悲観する事じゃない
「・・・はぁ。 負けてしまった・・・」
ナーフは戦いを終えると、疲れたかのように後ろの玉座にどっかりと座った。
「それで、これからどうなるんすか?」
ファルケンが代表かのように聞いてくる。 まあ永住権が無効になっただけだしなぁ。
「レイトはここには留まってはくれないか。 それがあなたの生き方なのですね。」
「・・・拙者もかつては明日は我が身の生き方をしていた。 当然で御座る。 拙者は傭兵。 元々は捨て駒同然の扱いだ御座るよ。」
傭兵とはいえ成果を出さなければただの犬死に。 しかもただの戦争で済まないのもまたこの世界の理なのだろう。
「決してお主達を卑下に扱っているわけではない。 むしろ右も左も分からなかった拙者の生き場所を示してくれたのは汝達で御座る。」
「そうだとしても、やはり離れられるのは、僕にとっては寂しいものさ。」
「別に絶対的なお別れでも無いんだから、気に病むことは無いだろ。」
「え?」
「だって別に永住権がなくなっただけだろ? だからこの国に帰る場所位は作れるんじゃないか?」
そう言われてナーフは驚きを見せていた。 そう、今回の制約の内容は零斗さんの「永住権」の話であって、国に戻ってこれないとは一言も明記されていないのだ。 なので帰れる場所を用意するのは、今国王となったナーフのみとなる。 それだけ出来れば零斗さんにとってもありがたいことではないだろうか?
「・・・制約の内容は絶対だと錯覚していたから、てっきり出来ないものばかりだと・・・」
「「出来る」の反対が必ずしも「出来ない」という訳じゃないってことだな。」
「・・・確かに永住権は渡せても、住まわせる家が無ければ、どっちみち意味がなかったな。」
完全に目先の目標しか見てかなった人の言い方だな。 まあそれはそれとして、特に戦争の介入や勃発を起こそうとしていないのならば、この話をしても問題は無さそうだな。
「ナーフ国王。 実は今回ここを訪れたのは、零斗さんの故郷帰りの為ではないのですよ。」
「そうであったな。 レイトの顔が見れてつい嬉しくなってしまって忘れるところだった。 用件を申してみよ。」
「我々の旅の目的は、島国マーキュリーとの同盟についての相談です。 我々の生まれ故郷マーキュリーは島国ゆえ、戦争などになってしまえば、孤立無援に陥ってしまう可能性が存じ上げられます。 なので何卒、国家間での繋がりを持ちたいと思い、使者として赴いた次第でございます。」
「なるほど。 して、その同盟内容は?」
「こちらに送付されております。 どうぞお確かめ下さい。」
そう言って俺は例の手紙をナーフに渡す。
「随分と使者としての役目が板について来たのではないか? セイジ。」
「これで何ヵ国目だと思ってるんだよ。 同じようなことを繰り返していればアドリブもきくからな。」
そもそも同じことの繰り返しならば自分のミスがなければ余程大丈夫だろうとは踏んでいる。 後は向こう次第だし。
「・・・済まない。 少しだけ時間をくれないか? また追って連絡をする。 その間変わった街並みの風景でも観ていってくれ。」
ふーむ、ナーフ国王がそういうのならここにいてもしょうがないな。 俺達は外に出ることにした。
「フフッ。」
そして出た瞬間に零斗さんが突然静かに笑いだした。
「どうしたんです? 零斗さん。」
「いや、いくら大人のように取り繕っても、ナーフ殿はナーフ殿だったと思っただけで御座る。」
その言葉に俺は首を傾げた。
「ナーフ殿は他の兄達に比べれば賢い方ではあるのだが、それでも王としてやっていくにはまだまだ知識不足で御座る。 故にあの文章を読み解くにも、まだまだ時間がかかるので御座るよ。」
それでいいのか、この国は。 と思ったがそもそも前王が戦争好きの狂人だと考えれば、案外国としては良き方向に進んでいる気がする。 と言っても言い方を変えればナーフ以外が頼りないのではないかとも思った。 いや、次男と三男は自分の道を作り出したのだから、長男と四男が駄目だったんだろうなと思った。
「レイト。 元々貴殿が住んでいた場所なら、何か観光名所のような場所はあるか? 貴殿が個人的に好きな場所とかでも構わないが。」
「この国ので御座るか? そうで御座るなぁ・・・」
そう言われて辺りを見回す零斗さんだが、風景が様変わりしているせいか、自分の好きな場所だったりが変わっている可能性が高い。 零斗さんも悩みどころではあるようだ。
「・・・ふむ。 もしかしたらあの場所は変わっておらぬかもしれぬな。」
そう何かを決意したかのような口振りで話す零斗さん。 そう思ったらおもむろに歩き始めた。
「ついてくるで御座る。 王がナーフ殿ならばあの場所はナーフ殿にとっても思い入れのある場所。 残してくれていると信じているで御座る。」
そしてついた先は城壁のてっぺんだった。 吹き抜ける風がなんとも気持ちがいい。
「ご主人様! 森や山が、一度に、見れます!」
アリフレアが興奮するのも無理はない。 恐らくは今立っている場所が一番高い場所なのだから。
「やはりここだけは変わらなかったで御座るか。 ここは下手に破壊する事が出来ないでいるので御座ろうな。 拙者にとっては感謝するべき事で御座る。」
とはいえここまで大きいものは周りにもないだろう。 思い出の場所とは壊されたくないだろう。
「ソベルタの国土はどうなってるんです? 戦争時代に獲得した国土もあるんでしょ?」
「確かに広くはあれど、資源云々の話はあまり聞かなかったで御座る。 まあ上の話など、傭兵には関係ないで御座ろうがな。」
風に揺られながらそう目で追う零斗さん。 元傭兵として、この景色が一番心に染みるようなのだろう。
「次はどっちにいくの? ここからなら大体のものは見えるけど。」
「地図を確認するで御座る。 ・・・ふむ。 次に戦争を行おうとしていたのを考えると・・・この方角の国になるで御座るな。 しかしここまでは距離がかなりあるで御座る。 かなりドーホース達を走らせることになるで御座るな。」
そう言えばドーホース達の事をあまり見ていた無かったような気がするんだよな。 ちょっとここを降りたらドーホース達を見てみよう。 と言っても俺じゃドーホースはおろか、普通の馬の管理や育成なんかも知らないんだけどね。
「ん。 この子達。 疲労がスゴい残ってるわよ。」
とりあえず城の前に待機させていたドーホース4体を確認するとサヴィからそんな言葉が返ってきた。 なんで分かるんだと聞こうと思ったが、彼女は魔法使いなので、体の中を触れなくても見ることなど容易いのだろう。
「む? そうなのか? 我々と同じように休息は取らせていたのだがな?」
「これは筋肉疲労よ。 休むって言ったって、ほんの半日位でしょ? それじゃあ筋肉組織は簡単には回復しないわよ。」
「どういう、ことです、か? ドーホースさん達、疲れを、隠していた、のですか?」
「・・・あ、そういうことか。 つまり1日以上休ませる必要があるってことか?」
「もっと長い期間必要よ。 最低でも3日間はとにかく休ませるの。 そうじゃないと本当に走れなくなるわ。 この子達。」
そこまで危ういところまで来ていたのか。 ドーホース達と会話が出来ない以上分からない彼らの痛みが、ここでようやく分かった。
「まあ、何度も言ってるけど、元々急く旅じゃないからな。 動けるものを無くすよりは100倍いい。 零斗さんが住んでいた頃と変わったこの国の散策としばらくは洒落込むか。」
そう言ってドーホース達の荷馬車を引くベルトを外してやる。 そうしてドーホース達を、ゆっくりと横にさせた。
「どういう事なんすか? ドーホース達がこれ以上走れなくなるって。」
「こいつらは何だかんだで俺達のペースに合わせててくれたんだ。 なるべく仕事を早く終わらせるためにな。 だがそれはつまりその分だけ体へ負担をかけていたんだ。 休ませているようで、俺達はこいつらをしっかりと休ませてなかったんだ。」
「そうなの? 君たち?」
ゼルダがドーホース達に声をかけるが、ドーホース達本人にも分かっていないようで、首を横に振るしかしなかった。
「なるほど。 「超回復」で御座るな。」
「超回復? それってなんですか?」
「筋肉組織を壊してから1日ほど休ませるとその壊した分よりも大きく組織が強くなる筋肉の発達方法だな。」
「とはいえ拙者達には余程必要はないで御座るがな。」
そういうわけでソベルタに俺達は滞在することになったのだった。
カードゲームから離れます。
最近少しずつ伸びてきてはいるのですが、果たしてそれはカードゲーム以外の話でも伸びるのか




