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ディアナとウィルのダンスも、毎週練習していることもあって見事なものだった。複雑なステップを難なくこなし、ウィルのディアナを見つめる熱を帯びた眼差しには、誰にも付け入る隙を与えないと感じさせるものがあった。
おかげで、ルーカスがいなくなったからやっぱりウィリアムと思っていた貴族子女達も夢から覚め、現実的に自分にピッタリな相手を探そうと動き始めた。
微弱聖女の実行犯以外の取り巻き達も、昨日の事件で目が覚め、自分だけの聖女を探そうと動き出していたことで、この日のパーティーではやっと本来の目的である、集団お見合いに戻ったのだった。
ついでに、昨日の事件で騎士部の男子生徒が女子生徒達を庇うように動いたため、騎士部の生徒達はハーレム以外の女の子達とみんないい感じになっているのだとか。
男臭くて女子とは無縁だった騎士部諸君……よかったね!
「だから私はダンスは踊れませんって言ってるでしょう?だいたい貴族なのだから同じ貴族の女子に声をかけたらいいでしょう?」
「俺がちゃんとリードするから大丈夫だ!何なら夏休み中に2人でダンスの特訓をしないか?」
「お断りします!私には勉強がありますので。アラン様も少しは勉強されたらどうですか?」
「サブリナが教えてくれるなら勉強する!2人で勉強会をしよう!」
「もう、どうしてそうなるんですか?勝手に貴族同士でやっててください!」
「貴族っつっても子爵家次男だしな。平民と同じだぞ?卒業後は騎士団に入るから城勤めだ。サブリナも城で働く予定なんだろう?一緒だな!」
「もう、全然一緒じゃなーい!」
何がどうしたのか、アランは昨日サブリナに惚れたそうだ。昨日のサブリナと言ったら微弱聖女に毒を吐きまくっていた姿しか見ていない気がするのだが……まぁ、人の好みもそれぞれと言うことだろう。
毒舌だが実際サブリナはとても美少女なのだ。アランはきっと美少女に毒を吐かれて喜ぶ体質なんだろう……
会場の熱気にやられ、ディアナとウィルは庭園の散策をすることにした。
月がとても綺麗な夜だった……薔薇の庭園にあるベンチにディアナは腰かけた。ウィルはディアナの足元に片膝をつき、ディアナの手を取った。
「ディアナ……愛している。これからの人生、俺と共に歩んで欲しい。ゆっくりでいい、卒業までまだまだ時間はある。その間俺だけを見ていて欲しい。互いにゆっくり愛を育んで行こう……」
「……はい」
1月半前とは違い、ディアナに迷いはなかった。あの告白からウィル自身を見るようになると、自然と惹かれてしまったのは仕方無いだろう。
とても誠実で真っ直ぐで、一緒にいて楽しく、もう離れることが考えられないくらい、ディアナの中にウィルは入り込んでしまっていたのだ。
とは言え恋愛初心者のディアナには、友達と恋人とは具体的にどう違うのか曖昧だったが、ウィルの言うようにゆっくり知っていけばいい……
ディアナを見上げるウィルの瞳に熱がこもった気がして、ディアナも自然と体が熱くなるのを感じた。
ウィルはディアナの隣に座り、ディアナをきつく抱き締めた。
少し体を離したウィルはそのままディアナの唇に自分の唇をそっと重ねたのだった。




