31話
畑と温室で、ジャガイモなどの野菜と苺の収穫を終えた僕たちは、ラテが起こしてくれた焚き火でカレーを作りはじめた。
「ラテ、野菜お肉を切るから待っていて」
「じゃ自分は、焚き火の火を見てるっす」
焚き火の火をラテにお願いして僕は、まな板の上で、採れたてのジャガイモとニンジンを大きめに包丁で切り、タマネギはくし切りにした。
今回のカレーのお肉は鶏肉ではなく、豚肉を選んだ。
「よし、野菜とお肉が切れた! ラテ、フライパンで豚肉と野菜を炒めてくれる?」
「わかりましたっす!」
油を引いたフライパンで、ラテが豚肉と野菜を炒めていく。お肉に焼き目がつき、玉ねぎに火が通ったところで厚手の鍋に移して、魔法で出した水を加えてことこと煮込む。
「ノエール様、これはポトフとは違うんっすか?」
「ポトフ? ああ、作り方は似てるけどね。カレーは野菜が柔らかくなったら——これ、カレールウを入れるんだよ」
いつも使っている、カレールウの箱をラテに見せると、ラテはそれを受け取りくんくんと匂いを嗅ぐ。初めてのスパイスの香りに驚いたのか、ぱっと瞳を見開いた。
「このカレーのルウ、とてもいい匂いがするっす! こんなにい匂いの、カレーは絶対に美味しいはずっす!」
「ふふ、期待していいよ。絶対に美味しくなるから」
ニンジン、ジャガイモに串を刺して、野菜が十分に煮えて柔らかくなったタイミングで、カレールウを加えてさらに煮込んでいく。ルウを入れた鍋をラテに任せて、僕は米を炊くことにした。
三合炊きのメスティンを、アイテムボックスから取り出す。……ご飯は三合炊けばで足りるかな? アイテムボックスの中には、前に使っていた炊飯器も入ってはいるけど、ここには電源がない。なら、二合炊きのメスティンも使おう。
アイテムボックスからポケットコンロ、固形燃料、風防を取り出し、ほったらかし炊飯の準備をする。三合炊きのメスティンには無洗米と水を入れて焚き火にかけ、二合炊きのほうは同じように米と水を入れたあと、ポケットコンロにセットして固形燃料に火をつける。あとは火が消えるまで放置でオーケー!
「あとは、米が炊けるのを待つだけ!」
米の準備を終えた僕は、カレーを任せたラテはというと、鍋の前で楽しそうにオタマを回しながら。
「カレー、いい匂いっす~。早く食べたいっす~。美味しくなぁ~れ! 美味しくなぁ~れ!」
と、なにやら呪文を唱えている。その口元は、すでにヨダレでテカテカと光っていた。




