冒険者ギルド
五日後、洞窟に設置された撮影石の映像を確認した冒険者ギルド職員が、ギルド長室をノックもせず開け、驚きの声を上げた。
「ギルド長、こちらの映像をご覧ください」
書類を見ていたギルド長は、書類から顔を上げ、訪れた職員を見据えた。
「……君、落ち着きなさい。それで確認する映像とは? ……ぬぬ、なんだこれは人間か?」
その映像はひどく乱れており、画面に映る姿はぼんやりとしか見えない。それでも、確かに、謎の仮面をつけた人物が映っていた。
「ギルド長、撮影石の映像は不鮮明ですが、謎の仮面をかぶった人物のようです。この者が、洞窟を凍らせた張本人でしょうか?」
ギルド長は腕を組み、眉をひそめる。
「それは、調べてみないと分からないが。高度な撮影石を、使っていたはずだろう。なぜ、ここまで映像が乱れている? 正しく、石を設置したのか?」
ギルド長の問いに、職員はきっぱりと答える。
「はい。設置も動作確認も、指示どおりに行いました」
その様子に、嘘は感じられない。
ギルド長はしばし黙考し、低くつぶやく。
「……ならば、映像の乱れは偶然ではない。魔力による干渉か、それとも――」
その時、別の職員が顔色を変えて、ギルド長室へ報告しにきた。
「聞いてください、ギルド長。映像にはもう一点、不可解な点がありました。なんと、映像記録の一部が「消失」しています。その人物が何処から洞窟の前に現れたのか、そして消えたのか、記録そのものが存在しないのです」
ギルド長の表情が固まる。
「……実に、厄介な事態になったな。引き続き、撮影石での、撮影は続けるように」
「かしこまりました」




