46話
ラテと、久しぶりに屋敷に来たチェルシーに「僕は、冒険者になる」と話した。二人は目を丸くして、すぐに反対の声を上げた。
「魔法がまだ上手く使えないノエールでは、無理ね」
「そっす。ノエール様、魔法も戦闘も無理っす! 俺っちが手伝えば、なんとかなるかもっすけど……」
「ちょっと待って、まだ光っちゃうけど魔法は使えるよ。戦闘だって、これから特訓すればどうにか――」
「ならないわ。訓練しても、あと一年はかかると思う」
「ならないっす。チェルシー様の言う通り、一年は修行したほうがいいっす」
一年、修行がいるのか……。
今から、一年間、魔法と戦闘の訓練に集中して、冒険者を目指そう。食べ物に困ったら、伯爵家から持ってきた絵画、置物、壺を売ればいいか。あとは……神様に錬金術スキルをもらう?
今は、とりあえず絵画を売って、お金にして食料を買うか、と……ダメにするクッションの上で悩む。
ピンポーン。え? インターホン? いや、これは……頭の中に直接響いてきた。これは前と同じで、神様かな?
〈そうです。お困りのノエール様に、新しいスキルを授けます〉
新しいスキルを、僕に!?
〈はい。そのスキルの名は『一日恩恵』欲しいものを、千円以内で一つ授ける能力です〉
え、ちょっと神様、そんな特別で、便利スキルを貰ってもいいのですか? 千円以内だったら、いろんなものをもらえますが?
〈はい。まだ、ノエール様に対しての、お詫びが終わっておりませんし。神界で、キャンプ道具、ダメにするクッションが神々に人気ですよ〉
――キャンプ道具? ダメにするクッションが、神々に人気? ということは。神々は僕たちを見ているのか……。別に変なことをしているわけでもないから、いいっか。
〈そして、あれこれ欲しいと、バンバン欲しいスキルをノエール様が言ってこないのも、不思議です〉
――僕があれこれ? バンバン欲しいスキルって。神様には僕が、そんなに欲しがりに見えてるのか?
あ、もしかして、アパートにあるもの全部、欲しいって言ったのが悪かったのかな……。あれはあの時、本当に欲しかっただけで……。
〈他に欲しいスキルはありませんか?〉
なら、錬金術と調合、薬草知識スキルが欲しいです。
〈錬金術、調合、薬草知識ですね。今、そのスキルを付与させていただきました。〉
僕はステータスを開きスキルを確認した。
一日恩恵、錬金術、調合、薬草知識が増えてる。僕は欲しかったスキルを手に入った。僕はすかさず、神様に「焼肉のタレ」をお願いする。
〈一日恩恵、焼肉のタレですね。かしこまりました〉
目の前に、僕の好きなメーカーの焼肉のタレが現れる。そう、前に生姜焼きを作ったときの肉の塊が、まだアイテムボックスの中に残っている。
……あ、それと、神様に聞きたいことがあります。僕は米について、神様に聞きたいことがあった。




