深まる交流
旅、二日目。
今日もずっと馬に揺られて過ごした。
どうやらこの旅は夜は極力宿に泊まるようで、まだ陽は少し高いけれど、早々に宿を取る事になった。
この先の街だと、深夜近くにならなければ着かないんだそうだ。
大通りにあった宿を見つけると、厩に馬を預けて、中に入る。
「では、部屋割りは昨日と同じでよろしいですね?」
「ええ、構いません」
「今夜もよろしくお願い致します、殿下方」
「ラオ、今夜も勉学の復習をさせるからな?」
「はい、兄上」
昨日と同じ。
つまり、ラオ君とシャオ様、キル様とユシャール様とマノン様、私とレジーナさん、メイファさんと美子ちゃんの組み合わせだ。
でもメイファさんは結局、寝る時間まで私達の部屋にいたし、今朝も起きると早々に私達の所に来て、一緒にいたんだけどね。
「……あ、あのぅ……。……わ、私、ユイさんやレジーナさんと同室にして戴けないでしょうか……? ……その、ユイさんに、じっくりと教わりたい事がありますので……」
「ん? ……ああ。構いませんか、ユイさん、レジーナさん?」
「はい、勿論!」
「今夜も賑やかになるね、大歓迎だよ!」
「あ……! ありがとうございます、よろしくお願いします!」
「え、あの、お待ち下さい! それでは、ミコさんがお一人になってしまうのではありませんか? ミコさんがお寂しい思いをしてしまいます!」
「えっ……だ、大丈夫ですぅ、マノン様! 美子、メイファさんが唯ちゃんに教わりたい事があるなら、邪魔したくないですしぃ。一人でも、我慢できますぅ」
「! ミコさん……なんとお優しい……! わかりました。ですが、お寂しいようでしたら言って下さい。私でよろしければ、いつでも話し相手になりますので!」
「わあ、本当ですかぁ? ありがとうございますぅ! 美子、嬉しいですぅ!」
……はあ、白々しい。
一人部屋になるってわかった時、嬉しそうな顔してたよ、美子ちゃん?
マノン様に殊勝な事言ってるけど、一人部屋嬉しいって顔に書いてあるし。
「……では、部屋割りはそのように。夕食まではまた、各自自由時間と致しましょう」
美子ちゃんに一度白けた視線を向けた後、キル様はそう言って宿の手続きをし、解散となった。
★ ☆ ★ ☆ ★
「できました! 見て下さい! どうですか、私のヌイグルミ!」
「うん、可愛い! でも、見た事ない動物だね?」
「私の国にいるトラファスって動物なんです! 可愛いんですよ!」
「へえ~!」
嬉しそうに声を上げながら、メイファさんが自作のヌイグルミを差し出してきた。
うん、ヌイグルミ作りを習い始めたばかりのわりには綺麗にできてる。
黄色と黒の縦縞模様は、虎っぽいけど……耳が異様に大きい。
目はつぶらで、全体的に確かに可愛い。
実物を見てみたいかも。
「……でも、メイファさんの国の動物かぁ……。う~ん……うん、そういうの、売れるかも……! どうせ大陸を回るんなら、旅の間にそういう子調べて、実際に見て作ろう! 各国特有の動物シリーズ! 国ごとに分けて並べて……うん、絶対売れる!!」
「売れる? ……ユイさん、何か商売をなさるんですか?」
「あ、うん。この旅が終わったらね、私、ラオ君やレジーナさんに手伝ってもらって、雑貨屋を開くの! ヌイグルミがメイン商品なんだよ!」
「雑貨屋……ヌイグルミがメイン商品……」
「うん! ……とは言っても、先は長いんだけどね。将来的には売り子をしてくれる店員さんも雇わなきゃだし」
「! あ、あの……それ、私がやっちゃ駄目ですか!? こんな可愛いヌイグルミをたくさん置くお店、絶対素敵ですし! そんな所で働けたら嬉しいです!」
「え? ……で、でも……メイファさん、お姫様だよね……?」
「! ……いえ、私は……そんなの、名ばかりなんです。以前も言いましたけど、私は市井で、庶民として育っていて……だから、お城での生活は、凄く窮屈なんです。父王も、それをわかっているのか、『お前は十二王女だ、将来は己の好きにしなさい』って、言ってくれてます。だから、将来は再び市井に出て働くつもりなんです」
「市勢で……そうなんだ。……わかった! メイファさんがいいなら、是非お願い!」
「! ありがとうございます! ……あっ、あの、私の事はどうぞ、メイって呼んで下さい! よろしくお願いします!」
「うん、わかった。メイちゃん。あ、私の事も、これからは"さん"じゃあなくて"ちゃん"ね? 仲良くやろうね!」
「は、はい! ユイちゃん!」
やった、将来の従業員兼友達、ゲットだ!
ヌイグルミの種類や店のレイアウトに関するいい案も浮かんだし、順調順調!
「良かったね二人とも。……でも、ユイちゃんから今ヌイグルミ作り習ってるメイファさん……じゃあなくて、メイちゃんなら、売り子も作り手も、両方できるね~」
「! あっ……!!」
「そうですね! 私、頑張ります!」




