41話
チェルシーと叔父様は、生姜焼きに満足して、転移鏡で帰っていった。
あ、そうだ。チェルシーの叔父様、只者じゃなさそうだったからステータスを見ておくべきだった、と、キッチンで皿を洗いながら思い出した。
あの話し方と、叔父様の頭に生えたツノと、お尻から伸びた尻尾。まるで物語に出てくる魔王みたいだ。いま、僕がいる異世界には召喚された勇者がいるのだから、魔王がいたっておかしくはない。
……とはいえ、あの人が魔王だとは限らない。
僕の隣で皿を拭いている、ラテに叔父様のことを聞いてみるのもアリだけど、次に来たときに尋ねればいいか。
「皿洗い終わり!」
「終わったっす」
「ふぅ、ラテ。今日は疲れたし、白菜の種まきは明日にして、夕飯まで、ちょっと休憩にするよ」
朝からガッツリ生姜焼きを食べたので、昼はアイテムボックスに入っていた、菓子パンとコーヒーで軽く済ませた。
「了解っす。俺っちも、片付け終わったら部屋で昼寝するっす」
「昼寝かぁ、いいね。僕も部屋で少し寝よう」
「では、三時間くらい経ったら起こしますっす」
「ありがとう、頼んだよ」
片付けを終えた僕とラテは、それぞれの部屋で昼寝に入った。
⭐︎
「失礼しますっす。ノエール様、時間っす。起きてください」
三時間くらい経ったのだろう。ラテが部屋に来て、僕を起こしてくれた。寝てから三時間、今が午後四時過ぎなら、そろそろ夕飯の支度をはじめる時間だ。
……いや、その前に。今日はテントを建て替えるのもいいかもしれない。
ラテにお礼を言い、僕はアイテムボックスを開く。中から取り出したのは、真ん中にポールを立てる、四人用のモンゴル式テントだ。
テントの中にベッドは置かず、ポールを囲むようにクッションと、丸いテーブルを配置すれば、みんなで中で座って食事ができる。
ーーなかなか、いい案かもしれない。
さてと、今日の夕飯をどうするかだ。うーん。今日はパスタな気分だから。焼くだけで済むハンバーグをのせたボロネーゼパスタと、ニンジンサラダ、ウインナースープにするかな。
その夕飯を作る前に、チェルシーに頼まれた転移鏡の部屋を、創造魔法で整えておこう。僕は部屋を出て庭へ向かうと、ラテがチェアに腰かけて、まったりしていた。
「おはよう、ラテ。チェルシーが置いていった転移鏡の部屋を綺麗にしたいんだけど、チェルシーってどんな部屋が好きか知ってる?」
「おはようっす。チェルシー様の好みっすか? えーっと……ピンクで、ひらひらが付いた部屋で寝てみたいって言ってたっす」
ピンクで、ひらひら? それって、お姫様みたいな部屋……ってことか? うーん、男の僕にはあんまりイメージが湧かないな。
ここは、神様に相談してみた方がよさそうだ。




