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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第4章 歴史学者

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4-12 首都の同僚

 羽の生えた馬。ペガサス。俺の世界では伝承とか伝説の中にしかいない生き物だが、この世界には実在するらしい。

 そういう単語とか生き物の形とかは知識として知っているけれど、それが目の前に現れるなんてことがあるとは思わなかった。シュリー以外のみんなも同じようだった。


「リゼさん! リゼさん! 馬に羽がついてるんですけど! あれはなんなんですか!?」

「そっかー。フィアナちゃんはペガサス知らないんだ。あれは飛べる馬なんだよ。わたしも初めて見たけど。すごい」

 首都育ちのリゼであっても、存在は知っていても見たことはないという珍しいものらしい。


 ところが、問題の本質はペガサスではなかった。その上にまたがっている女が、シュリーに声をかけた張本人だろう。ペガサスで空を飛びながらだったから、声も上から聞こえた。

 シュリーからマルカという名前で呼ばれたその女性は、シュリーと同じか少し年上といったところだろうか。背の高さや体つきといったところもシュリーよりも大きい印象を受ける。



「シュリー! 戻ってきてないと思ったら何か発見したんですって!? どういうことか説明しなさい!」

「マルカには関係ないことだ。ほら、邪魔だからあっち行きなさい」

 ペガサスにまたがりながら怒っているマルカと、それを追い払いたいシュリー。状況が読み切れない。なんだなんだと門番の兵士が複数出てくる中でふたりは問答を続けている。


 たぶん、シュリーが首都に帰っていく役人に頼んだ伝言を聞いて、このマルカという女性はペガサスを飛ばしてここまで来たってことなんだと思われる。なんで来たのかはわからないが、シュリーがなにか発見をしたというのに興味があってというような言い方だな。


「あなたはいつもそう! 手柄を独り占めしようとして勝手に動く! ほら! わたしにも詳しく教えなさい!」

「大した案件じゃないから断る」

「大した案件じゃないなら隠す必要ないでしょ! ていうか、あなた重大なことほど隠したがるじゃないですか! さあ言って! 言わないなら力ずくで!」


 問答では解決しないと見たのか、マルカは剣を抜いた。すかさずカイがシュリーの前に出て守る。周りの兵士達はまさかの荒事が始まりそうな雰囲気に緊迫感を持ちつつも、どうすればいいのか判断がつきかね戸惑っているようだ。それから……。



「おーい! シュリーさん! カイ! 大丈夫か!?」

 ガルドスの声。複数の冒険者や兵士を連れてこちらに走ってきている。


「さっき住民から報告があった。空から飛んでいる馬がやってきて、シュリーという名前の学者がどこにいるか知らないかと。この街の人間はペガサスなんて見たことないし、知りもしない人ばかりだからちょっとした騒ぎになってるぞ。というか、そのペガサスは門を通らずに街に入った」

 ガルドスが状況を説明してくれた。マルカが規則違反で手続き無しで街に入っているということも。


「ま、街の地面に足はつけてませんわ! ちょっと上空をお邪魔しただけで別に街には入ってないですわ! だから別に問題ない……と思いますわ」

「住民に声かけておきながら何言ってるんだ…………シュリーさん。あなたを探してましたが、この人は知り合いですか?」

「あー…………知り合い、ではあるかなー。でも友達とかじゃなくて、敵だ。うん。あたしの研究を邪魔する事が生きがいの犯罪者だ。というわけで捕まえてくれ」

「よし確保ー!」


 シュリーの指示に従って、ガルドスが声を張り上げる。そして冒険者や兵士達がマルカと彼女が乗っているペガサスに向かっていく。門破りをした犯罪者を捕まえるために。


「うぇっ!? 待った! こっち来ないで! 話せばわかりますわ!」


 マルカは武器は持っているものの、戦いに慣れている戦士というわけではないようだった。咄嗟に空を飛んで逃げようとしたようだけど、一瞬早く兵士の一人がペガサスの足にしがみついてそれも失敗。


「わー! 離して! ペガサスって繊細なのよ! 掴まないで! わかった! わかったから大人しくします! あとシュリー覚えてなさい! この借りはきっちり返してやりますわ!」

「君から恨みを買った覚えはないねマルカ! 勝手にこっちに来て勝手に捕まっただけじゃないか! よし、それじゃあ改めて旅に出よう! 前進!」

 今のうちにさっさと行ってしまって面倒からは逃げよう。そんな魂胆も透けて見える言い方だけど、旅に出るという目的が変わるわけでもない。御者に命令して、馬車を前に進めて街を離れていく。


「ありがとなー! けっこう好きだったぜこの街! あとギルドマスター! そいつは悪いやつだから出来るだけ長く勾留しててくれよな!」

 シュリーの別れの挨拶に、ガルドスが片手を上げて挨拶を返す。

 旅立ちとしては少々特殊な形になってしまったが、これでいいんだろうか。




「マルカトリア・ホノアドってのが奴の名前だ。だから愛称がマルカ。学術院所属の学者で……まあ、あたしより年上で先輩だ」

 そのまましばらく馬車を進め、あのペガサスが追ってこないのを確認してからシュリーは俺達に説明をした。あの女が何者かを。職場の同僚で、年上の先輩。その割にはシュリーの態度の雑さが気になるが、そこは性格が合わないからと言われた。


「ああ見えて、奴の父親は学術院の幹部だ。というか次期学術院長って言われてる。一族は古くから王家に仕えてきて、代々国の要職に就いてきた…………まあ、名門だな。いいところのお嬢様」

「名門ですか」

 その言葉にリゼも反応する。魔法の世界以外にも名門の概念は当然のようにある。そして、その実態はリゼの見てきた名門のあり方と似ているのだろう。


「そう、名門。家の格式が高いから、あいつも苦労してるんだとは思うぞ。学者として手柄を挙げなければ家の名前がすたるとか。つまらん考え方だが、あいつは必死だ。あたしとは全然気が合わないのに、あたしの仕事はいつも見ていて隙あらば手柄を横取りしようとしてくる。まあ、あたしが優秀だからなんだろうけどな!」

 はっはとシュリーは胸を張った。この学者が優秀かどうかは別として、あのマルカという女がこのまま引き下がるとは俺には思えなかった。


 たぶんマルカは、シュリーが他の役人と一緒に戻って来ずに伝言でちょっとした発見をしたというのを聞いてこっちに飛んできたのだろう。

 そして、これは実際にすごい発見の可能性が高い。国宝級の物が絡んでいるわけだし。


 マルカはこの件の詳細は知らない。けれどシュリーの態度を見てこれは重大な事だと確信していると思う。だったら、また追いかけてくるだろう。

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