釣りダンジョンに行きました(その9)
その後、四人で釣りをした。
最後にミミーさんが巨大なヌシ(?)を釣り上げたときは本当に驚いた。
魔物かと思ったよ。
でも、魔物ではなく普通の魚で、倒さなくてもインベントリに収納できた。
よかったよ、あの大きさならバケツにも入らなかったもんね。
……あれ?
「ミミーさん。魚をそのままインベントリに収納できるなら、バケツとか用意しなくてもいいんじゃないですか?」
「それは雰囲気よ。それに、バケツの中にいっぱい魚が入っているのを見てると嬉しいでしょ?」
目に見える成果があるのって嬉しいもんね。
納得した。
十分、釣りをしたしボスのところに向かうことになった。
途中までは獣道を進み、途中から道を逸れる。
「結構複雑だな。マッピングのスキルがなかったらわからないぞ」
「いや、そうでもない。実はさっきの獣道を進んでも出口に辿り着くみたいなんだ。距離も変わらん」
「そうなんですか? だったら、何故こっちに?」
「途中、大きな沼地を通らないといけないんだよ。しかもかなり臭い。だったらこの森を通った方が楽だ」
沼地かぁ。
だったらこの道でいいな。
リーフさんも同じ感じだったと思う。
ただ――
「沼地……そういうのもあるのね。そこでも釣りがしたいわね」
「やめとけ。ゲーム設定限界の臭さだぞ」
臭いのはイヤだなぁ。
ゲーム内なので「痛み」には限度があるらしい。
死ぬような攻撃を受けても、「あ、攻撃を受けたかも」って思う程度の痛みしかない。
でも、臭いは別らしい。
結構限界の臭いというのは、清掃の行き届いていない公衆トイレくらいの臭いがするらしい。
美味しいものを食べたあとなら猶更近付きたくないよね。
この道を選んでくれたガンテツさんに感謝だよ。
暫く歩くとまた獣道に出た。
そして進む。
「この先だ。狼の剣士がいる」
「剣士? 剣を持ってるのか?」
「言ってなかったか?」
「聞いてないぞ。剣を持ってるとなると、人狼の亜種か」
ワーウルフ? ワーワー騒いでる狼かな?
四対一の戦いか。
多対一で多人数側で戦うのって、小学生の時に同門の弟子と一緒にお父さんに挑んで以来だね。
ガンテツさんを先頭に進む。
道中、人間のように歩くことができる狼のことをワーウルフと呼ぶのだと教えてもらった。
そして見えてきた。
明らかに怪しい洞窟とそれを守るように立つ剣を持った狼の姿が。
「いたっ!」
二番目に歩いていたリーフさんがカワイイ声を上げた。
「どうした?」
「何かにぶつかって――」
リーフさんがパントマイムみたいなことをする。
まるでそこに壁があるみたいだ。
って、本当に壁があるっ!?
「ガラスの壁? 見えない壁? 通れません」
「ガンテツ、どうやってそっちに行ったの?」
「どうって、普通に通れたぞ」
ガンテツさんがそう言って戻ってきたら、見えない壁にもたれかかっていたリーフさんが見えない壁の向こう側に倒れそうになった。
そして――
「本当だ。通れない」
今度はガンテツさんが見えない壁に阻まれる。
これってもしかして――
「一人しか通れないってこと?」
「そういうことでしょうね。あっちのワンコちゃんは一対一の勝負を希望しているそうよ」
ミミーさんがここから先にいるらしいワーウルフのことを指して言う。
「誰が戦う? ミミーの鍵だからミミーが行くか?」
「私はごめんね。戦うのは専門じゃないし、私は後衛職だから一対一の戦いは不利だから。リーフに譲ってあげるわ」
「ではお言葉に甘える」
リーフさんがそう言って大剣を抜いてワーウルフに戦いを挑んだ。
私はここで応援に徹しよう。




