29話
才能がないと伯爵家を追い出され、辺境地のここに来てはや五日……屋敷の外見はまだボロ屋敷だけど。トイレ、お風呂、キッチンは新品のように綺麗で、庭にキャンプができる。
そのテントの近くには、細長く直線状に土を盛り上げて、種を植えた――ジャガイモの畑、ニンジンの畑、タマネギの畑がある。まぁ、畑に蒔く肥料がないから、いつ野菜が収穫できるかわからないが。毎日、魔法の訓練をしながら水を撒き、のんびり育つのを待っている。
⭐︎
早朝、エアーフレームテントから出てきた僕に、僕よりも早起きのラテは慣れた手付きで、焚き火台に火をつけていた。
「ラテ、おはよう」
「ノエール様、おはようございます。今日も、いい朝っすね」
「ああ、いい朝だね。それにしても、ラテはいつも早起きだね。畑と温室はもう見た?」
「はい、見てきたっす。はぁ~早く俺っち、カレーという食べ物が食べたいっす!」
「カレーかぁ。僕も早く食べたいよ。さてと、僕も畑と温室を見てこようかな」
「はい。いってらっしゃいっす」
近くの畑に向かい、いつもの様に眺める。うーん。いつ見てもジャガイモの畑、ニンジンの畑、タマネギの畑ばいいなぁ。早く、芽が伸びて……って、えっ、うそだろう?
――種を植えて、まだ三日、四日ぐらいしか経っていないのに、もう野菜が育っている⁉︎
僕はジャガイモの畑に入り、青々と育つジャガイモの茎を引っ張った。なんと盛り上げた土の中から、ゴロゴロとした立派なジャガイモが五つも収穫できた。
「な、なんて、立派なジャガイモなんだぁ!」
――これって、もしかしてラテの魔法?
僕はテントは戻り、焚き火台の前にいるラテに聞いた。
「ラテ、早く野菜が収穫ができるようにって、もしかして魔法を使った?」
「はい、使ったっす! 毎日、ノエール様のご飯で魔力が有り余るので、畑と温室に使いましたっす。早くカレーも食べたいっすが。温室に植えた、苺という果物も気になっているっす」
「なに、苺も食べれるのか? ラテ、なんて、君は優秀な相棒なんだ! いまから野菜と苺を収穫して、カレーを作ろう!」
「カレー⁉︎ 早く、野菜と苺を収穫しましょう、楽しみっす」
僕と、ウキウキなラテは畑と温室へと向かった。




