40話
――しまった、米を炊くのを忘れていたぁ。生姜焼きが美味しく出来たのに、米を炊くのを忘れるなんて……炊き立てのご飯と生姜焼きは格別。
「仕方がない。ここはレンチンのご飯を温めよう」
僕はアイテムボックスからレンチンのご飯を取り出して、ポリ袋に入れた。クッカーに水を入れて、焚き火台にかける。お湯が沸いたら、ポリ袋を入れて温める。
「何をしている?」
「ご飯を炊いていなかったので、レンチンのご飯を温めています。これを食べている間に米を炊きます」
「米を炊くのを、ノエール様、俺っちがやります」
「ラテ、ありがとう。頼むよ」
僕は取り皿と箸を置き、インスタントの味噌汁も入れようと、ヤカンに水を入れてお湯を沸かした。その横にチェルシーがやってきて話しだす。
「ノエール。転生鏡の部屋を、魔法で使えるようにしてくれない? ノエールとラテのように――なんなら可愛くして欲しいの!」
チェルシーは僕とラテの部屋を、前に見てそう思ったのだろうって。毎日来るどころか……住む気かな? それも構わないけど、夜中に訪れるのは遠慮したい。
「いいよ。後で部屋を綺麗にするよ」
「ありがとう。楽しみにしているわ」
とだけ言うと、男性の隣に戻った。クッカーの中のポリ袋入りご飯があったまったのを確かめて、皿に移す。沸いたお湯でインスタントの味噌汁をいれて、テーブルに置いた。
「食べてください。たらないご飯は、今炊いていますので、しばらくお待ちください」
ラテが二合と三合が炊けるメスティンを、焚き火の火にかけているから、両方とも二十分くらいで炊けるだろう。
「ノエールありがとう、生姜焼きをいただく」
「いただきます!」
お客さんとかしたチェルシーも、男性と一緒に食べ始めている。
「うむ。これは美味い。チェルが言っていたとおりだな」
「でしょう。叔父様も生姜焼きを気にいると思ったの。この味噌汁も美味しいし、カップラーメンも最高よ」
叔父様? ラテとチェルシーが言っていた叔父様か。ツノと尻尾が付いているが、軍服を着ているところを見て、何処かの軍人か。
――それにしても軍服は兄も着ていたが、この人が着ると、軍服が渋くておしゃれだな。
叔父様と呼ばれた男性は、器用に箸を持ち生姜焼きを食べている。
「チェルが言っていたのはほんとうであった。これは美味い。生姜というのか、それと甘辛い味付けが実にいい。この白い食べ物に実に合う。味噌汁というのもいいな」
チェルシーがご飯の上に生姜焼きを乗せたのを見て、叔父様も真似をする。ご飯にしみた生姜焼きのタレが、これまた美味いんだよなぁ。




