27話
今日の天気も良く、雨の心配はなさそう。
ラテと一緒に、庭に出た僕は枯れたバラを集めるため、アイテムボックスの中から軍手を取り出し、それをはめて枯れたバラを集めはじめる。
――枯れていも、棘が凄いな。
僕の隣で、ラテも僕といっしょにバラ集めを手伝おうとしたが、彼の小さな手がバラの鋭い棘で怪我をしそうなので断った。僕を手伝えないと悲しそうなラテに「バラ集めが終わったら、大変だぞ」と笑う。
「ん? 大変っすか」
「ああ、ラテには魔法をたくさん使ってもらうから、覚悟してね」
ステータス画面で見た、ラテが使える『緑魔法』と『緑の手』が気になっている。その魔法らを使えば、畑が簡単に作れるんじゃないかと思った。
――だけど、あれもこれもとお願いして、ラテに無理はさせないようにしないと。
「ノエール様が俺っちの魔法が必要? やった! 昨夜から力が有り余っているっす。ノエール様、容赦なく魔法を使います!」
キラキラと瞳を輝かすラテ。そうだった、僕のご飯を食べたラテと、チェルシーの能力地が上がっていたはず。
――チェルシーは森に帰ってから、大丈夫だったかな? 魔法をぶっ放してなきゃいいけど。
「でもラテ、無理せずに魔法を使うんだよ」
「わかってますっす。俺っちの緑の手はかなりいいすっよ。チェルシー様もそう言っていましたから」
「そう言うと期待しちゃうぞ」
「期待してくださいっす」
ラテと会話しながら、枯れたバラを全部隅に集めた。これは後で種を取るとして、ここからが本番――この土地を畑にする!
「この辺にジャガイモを植えて、こっちはニンジン、玉ねぎかな? 作り過ぎてもいけないから、ラテと食べれる分だけ育てるかな」
畑が終わったら次は温室を修繕して、コーヒーの種を植える。今日はそこまでできればいいかな。僕が計画を練っている横で、ラテはツカツカとジャガイモを植えると言った場所の前に立つ。
何をするのかと眺める僕の前で、ラテは両手を上にあげた。
「ノエール様、いまから魔法を使うっす。『緑の手』」
そう唱えると、手を挙げたラテの後ろに巨大で、透明なラテに似た手がニョキっと現れ、耕す前の固そうな土をばふんと叩いた。
「おい、おい、おい、嘘だろう⁉︎ 硬そうだった土が一瞬でふんわりしたぁ⁉︎」
ラテはその土を手で触り、ふむふむ頷く。
「ノエール様。さすが、バラを植えていただけあって、この土、なかなかいい土ですね。いい野菜が育ちますっす」
そして農家ばりの言葉。
「いい野菜が育つ? って……いや、ラテの、その能力は凄すぎだ! あんなに固そうな土が、一瞬でふんわりしたし、魔力の使い方が上手い!」
「えへ、そおっすか。うへへ、褒めてもらえて嬉しいっす。うおおぉ、やった! ノエール様に褒められたっす!」
るんるんと喜びの舞を踊り「俺っち、他の土地もやっちゃうっす!」と『緑の手』を使い、ニンジンと玉ねぎを植える場所も、同じように土を柔らかくしていった。




