34話
僕はフライパンに油を引き、凍ったままのカツを入れて、焚き火の端にかけた。まずは弱火でじっくり火を通すためだ。カツの中まで温まってきたら、火力の強い中央へと移す。
――焦げないように気をつけないと。
フライパンの中で、カツがパチパチと音を立てながら、こんがりと揚がっていく。揚がったカツをまな板に取り出し、食べやすい大きさに切ってから、別の皿に丁寧に並べた。
「ラテ、チェルシー、カツが揚がったよ。ご飯とカレーは少ししか残ってないけど、一緒に食べよう」
僕が先にカツカレーをよそい、それを見たラテとチェルシーも真似をして、三等分にしたご飯にカツを乗せてカレーをかける。
「まあ、これはまた、美味しそうね」
「絶対に美味いっす!」
「さぁ、カツが熱いうちに食べてね」
「「はーい」」
僕もカツにかぶりつき、カレーを食べる。
サクサクに揚げ焼きされたカツと、カレーの相性は抜群だ。はぁ~……。揚げたてのカツって、どうしてこんなに美味しいんだろう。
残りの冷凍のトンカツはあと二、三枚、次はカツ丼にしよう。付け合わせはジャガイモの味噌汁と、タマネギのサラダにしようかな。
そうだ、さっき収穫を終えた畑に、明日ジャガイモ、ニンジン、タマネギを植えよう。
それらの野菜が育てばポトフ、肉じゃが、フライドポテトも作れる。僕って……カツカレーを食べながら次の献立を考えるなんて、どんどん食いしん坊になってる気がする。
「カツカレーも美味しかったっす! ごちそうさまでしたっす」
「ごちそうさま、美味しかった」
「ごちそうさま。おいしかったね。デザートは苺だよ」
温室で採ってきた苺を器に入れ、水魔法で洗い、大皿に盛り付ける。取り皿と練乳も並べると、チェルシーは苺を見つめながら、隣のチェアに座るラテに尋ねた。
「ねぇ、ラテ。この赤い食べ物は、何?」
「チェルシー様、それは苺という果物っす」
「え? これが苺? 苺って黄色じゃなかったかしら……」
ーー黄色の苺?
「ああ、それも僕が改良したんだ。食べてみて」
僕も席につき、取り皿に苺をとって練乳をかける。異世界で初めて黄色い苺を見たときは、本当に驚いた。しかも味はかなり酸っぱくて、伯爵家のコックに聞いたら、ジャムにして食べるのが一般的らしい。
ラテも僕の真似をして苺を皿にとり、練乳をかけてパクッと食べた。その瞬間、瞳をキラキラと輝かせる。
「甘い? なんすかこれ!? 苺が酸っぱくない! 甘酸っぱくて、練乳がすごく甘い!」
「すごく甘い? 練乳って?」
「練乳はね。確か、牛乳を濃縮させて砂糖を加えたものだよ」
「へぇ……すごく甘そうね」
「これがまた、苺と合うんだ! 食べてみて」
僕はチェルシーの皿に苺を数個のせた。彼女は苺を手に取り、おそるおそる口に運ぶ。そして――目を輝かせる。
「わっ、甘酸っぱい⁉︎ いつもの苺は風邪予防の飲み薬にするんだけど、酸っぱすぎてハチミツを入れないと飲めなかったの。でもこの苺なら、甘酸っぱい予防薬が作れそう……ううん。このまま食べられるから、薬にしなくてもいいわね」
チェルシーはふんふんと頷きながら、再び苺を手に取り、じっと見つめた。




