26話
朝食にスクランブルエッグをたっぷり乗せたパンをお腹いっぱい食べて、満足した僕とラテは、キッチンで昨日使った食器やフライパンの片付けを始めた。
――まだ直す前の部屋に新品のキッチンがぽつんとあるのは変だと思って、直した後に他の部分も整えたけど……。木製の二人掛けの食卓テーブル、真っ白なフローリングと壁紙、食器棚――どこからどう見ても、昔の僕のキッチンだ。
「おお、ノエール様! この食器洗い用のスポンジと洗剤、とってもよく汚れが落ちて便利ですっす!」
ラテは隣で踏み台に乗り、楽しそうに泡を立てながら食器を洗っている。
「だろう。洗い終わったら、流すからこっちに置いてね」
「はいっす!」
ラテが洗い終えた食器を僕が流すと、排水口が魔法の光できらりと一瞬輝いた。クリーン魔法がちゃんと働いているようだ。片付けが終わったら、庭に出て畑をいくつか作るつもりだ。
――まず植えるのは、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンがいいな。一応この異世界にもいろんな野菜はあるけど、色と味が微妙なんだよなぁ。せっかくなら、美味しい野菜が食べたい。
それらが育ったら、カレー粉と肉もあるし、ずっと食べたかったカレーを作ろう。ラテはカレーを見るのは初めてだろうし、驚く顔とおいしそうに食べる顔が見たい。
作るなら、ガッツリカツカレー、唐揚げカレー、チーズカレー……どれも捨てがたい。早くカレーが食べたくなって、僕はラテに声をかけた。
「ラテ、この片付けが終わったら、庭に出て畑を作ろう」
「畑っか? 俺っちもお手伝いしまっす!」
「じゃ、一緒に作ろう!」
「はいっす!」
この屋敷に来たときから、この場所に畑を作ろうと思っていた、枯れたバラの残る庭へと僕たちは向かった。




