11.ダライの決心
本日2話投稿しています。今回が1話目です。
(傷心の眼鏡男子ダライ目線)
「情けない……」
リズム良く自室の壁に頭を打ち付けながら、私は「ぐおお」と呻いた。頭が痛いからではない。リリ姫の目の前で醜態を晒したことに耐えられなかったのだ。
今日はリリ姫が初めてギガン族に弓を教える特別な日だった。
獰猛なギガン族の男どもの中に、あのように麗しい乙女を一人で放り込むことなど出来る訳も無く、私も参加することにした。
剣……とは名ばかりの丸太の先を平たく切っただけの武器ならば、たしなみ程度に習ったことはあったが、弓は全くの初心者だ。微塵の自信も持てない。というより、私は運動全般が苦手なのだ。
幼少の折に他の同世代のギガン族と共に剣術を習った時も、私はすぐに周りに追いつけなくなってしまった。今考えれば、他の者は純血のギガン族であり、混血の自分よりも成長が早かったせいだと分かる。だが、当時はいじめを受けていることや自分の不甲斐なさが恥ずかしく、「僕は勉強の方が好きだから」と言い訳して訓練を止めてしまった。
それ以降、運動と名の付くものを避けて生きてきたが、それでいいと思っていた。
だが、案の定、彼方此方に飛んで行く矢と、「飛距離はありますよ!」と焦りながらフォローしてくれるリリ姫の姿を見て、ひどく後悔した。
周りの男達が嘲笑が耳に響く。
それでも、「初心者だから仕方がない」と開き直って頑張ってみたが、一向に上達する気配がなかった。一方で、わざと私の隣に陣取って練習するゼダ王子は、ほんの数回矢を放っただけで、あっという間にコツを掴んでしまった。王子の矢が的を射抜く度、リリ姫の目がキラキラと輝く。その笑顔に心を奪われると同時に、王子のドヤ顔にイラっとした。
楽しそうに王子とハイタッチをする姫の横顔が視界に入る度、どうしてこれほど差があるのかと、どうして自分は今まで研鑽を積んでこなかったのかと、自己嫌悪に陥ってしまう。
おかげで、せっかくのリリ姫の晴れ舞台だというのに、私はイライラが募り終始不機嫌な顔をしてしまった。
もちろん、イライラの原因は自分の不甲斐なさと王子のドヤ顔だけではない。
ギガン族の男ども……特に純血のギガン族の奴らだが……リリ姫に対する態度が礼を欠いており、とてもじゃないが冷静ではいられなかった。
ギガン族にはない魅力に溢れたリリ姫に惹かれる気持ちはよく分かるが、だからといって一国の姫を無遠慮に眺めまわすなど、許されることではない。
どこか一般常識が抜けている純粋なリリ姫は、そんな下卑た視線を「やる気がみなぎっていて素晴らしい!」と勘違いしているようだった。
ところが、せっかく楽しそうなのに水を差してはいけないと余計なことは言わずに我慢していたというのに、奴らはリリ姫の手どころか肩や腰に触れたのだ。
リリ姫の悲鳴が聞こえ、気が付けば殴りかかっていた。
こんな風に衝動的に身体が動くのは初めてだった。
喧嘩など、したことがない。
皆の期待通り、あっさり殴り返され私は眼鏡と共に吹っ飛んだ。
それから後のことは、よく覚えていない。
殴られた時に頭を打ったのだろう。
「酷くやられたな」
急に王子の声が聞こえて、正気に戻った。見回すと既に奴らの姿は無く、目元を赤く腫らしたリリ姫が王子越しにこちらを見ていた。
「放っておいてください」
一瞬で自分の置かれた状況を把握し、私は情けなさと恥ずかしさから王子の手を払いのけてしまった。リリ姫にこれ以上の醜態を晒す訳にはいかない。私は、まだ眩暈のする体を起こし弓道場を後にした。
どうやって屋敷まで帰り着いたのか覚えていない。
話によると私は門の前で倒れていたらしく、一時我が家は大変な騒ぎだったらしい。
目が覚めると、すっかり夜が更けていた。
私はリリ姫を置いてきてしまったことを思い出した。最悪だ。
慌てて部屋を飛び出したところで執事に出会い、王子がリリ姫と土竜を送り届けてくれたことを聞いた。
リリ姫が私の事をとても心配していたことも。
自分の不甲斐なさに吐き気がする。
(このままでは駄目だ……!)
もう一度激しく壁に額をぶつけてから、私は顔を上げた。
(強くならねば)
心も。体も。
今度は、逃げない。
堂々とリリの横に立つために……!
更新が遅くなって申し訳ありません!
気圧のせいか頭が重くて痛くて……でも、とある薬を飲んだら4時間くらい元気になることを発見したので大丈夫です!




