設なので、色んな世代の人間が集まって来る場所だ。
そこに足を踏み入れると、俺のゲーム仲間が何時ものごとく集まっていた。 2、3人の集団だったが、ゲームセンターで遊ぶならそのくらいの人数が丁度いい。
「おーい! 野村! 早く来いよ! 今日は新弾の開封する日だろ!」
そう声をかけてくるのは前の世界での親しかった友人。 しかし声は分かるのに顔が思い出せない。 何故だろう? 学校で毎日のようにばか騒ぎしているはずの友人の顔が出てこない。
「・・・まあいいか。 おう! 今いくぜ!」
そうして友人達との輪に俺は入っていった。
「今日の新弾は昔のテーマの新しいカードが前評判ではかなり良いって話らしいよ。」
「へぇ。 それは楽しみだな。」
「お前には関係無いじゃないかよ。 今のデッキでしばらくは手を加えないって言ってたじゃねぇか。」
「それはそれ、これはこれだろ。 よーし、今回も高レアを引いてやるぜ!」
「お前って特に使うわけでもないのに、高めのカードを引く強運持ってるよな。」
その言葉に俺達は笑いが込み上げる。 そうだ。 俺はこうしてこいつらといるだけでも十分楽しかった。 あれやこれややっているけれど、友人といる時だけは忘れられるんだ。
「・・・ん?」
「どうしたの? 野村君。」
「・・・わりぃ、先に行っててくれるか?」
「お? そりゃまたなんで・・・」
「とりあえず行こうよ。 すぐに戻ってくるでしょ?」
「ああ。」
そう言って俺はとある方向に駆け出す。 そしてその先にいたのは
「大丈夫? 迷子かな?」
泣いていた1人の男の子に声をかける。
「うん・・・お母さんと・・・はぐれちゃった・・・」
「そっか。 よし! 兄ちゃんが肩車して、高いところからお母さんを探そう!」
「・・・いいの?」
「お母さんも心配してるだろうしね。 さ、乗った乗った。」
そうして肩車をしながら少年と一緒に辺りを見回していると
「あ! お母さん!」
そうして指差す方に向かっていき、無事合流させることが出来た。
「お兄ちゃん。 ありがとう!」
「今度はちゃんとはぐれないようにね。」
そう少年と別れた後に、みんなのところに合流した。
「お待たせ。 やー、申し訳ない。」
「お疲れ様。 無事に会わせられてよかったじゃない。」
「なにさ、見てたの? それなら一緒に探してくれよ。」
「おいおい、特徴もないのに人海戦術は意味ないだろ?」
正論を言われてしまったらしょうがない。 俺はあの子がまた迷子にならないように祈りながら、今日も遊び尽くした。
「うおっ!? もう夕方になってるじゃねぇか!」
「いやぁ、遊んでると時間が経つのが早いねぇ。」
「暗くなると帰り道が混みそうだし、そろそろお暇するか。」
そう言って俺達はゲームセンターを後にする。 度々こうして遊べるのも、なんだかんだで仲良くやっているからだ。
「それじゃあな。 また学校で。」
「おう! また明日な!」
そうして俺は友人達とは逆方向に歩みを進める。 距離的にゲームセンターは俺と友人達との家の真ん中辺りに位置していて、しかも学校とは真逆の位置にある。 なので学校へと行く感覚でゲームセンターに行けるのだ。
普段よりはまだ明るい街路をひた歩く。 この辺りは買い物を済ませた人が多く、かなりの人混みになっている。 その辺りもいつも通りなので気にせずに歩いていく。
そしてそんな街路を抜けた先はガードレールのない道になっていて、皆が皆、白の外側にはみ出さないようにと気をつけて歩いている。 車もそこそこ通るのでなおのこと気を付けなければならない。 中には子供が飛び出す事もあるが、そこは親がしっかりと止めていた。
そして踏み切りに差し掛かり、踏み切りの「カンカンカンカン」という音を聞きながら電車が通り過ぎるのを待っていると、前だけじゃなくて後ろも騒がしくなってくる。 そしてそんな思いで後ろの方を向くと
「そこの暴走車止まりなさい! 逃げ場はないぞ!」
後ろから赤い車を追いかける複数のパトカーがあった。 赤い車の運転手は逃げるのに必死なのか全く前を向いていない。 そんな光景にみな一様に道路を開ける。 俺も巻き込まれないようにと端に避ける、が、そんな時、1人の男の子が道路に突っ立っているのが見えた。 大方一緒にいたはずの母親と繋いでいた手を離してしまったのだろう。 そんな状況なのを把握できていないのか、男の子はおろおろするばかり。 車が近付いてくる。 このままではあの子が・・・!
そう思った時、道路側にいた俺は男の子に向かって走り、男の子を抱え上げて、そのまま投げた。 誰かが受け取ってくれることを信じて。
その瞬間に横から凄まじい衝撃を受ける。 衝撃で飛ばされはしたものの、その先の踏み切りがクッションになり、少しだけ飛んでいる勢いを殺してくれたお陰で、瞬間的に死にはしなかった。
でも身体が動かない。 衝撃のショックがデカすぎたようだ。 でも近くにいる人がいるなら、引きずってでも助け・・・
ファーーン
「・・・え?」
顔を横に向けた光景、それが俺の、最後に見た映像。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
悲鳴と共に元のAI領域に戻される。 だが息が荒くまともに呼吸が出来ない。 あの映像がまだこびりついていた。
「い・・・今のは・・・」
「・・・最悪の気分よ・・・ まさかこっち寄りの魔法・・・なんてね・・・」
手を添えられている事に気が付いて横を見ると、俺と同じ様に顔色を悪くしたサヴィの姿があった。 血色も悪く、汗がダラダラだ。
「サヴィ・・・今のは・・・俺は・・・なにをされた?」
「・・・闇属性魔法「麻痺記憶」・・・相手の記憶を再現するだけじゃなくて・・・ある程度の記憶を操れる・・・闇属性魔法よ。」
「サヴィ・・・その・・・疲労は・・・」
「あたいも・・・喰らった・・・上で・・・「全てをかき消す」を使った・・・から・・・よ。 でも・・・早く・・・この戦いを・・・終わらせ・・・ないと・・・」
そう言って指差す方を見ると、みんなが頭や身体を抱えて震えていた。
「なっ!?」
「迂闊だった・・・AI領域が・・・外にいるものに・・・影響を・・・与えない・・・とは・・・限らなかった・・・わ。」
このままでは精神が持たないかもしれない。 特にアリフレアが一番精神力が弱い。 なんとしても終わらせなければ。
「おい・・・あんたの・・・魔法だろ・・・!? 関係無い・・・人間まで・・・巻き込むな・・・解除・・・しろ!!」
「そうは言っても、私の魔法は制御するまでに至っていないのです。 修行不足です。 私も何度も試したが、この魔法だけは制御出来なかったのですよ。」
「な・・・んだと・・・」
「そしてまだ試合は続いている。 私が発動したカードは混乱幻視。 これによって互いの領域カードは破壊される。 これによってあなたのモンスターのステータスは元に戻る。 そして次のコンバットタイム時に、今場にいるあなたのモンスターは攻撃が出来なくなる効果を持ちます。 しかしこちらは戦闘が出来ない。 クールタイムに入り、私はエンディングを迎える。 さぁそちらの・・・」
「それが・・・魔法使いの・・・やり方・・・なのか・・・?」
この状況下で更に続ける気なのか。 俺だけにかけるだけならまだいい。 しかし他のみんなを、俺の仲間にまで手を出したのは本気で許さない。 あいつらが魔法使いだろうがなんだろうが関係無い。 人の精神を犯してまで勝ちに拘りたいのか! こいつらは!
「制約で縛ったのは君達だ。 その周りの人間に危害を加わっても、それは仕方のない事でしょう? 魔法には代償が付き物でしょ?」
「そんなことを言うのは三流以下の・・・」
「そんな代償は・・・自分達の中で・・・やれよ・・・!」
その言葉に怒りが沸き上がる。 代償が付き物なんて言葉を、軽々しく使って良いものじゃない!
「サヴィの・・・言っていた・・・通りだな・・・。 こいつらは・・・本当の・・・魔法の・・・使い方を・・・知らないんだ・・・だから・・・お前達に・・・魔法使いを・・・名乗る資格は・・・無い・・・! 自分達の・・・ことも・・・制御できない・・・奴は・・・最初からやり直してこい!」
そうズキズキする頭を抑えつつも叫んだその言葉に、俺のデッキの一番上が光始める。 条件は揃ったようだ。
「おばあさまの言う通り・・・彼は・・・背負うものが・・・あればある程・・・強くなる。 それは・・・自分のことを・・・差し押さえてでも、・・・他人のことを・・・思っているのね。 そして・・・そんな彼の・・・逆鱗は、予想以上に・・・大きいのね。 あの二人は、その逆鱗を・・・逆撫でして・・・しまった。」
「俺のオープニング、そして・・・「作られた引き」!!」
次回は偽物に対するお仕置きタイム。 人の逆鱗は触れないに越したことはないですね。




