37話
「ふわぁ、よく寝た~」
朝からカレーをたらふく食べて二度寝。目を覚ましたら、もう夕方だった。まだ眠っているチェルシーとラテを起こさないよう、そっとランタンに火を灯し、ライトもつけて辺りを明るくする。
「お、もう夜っすか⁉︎」
気をつけて歩いたつもりだったけど、耳のいいラテには聞こえたようで、目を覚ましてしまった。その声につられて、チェルシーも目を開け辺りを見回した。
「え、嘘、もう夕方? このエアーベッドが気持ちよすぎて……つい寝ちゃった」
「おはよう……お腹すいたね」
「おはようございます。腹ペコっす」
「おはよう。そうね、お腹空いたわね」
寝起きの髪を手ぐしで整えながら、チェルシーが慌てて身支度を始める。僕は大きなあくびをひとつ。夜ごはんは、カップラーメンにしようかな。
そう決めて、アイテムボックスをごそごそ探って、大盛りのカップラーメンや焼きそばを取り出す。前世でネット通販のバラエティパックを買ったおかげで、種類は豊富だ。
「これ、初めて見るっす!」
ラテが目ざとく焼きそばを手に取る。それは僕のお気に入りでもあるが、ひとつしかない。ラテから一口もらおうか、半分こにしようか、それとも譲ってあげようか……ちょっと悩む。
「あっ、ラテずるい! 私もそれ食べたい。でもひとつしかないみたいだから、みんなで分けて、他のを食べましょう」
「それはいい案っす。みんなで分けるなら、俺っちは味噌ラーメンにするっす」
「私はこの醤油ラーメンにするわ」
「僕も醤油にしようかな。お湯を沸かしてくるから、ちょっと待ってて」
「「はーい!」」
火を落としていた焚き火に薪をくべ、再び火を起こす。ヤカンに魔法で水を注ぎ、火にかける。足りない分は鍋にも水を張って焚き火台へ。
薪のはぜる音と、ゆらめく炎が心を和ませる。近くにチェアを置いて腰を下ろすと、隣にラテが椅子を持ってきて座った。手には、しっかり味噌ラーメンのカップを抱えて。
――ラテは癒しよりも食い気かな? いや、今の僕も同じだけど。
しばらくして、ヤカンと鍋の水が沸騰した。みんなでカップラーメンや焼きそばのフタを開けてお湯を注ぎ、三分待つ。
「そろそろ三分かな? 僕は中で、焼きそばのお湯切ってくるね」
僕が湯切りをしている間に、ラテはみんなのラーメンを準備してくれていた。
「ラテ、ありがとう」
「いいっすよ。さあ、食べましょうっす!」
「ああ、食べよう」
「初めてのラーメン! あっち! ……んん? この細い麺が、すごく美味しいわ」
「うん、美味しいね。でも火傷には気をつけるんだよ」
夜の静けさの中に、ズルズルと麺をすする音が響く。
「つるつるの麺に、味噌のコク、ピリッとした辛味がたまらないっす!」
カップラーメン慣れしているラテは、スープまでしっかり飲み干した。チェルシーも僕も同じように飲み干し、空いた容器に焼きそばを三等分して分け合う。
ラーメンとはまた違う焼きそばの味に、みんなが驚き、「美味しい、美味しい」と声を揃えて完食した。
食後はしばらく休憩して、みんなで使った調理器具や食器をキッチンへ運び、僕が洗い、ラテが流して、チェルシーが風魔法で乾かしてくれる。
「これで、洗い物は全部かな?」
「はい、終わりっす」
「片付いたわね」
「ありがとう、ラテ、チェルシーご苦労さま」
僕は食器をアイテムボックスにしまい、焚き火の火を消しにいく間、ラテはチェルシーに屋敷の中を案内していた。
――そういえば、転移鏡を置くって言ってたっけ。奥の部屋を見にいったのかな?
しばらくして、チェルシーとラテが戻ってくる。
「ノエール、空いてる部屋に転移鏡を置かせてもらったわ。ありがとう。今日はこれで帰るわね」
そう言うと、来たときのホウキは出さず、そのまま屋敷の中へと歩いていく。……どうやら転移鏡で帰るみたいだけど、なんだか不思議な感じだな。




