22話
「まずはじめに、このポリ袋の中に卵と牛乳、それからホットケーキの粉を入れて揉むんだ。いま準備するからね」
「わかったっす」
「楽しみ!」
僕はホットケーキを作る前に、充電が切れかけていたライトを新しいものに取り替えた。明るくなった焚き火の前で、卵と牛乳、ホットケーキの粉を入れたポリ袋を二人に渡し、揉んでもらう。
次にホットケーキを焼く準備として、スキレットを人数分取り出して、さらに焼くためのバター、メイプルシロップ、フォークとナイフ、お皿をアイテムボックスから出す。
隣で楽しそうにポリ袋を揉む二人の姿を見ながら、僕も自分の袋を揉む。そして、耐熱グローブを手にはめて、スキレット三つを焚き火の上に並べた。
――そろそろ、温まったかな?
スキレットが十分に熱くなったのを確かめてから、ナイフでバターをひとかけら切り取り、中に放り込む。ジュージューと音を立ててバターが溶け始めるのを見て、スキレットを鍋敷の上に置いてしばらく冷ます。
――よし、準備は整った!
「ラテ、チェルシー、こっちに来て」
二人を呼び寄せて、ハサミでポリ袋の角を切ってスキレットに生地を流し込む。僕が見本を見せると、二人は不思議そうに眺めた後、楽しそうにうなずいて真似をした。
パンケーキの生地をスキレットに流したら、焚き火に戻して焼く。
「わぁ、とても甘い香りがする」
「はい、いい匂いっす」
「パンケーキの焼ける匂いは、いつ嗅いでいいね」
パンケーキの焼ける甘い香りが周りに漂う。
僕はヘラを持ち、ぷつぷつしてきたらパンケーキひっくり返すと、きれいに焼けたパンケーキが現れた。
「おお、いい、きつね色だ!」
「美味しそう、早く食べたいわ」
「俺っち、我慢できないっす」
「危ない! ラテ、早まるなぁ! 火傷してしまうぞ」
今にも食べ出す勢いのラテを止めて、みんなのパンケーキもひっくり返して、焼け具合を見守った。
――いい具合に、焼けたかな?
スキレットをそのまま鍋敷を置いたテーブルの上に置いて、バターとメープルシロップを上から回しかけた。パンケーキの上で、乗せたバターが溶けはじめる。
――いつ見てもパンケーキは食欲をそそる、
「さぁ、熱いうちに食べよう! あ、火傷には気をつけてね」
「わかってるわ、いただきます!」
「たまらないっす、いただきますっす」
フォークとナイフを持ち、パンケーキを一口に切って食べる。ポリ袋で作る簡単なホットケーキだけど、久しぶり食べた――ふわふわ、甘いパンケーキに気分があがってグッと出そうになった涙を堪える。
――そうか、僕は……ハハ、今更気付いても、追い出されて離れてしまった。僕は「大丈夫」だと自分に言い聞かせていたけど、ずっと寂しかったんだ。ほんとうは、父上、母上、兄、弟と仲良くしたかったんだ。
側で楽しそうに、パンケーキを頬張る二人を見て、僕は
「ラテ、チェルシー、ありがとう。今日は……楽しいな」
と、いまの気持ちを言葉にした。
二人は
「えっへへ、俺っちもっすよ!」
「私も、楽しかったわ」
楽しそうに笑ってくれて、僕の心はほっこりした。




