表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/30

深まる交流

 旅、二日目。

 今日もずっと馬に揺られて過ごした。

 どうやらこの旅は夜は極力宿に泊まるようで、まだ陽は少し高いけれど、早々に宿を取る事になった。

 この先の街だと、深夜近くにならなければ着かないんだそうだ。

 大通りにあった宿を見つけると、(うまや)に馬を預けて、中に入る。


「では、部屋割りは昨日と同じでよろしいですね?」

「ええ、構いません」

「今夜もよろしくお願い致します、殿下方」

「ラオ、今夜も勉学の復習をさせるからな?」

「はい、兄上」


 昨日と同じ。

 つまり、ラオ君とシャオ様、キル様とユシャール様とマノン様、私とレジーナさん、メイファさんと美子ちゃんの組み合わせだ。

 でもメイファさんは結局、寝る時間まで私達の部屋にいたし、今朝も起きると早々に私達の所に来て、一緒にいたんだけどね。


「……あ、あのぅ……。……わ、私、ユイさんやレジーナさんと同室にして戴けないでしょうか……? ……その、ユイさんに、じっくりと教わりたい事がありますので……」

「ん? ……ああ。構いませんか、ユイさん、レジーナさん?」

「はい、勿論!」

「今夜も賑やかになるね、大歓迎だよ!」

「あ……! ありがとうございます、よろしくお願いします!」

「え、あの、お待ち下さい! それでは、ミコさんがお一人になってしまうのではありませんか? ミコさんがお寂しい思いをしてしまいます!」

「えっ……だ、大丈夫ですぅ、マノン様! 美子、メイファさんが唯ちゃんに教わりたい事があるなら、邪魔したくないですしぃ。一人でも、我慢できますぅ」

「! ミコさん……なんとお優しい……! わかりました。ですが、お寂しいようでしたら言って下さい。私でよろしければ、いつでも話し相手になりますので!」

「わあ、本当ですかぁ? ありがとうございますぅ! 美子、嬉しいですぅ!」


 ……はあ、白々しい。

 一人部屋になるってわかった時、嬉しそうな顔してたよ、美子ちゃん?

 マノン様に殊勝な事言ってるけど、一人部屋嬉しいって顔に書いてあるし。


「……では、部屋割りはそのように。夕食まではまた、各自自由時間と致しましょう」


 美子ちゃんに一度白けた視線を向けた後、キル様はそう言って宿の手続きをし、解散となった。


★  ☆  ★  ☆  ★


「できました! 見て下さい! どうですか、私のヌイグルミ!」

「うん、可愛い! でも、見た事ない動物だね?」

「私の国にいるトラファスって動物なんです! 可愛いんですよ!」

「へえ~!」


 嬉しそうに声を上げながら、メイファさんが自作のヌイグルミを差し出してきた。

 うん、ヌイグルミ作りを習い始めたばかりのわりには綺麗にできてる。

 黄色と黒の縦縞模様は、虎っぽいけど……耳が異様に大きい。

 目はつぶらで、全体的に確かに可愛い。

 実物を見てみたいかも。


「……でも、メイファさんの国の動物かぁ……。う~ん……うん、そういうの、売れるかも……! どうせ大陸を回るんなら、旅の間にそういう子調べて、実際に見て作ろう! 各国特有の動物シリーズ! 国ごとに分けて並べて……うん、絶対売れる!!」

「売れる? ……ユイさん、何か商売をなさるんですか?」

「あ、うん。この旅が終わったらね、私、ラオ君やレジーナさんに手伝ってもらって、雑貨屋を開くの! ヌイグルミがメイン商品なんだよ!」

「雑貨屋……ヌイグルミがメイン商品……」

「うん! ……とは言っても、先は長いんだけどね。将来的には売り子をしてくれる店員さんも雇わなきゃだし」

「! あ、あの……それ、私がやっちゃ駄目ですか!? こんな可愛いヌイグルミをたくさん置くお店、絶対素敵ですし! そんな所で働けたら嬉しいです!」

「え? ……で、でも……メイファさん、お姫様だよね……?」

「! ……いえ、私は……そんなの、名ばかりなんです。以前も言いましたけど、私は市井で、庶民として育っていて……だから、お城での生活は、凄く窮屈なんです。父王も、それをわかっているのか、『お前は十二王女だ、将来は己の好きにしなさい』って、言ってくれてます。だから、将来は再び市井に出て働くつもりなんです」

「市勢で……そうなんだ。……わかった! メイファさんがいいなら、是非お願い!」

「! ありがとうございます! ……あっ、あの、私の事はどうぞ、メイって呼んで下さい! よろしくお願いします!」

「うん、わかった。メイちゃん。あ、私の事も、これからは"さん"じゃあなくて"ちゃん"ね? 仲良くやろうね!」

「は、はい! ユイちゃん!」


 やった、将来の従業員兼友達、ゲットだ!

 ヌイグルミの種類や店のレイアウトに関するいい案も浮かんだし、順調順調!


「良かったね二人とも。……でも、ユイちゃんから今ヌイグルミ作り習ってるメイファさん……じゃあなくて、メイちゃんなら、売り子も作り手も、両方できるね~」

「! あっ……!!」

「そうですね! 私、頑張ります!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ