24話
日も暮れ、辺りがすっかり暗くなった。チェルシーは家で待っている、ほかの使い魔のことを気にして、帰ると言った。
「ごちそうさま。今度は、私も何か持ってくるわね」
「ああ、気をつけて帰って」
「チェルシー様、気をつけて帰るっす!」
えぇと頷き、彼女は来たときと同じようにホウキにまたがり、ふわりと空へ舞い上がる。そして「ライト」の魔法を唱えた……が。予想を超える巨大な光の球が、チェルシーのまわりに浮かんだのだろう。
「えっ、うそ……巨大な光⁉︎ 私、ライトの魔法を失敗しちゃったの? よし、もう一回!」
と彼女の、焦り混じりの声が空から聞こえてくる。チェルシーは魔力の調整が上手くいかなかったようだ。
ーーあれって、僕がだした食事のせいかな? ……それについては明日、神様に聞いてみよう。
彼女は一度ライトの魔法を消して、もう一度唱えたると、今度は小さな光がチェルシーの周りをふんわり囲んだ。
「よかった。今度は上手くいったわ。……ノエール、ラテ、またね!」
空から手を振り、彼女は森の方角――自分の家がある方向へと飛んで帰っていった。
僕たちはチェルシーを見送り「今日の片付けは、キッチンを直してからでいいや」と、アイテムボックスから蓋付きのコンテナボックスを取り出して、蓋を開ける。
「ラテ、洗い物はこの中に入れて」
「了解っす!」
テーブルとチェアをたたみ、料理に使ったフライパン、スキレット、食器などをコンテナボックスにしまい、たたんだテーブル、チェアといっしょにテントの外に置いた。
――今日はもう、テントの中で休むから、焚き火は消すかな。
焚き火の薪を燃やしきり灰にした。火が消えたのを確かめて、僕はエアーフレームテント――「空気で張る簡易テント」の中に入りベッドに寝転ぶと、ラテも付いて入りそばにやって来て頭を下げた。
「ノエール様、今日は僕に新しい名前をくださり、ありがとうございました。夕飯はとても美味しく、楽しい時間をありがとうございますっす。ノエール様、これからもよろしくお願いしますっす」
「ラテ、こちらこそよろしくね。ふうっ。今日は疲れたし、いっしょに寝よっか」
「はい、寝まっす!」
僕は目をつむり「今日は色々あったなぁ」と考える。
何も出来ないと屋敷を追い出され、辺境の地にやってきた。はじめは一人でのんびりしようと思っていたけど、使い魔のラテ、魔女のチェルシーと出会い楽しかった。
――明日はキッチンの直しと畑をやらないと……疲れていたのか、横になるとすぐ眠ってしまった。




