30話
近くの畑に向かう途中、僕の頭の中はカレーでいっぱいだった。鶏肉のカレーもいいけれど、豚肉のカレーも捨てがたい。正直、カレーは毎日でも食べたいくらい好きだ。
「カレー! カレー! どんな食べ物かは知らないっすが、ノエール様の料理は~どれも美味しいっす~! 最高っす! 早く食べたぁいっす!!」
「僕も食べた~い! 早く食べたい~!」
謎の歌を口ずさみながら、スキップする僕とラテ。どうやら彼も、カレーの虜になっているらしい。
中辛、甘口のカレー粉に、鶏肉と豚肉。どれもスーパーの「肉の日」に多めに買って冷凍しておいた。揚げるだけの冷凍カツも、フライパンで揚げ焼きにすればすぐ食べられる。
――安いときに、スーパーで買いだめしておいて、ほんとによかった。
テント近くの畑に着くと、僕はアイテムボックスを開いて、大きめのプラスチックの箱を取り出す。これに、今から収穫するジャガイモ、ニンジン、タマネギを入れるつもりだ。この時期なら、土を落とさずそのまま箱に入れて、直射日光を避けておけば長持ちする。
もし、気になったら、アイテムボックスに入れておけばいいし。いまから収穫するジャガイモ、ニンジン、タマネギの葉っぱも食べられるけれど、今回は土に埋めて肥料にすることにした。
ラテが畑で、ジャガイモの茎を引っ張ると、ごろっとしたジャガイモが獲れる。
「ノエール様! 見て、見て、立派なジャガイモっす!」
「ほんとだ、大きいね。そのくらいの大きさなら、じゃがバターにするのもいいかも」
「じゃがバター? 食べたいっす!」
「じゃあ、お昼にカレーと一緒に作ろうか」
ラテの「緑の手」と魔法のおかげで、立派なジャガイモ、ニンジン、タマネギが収穫できた。
ジャガイモ、ニンジン、タマネギの収穫を終えた僕達は次に屋敷の裏にある温室に向かった。コーヒー豆を植えるのはまた今度にしたのは……冷蔵庫の奥の奥にあったのだろう、プラスチックの容器と中で干からびた苺をふたつぶ、アイテムボックスをあさっていて見つけた。
――うっ、かりかりに干からびた苺だ。大切に食べようととっておいて、忘れたんだな。
僕は「ごめんね」と謝り、魔法を使い苺を種にして、直したばかりの温室に植えた。その苺も食べごろ、カレーの後のデザートにする。
――水洗いして、そのまま食べてもいいけど、やっぱり練乳をかけて食べるか?
異世界にはない苺の、甘酸っぱい味を思い出して、にんまりしてしまった。




