25.魔王城の謎を解いちゃった
「はーい、ではこれから第四回、魔王様へのイヤガラセ大会を開催したいと思います!」
「……第一回と第二回と第三回ってありましたっけ?」
はい、魔王城ダンジョンA(仮称)の前まで【フライト】でルナと一緒に飛んできました。魔王城ツアーで最初に見つけたアンデッドダンジョンです。
森の丘の中腹に穴があいていて、そこからアンデッドが湧き出してうわーってこっちに向かって走ってきます。今までで一番凶悪そうなダンジョンです。
「一回目はデッドダンジョン2、二回目はデッドダンジョン1、三回目はスランダンジョンです。残りの魔王城ドームは五層、まだ攻略していないアンデッドダンジョンも五つ。四回目の今日はダンジョンの数とドームの数に関連性があるのかを調べるため、この魔王城ダンジョンを破壊します」
「は……破壊? 破壊するんですか? 攻略じゃなく」
「そんな面倒なことはしません。作戦を説明します」
うじゃうじゃとこっちに向かってくるアンデッドたちを眼下に見下ろしながら丘の上でルナと並びます。
「俺の最大魔法を、ダンジョンに向かって投げ込みます。ルナさんはそれに全力のホーリーをまとわせてください。以上です」
「わ……わかりました」
「圧力上げ! 非常弁全閉鎖! 回路開け! 安全装置解除!」
水蒸気発生。
「波動エネルギー強制注入、エネルギー充填120%! 最終セイフティ解除、聖域どうぞっ!」
「はいっ! 女神の祈り、大地の恵み、天空の慈しみをすべて聖なる力に変えて穢れ無き光となれ。聖域!」
ひゅんっ。蒸気収縮。直径15cmの臨界水素発生。青白い光に包まれて直径6mの光球に拡大。
「発射まで3、2、1……合体魔法【ペタファイアボール・ホーリー】 発射!!」
青白い球がごろごろごろごろ……と転がっていってこっちに向かってくるアンデッドたちを爆散させながら進みます。地獄絵図です。
玉、転がっていって勢いよく山の斜面を登り、ころんとダンジョンの中にはいっていきました。
しばらくして……。
……ずしーん……。……ごごごご……ドドドド……。
ドドドドドドド。ものすごい振動です。
どおんっ……。
丘全体が青白い光に包まれて、へこみました。
終了。
「思った通りだ!」
魔王城上空まで来た。
結界のドームが一つ減って、四層になってる!
「この結界、アンデッドダンジョンと繋がっていたんですね!」
「そうだ! よしっ残りもう一つ、潰しに行くぞ!」
その後、魔王城ダンジョンB(仮称)も、合体魔法【ペタファイアボール・ホーリー】で潰した。魔王城に戻ってみると、残りのドームは三層。
もう間違いない。最初は八層あったんだ。
「魔王城に一番近い魔王城ダンジョンCは魔王城突入前まで残す。ラナスに戻って残りのアンデッドダンジョン、全部攻略しよう!」
「わかりました!」
地図で近いほう、カララン村のデッドダンジョン4に向かう。
徹夜で【フライト】だ。もう方向だけ合わせてオートクルーズにして寝ながら飛ぶ。ルナは背中に乗っけて、ロープで落ちないように縛り付けた。
……すやすや寝てやがる。まあMP回復してろ。
丸々一昼夜飛んで夜明け前、デッドダンジョン4到着。
ふわー……っと着地する。
「おうっ、元気していたか!」
「サトウさん!!」
「ルナさん!!!!」
マグナムハンターズが全員、ダンジョン前でへたばってた。
「やつれてんな。何があった?」
「サトウさんの言う通り、このデッドダンジョン4からアンデッド出てこないか見張ってたんっスよ!」
「そしたら、昨日から入り口からゾロゾロ、アンデッド出てくるんでずーっと撃退してました!」
「……そりゃすまんかった。取り逃がしたりしてないよな」
「バッチリッス、猫の子グール一匹通しゃしませんて!」
「よくやった。ルナ回復してやれ」
「はいっ!」
ルナが中央で祈ると、メンバー全回復、全スタミナ回復!
相変わらずすげえ。威力上がってないか?
「ルナ、レベルいくつになってる?」
「えーと……152!」
「……なにそれ……」
「……あの、たぶん、私のホーリーで魔物とか、ダンジョン潰したりとかしたから……」
あの経験値全部ルナに行ったのか。
俺はカンストでレベルも上がらないし経験値も入らないから、ルナと魔法合わせて攻撃すると全部全部ルナテス様にいっちゃうんですか。
そうなら最初からそうすればよかった……。
「ルナ」
「はい」
「こいつら無敵にしてやれない?」
「……今ならできるかも。待ってください」
できんのかい。
ルナがマグナムハンターズの一人一人に祝福を与える。
武器も、防具も、青白い光で包まれて聖域化する。
「すげ――――!!」
「なにこれ!!」
「なんか、これすごいことになってません?!」
うん、以前と比べると当社比三倍だね。
「よしっ! お前たちこれからこのダンジョン攻略しろ。一匹たりとも残すなよ!」
「はいっ!任せてくださいッス!!」
「俺たちはこれからデッドダンジョン3に様子見に行く」
「……そっち、国軍が向かってるッスよ?」
「何?」
「国軍がそっちやるって言うから俺たちこっち来たんす。『ハンター風情に後れは取らぬ』とか言っちゃって、かっこつけて出ていきましたわ」
「……大惨事になってなきゃいいが。急ごうルナ」
ルナを背に乗せて、全速力でカララン村まで向かう。
大変なことになってんじゃねーか!
グールと、グール化した国軍兵士と、生き残り兵士が入り乱れて乱戦中だ。
村の防衛網も決壊寸前だぞ!
この程度も守れないのかよ自衛隊!
猟友会以下じゃねーか!
乱戦のど真ん中に着地!
「やれっ!」
「聖域光!」
ぶぅわっ!!!
ルナを中心に巨大で分厚い青白いドームが爆発的に広がってなにもかも吹き飛ばす。
ものすげえパワーアップしてるわ。なにこれ!
グールは爆散、グール化した国軍兵士も闘ってた兵士もみんな放射状にぶっ倒れた。
「……どうなったの? これ」
「グールは消滅、グール化は浄化です。もう安心ですね」
ルナが兵士を診て回って答える。
「放っておいたら勝手に気が付く?」
「はい、たぶん」
「じゃ、放っておこう」
「……それはいくらなんでも……」
ルナが苦笑いして祈りを捧げ、兵士全員に金色の光が降り注ぐ。
何人かの兵士が気が付いたり、起き上がったりしているな。
「な……なんだ? 今のは……」
「もう大丈夫だ。グールはいない。グール化した兵士さんも元に戻ってるからよくみんなに言っとけ。戦闘は終わりだってな。気が付いた奴らで村の警護を頼む」
「あなたは……?」
「通りすがりのハンターッス。馬を借りるッス」
そう言って俺は国軍の馬一頭の後ろにルナを乗せ、そのままタンデムでデッドダンジョン3に駆け出した。
二人には【フライト】をかけ、馬への負担を軽くしているので軽々と走るぞ。
「きゃ――――っ! ははははっ!」
ルナ楽しそうだな! そういえば馬って乗せてやったことなかったな。
道すがらうろついてるグール化した魔物たちを、俺の【プラズマボール】や、ルナの聖矢で撃退しながら進む。
二時間後にはデッドダンジョン3に到着。
俺のナイフにも祝福をかけてもらって右手にハンティングナイフ、左手に十手を持ち、ルナは聖域を展開したまま侵入する。
もうなんの遠慮もいらない。俺の倒した敵は全てルナの経験値になるんだからな。
倒して倒して倒しまくる。
ルナの加護すげえ……。全部の敵が一撃だ。
ルナのホーリーもすげえ。触れるだけでグール化した魔物が消滅する。
最下層に到着。
黒い体、コウモリみたいな羽根、赤い瞳。
悪魔がいて、振り返り俺たちをせせら笑う。
「ひひひひひ……人間! よくここまで来たな。だがもう遅……」
すぱん。
首を斬り落とす。
「わりいな、ちゃんと間に合ったよ」




