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カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第二の章 世界を回る
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人間と亜人の交流

「あちらの、人も、こちらの、人も、色んな、動物の、人が、います。」


 アリフレアが周りを右へ左へ首を振っていて物凄く忙しそうだが無理もない。 いないことが無いくらいの人だかりの中で、俺達以外に人族がいないのではないかと思うくらいに、右も左も様々な亜人が見られていた。


 獣人、鳥人、虫人と、目移りしてしまいそうな位だ。 魚人がいないのは陸地だからだろうか?


 とはいえこちらが見ているように、向こうの亜人達も俺達を観察をしている。 それも当然とも言える。 観察者と対象物は常に表裏一体。 互いを見合っているのだから。 「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」とは誰の台詞だったか。


 でもそんな表裏一体な関係も、こちらと向こうでは意味が違う。 こちらの観察が「物珍しさ」なら、向こうは「警戒心」で見ている。 そこまで居心地の悪い空気ではないが、そう感じてしまうのだ。


「あんまり歓迎されてないのか?」

「どうやら拙者達を見定めているようで御座るな。 いきなり別の国から自分達と異なる者が来たのだ。 警戒しない方がおかしいというもので御座る。」


 それは言えてる。 俺がこの指輪をしているのだって、あくまでもそう認知されているだけ。 全員を認める事など今の俺達では不可能に近いだろう。


「けど認めてもらわないと、本当の和平交渉は出来ない。」


 そのために来たのだからやらざるを得ない。 それが使命なのだから。


「すみません。 人族が食べられる物って売ってますか?」


 とにかくまずは交流から始めようと考えた。 どうせ数日は滞在するのだ。 ここで会話なりなんなりで俺達の警戒を解いてもらうのが先だろう。


「うん? おお、いらっしゃい。 人族の方でしたか。」


 店主はオークのような亜人が現れる。 これ、聞く人物間違えたか?


「ああ、そんな気を落とさないでくだせぇ。 ()()と殺人の区別はついていやすし、食える物と食えない物も分かってるつもりでさぁ。 なにも思わない訳じゃ無いですが、私有混合はしませんよ。」


 そういうことならなにも言わないでおこう。 それともう1つ確認しておきたいことがある。


「俺達、いや、人族ってこの国だと嫌われてます?」

「そういう訳じゃ無いんだがなぁ。 やっぱり裏オークションって言うのがある以上、連れ去られるんじゃないかって、葛藤が生まれるんだろうよ。 そんなことは無いって信じきれねぇでいる。」

「それはそうでしょう。」

「だから多めに見てやってくれ。 あんたらにとっちゃ居心地が悪いかもしれないが、許してやってくれ。」


 それくらいなら問題はない。 これくらいは一応想定内ではある。


「じゃあ質問をもう1つ。 ここに来るまでに海関係の亜人を見ていないのですが・・・」

「ここにいない訳じゃ無いが、やっぱり陸地の亜人よりは棲みにくいからなぁ。 出ないって訳じゃないから、そっと見ておいてやってくれ。」



「カエルっぽい亜人・・・蛾の羽が映えてる亜人・・・あれはなんの亜人だ?」


 俺達はあの後もなにかと亜人達を見ていた。 と言っても俺達からなにかを聞いたりなんてはしない。 やっぱり色んな亜人がいるんだなぁという思いでしかない。


「俺っち達がいても、あんまりなにか言われるような事はないんすね。」

「俺がこの指輪をつけた上で、お前達を引き連れているからだろうな。 じゃなきゃゼルダの奴隷の首輪の事もあるから、俺は犯罪者だぞ。」


 そう、ここまで入っておいてなんなのだが、俺はゼルダの首輪を取ってないことが、一番の難題だと思っている。 確かに指輪をつけてはいるものの、それはあくまでも上辺だけ。 実際を知らぬ以上、警戒されてもおかしくはないのだ。


「そんな中でどうやって、国王と対等に話すことが出来るかねぇ。」


 そんなことを考えていたら、突然悲鳴が飛び交った。 何事かと思って駆け寄ってみると、そこには1人の女性の獣人と虫の、恐らく蚊の亜人の男が複数の亜人に取り押さえられていた。


「うっ・・・ううっ・・・」

「しっかりしろ! 理性を忘れるな!」

「無理もない・・・蚊亜人(モスキーター)は一定量の血を摂取しないと自棄になっちまう。 今輸血用のパックはあるか?」

「こちらに。」


 そうして蚊亜人と呼ばれた人は何人かの男亜人に連れ去られていった。


「なんだったんだ? 一体?」

「ん。 あんた・・・人族かい? 知らなくても無理無いさ。」


 俺達が疑問を浮かべていると、猫っぽい亜人の人が俺達に声をかけてきた。


「あれは亜人の中でもごく一部に起きる現象・・・って言い方もおかしいんだが、まあ簡単に言えば、理性の制御が一時的に外れる事があるんだ。」

「普段は理性で留めているものが、何かの拍子に()()が外れると?」

「そう言うことだ。 しかもこういっちゃあなんだが亜人なら必ず起こり得る事なんだ。 そっちの2人も亜人のようだが、自分の身になにか変化があったらすぐに言うんだぞ。 ここは幸い亜人の国だから、ある程度ならどうにかしてくれるさ。」


 そう言って集まっていた亜人達が散り散りになっていく。 彼らにとってはこれも日常茶飯事のようだ。 亜人にもなんだかんだ色んな事があるようだ。 俺達も気を付けないといけないな。



「ふぅ。 なんか宿も落ち着かない感じがするっすね師匠。」


 俺達はあの後宿を見つけ、とりあえず明日に備えて寝る予定ではあるが、ここの店主(なんか蜘蛛みたいな亜人、アラクネっていうんだっけ?)の人も気丈には振る舞ってくれたものの、不安は拭いきれていないだろう。


「とはいえどうすることも出来ないだろ。 馴染めていないのは俺達だ。 それは向こう側が慣れるのではなく、俺達が慣らしていくしかない。」

「「郷に入っては郷に従え」、「住めば都」、「長いものには巻かれろ」。 あちらの文化について知るならば、まずは拙者らが寄り添って行く必要があるで御座る。」


 零斗さんの言う通りだと俺も頷く。 恐らく零斗さんの言ったことわざはこの世界には存在しない。 だが意味が分かる日がいつか来てくれると信じている。


「ファルケン。 交代で良いからゼルダと一緒に俺達を見張っていてくれないか?」

「それは構わないっすが・・・わざわざそんなことする必要あるっすか?」

「お前達亜人が俺達人族を見張っているっていう事実を敢えてやっておくんだよ。 この国じゃ俺達の方が立場は下だ。 だったら俺達がなにかをしでかさないように警戒してますって意を唱えるんだ。 それに見張りを付けておけばお前達の信頼度も上がるしな。 そのためにみんなで泊まれる大部屋にしてもらったんだ。」

「うーん。 師匠のやることがよく分かんないっすよ。」


 そんなことを言いつつもちゃんとやってくれるから俺は好きよ? まあ説明する必要がないと言えばそうなんだけど、向こうにどう分かってもらえるかの瀬戸際なんだ。 首を自分で絞めるのはごめんだ。


「・・・ん。」


 目が覚める。 辺りを見渡す。 俺達が借りた部屋だ。 時間を見る。 時刻は5時15分前。 流石にみんなまだ寝ている時間だ。 窓を覗けばもうすぐ朝日が昇ってくる時間だ。 空がうっすらと明るくなっている。 この時間ではパックを開けることも出来ない。 もう一眠りするかと思い、ベッドに横になった時、何かが擦れる音が聞こえてきた。


『師匠。 聞こえるっすか?』

「ファルケン? これはなんの音だ?」

『俺っちが風に乗せて師匠の耳元に届けてるっす。 完全に消しているようっすが、恐らくはどこかに向かってる最中なんじゃないっすか?』

「他に情報は?」

『ちょっと待つっす。 俺っちが動かしているとは言え万能じゃないっすから。』


 わざわざ伝えてくる辺り、気にすることでは無いのだが、とりあえず聞いてみよう。


『人数は2。 こんな時間になにしてるんすかね?』

「会話はどうだ? 後この事は誰かに伝えたか?」

『まだっす。 良し悪しが分からなかったっすから、とりあえず師匠に・・・ 会話が聞こえてきたっす。』


 相手もあまり悟られぬように小声なのだろう。 よく耳を澄ませないと聞こえなさそうだ。


『くそっ。 入国審査なんて面倒な事をしやがって。 お陰で大幅に予定が遅れたじゃねぇか。』

『まあ良いじゃねえか。 他はまじでザルだったんだからよ。 とりあえず寝てる間にやっちまおうぜ。』

『そうだな。 亜人っつったってこうやって静まり返っているのを見ると、あくまでも「それっぽい人間」なだけだもんな。 下手な大物は狙うな? 育つ前の子供で十分だ。』


 そうして男2人組は街を徘徊しているのを耳で確認した。 そして窓の外をゆっくりと確認すると、男達が堂々と、かつ慎重な足取りで、民家の窓から侵入していった。


『どうするっすか? 師匠?』

「見てみぬ振りをすると思うか?」

『そういうと思って、ゼルダには先に後をつけさせてもらってるっす。』

「よし。 俺達も外に出るぞ。 みんなは・・・」

「もう起きてるで御座る。」


 他のみんなももう出る準備が出来ているようで、後は俺が合図をすれば出ていけそうな勢いだ。


「なら行くぞ。 一グループのせいで人達を悪く見られて堪るか。」


 そうして、亜人の奪還と犯人の逮捕のために宿を出るのだった。

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