20話
チェルシーの話って、ようするに僕が魔法を使うと体が光るということだ。伯爵家にいたころは、誰にも気付かれないように魔法を使っていたから……気付かれていないはず。
「ねぇチェルシー、魔法を使った僕の体って、どれくらい光っているの?」
僕が聞くと、チェルシーは食事をする手を止めた。
「それはもうピカッて、眩しいくらい。私が来るときに使っていた、ライト魔法の……そうね、百倍かしら?」
「あれの、百倍? 僕が光っているのか……ハハ、まじか」
「それは、まるで、お日様のようにピッカピッカっす」
と、ラテは両手で目を隠しながら言った。
――あぁ、なるほど。
さっきトイレやお風呂、キッチンを魔法で直してたとき、ラテがやたらよそ見してたのは、この屋敷が珍しいからじゃなくて……僕が太陽みたいに眩しかったから、か。
だとしたら、今のところ僕の魔法を見たのはチェルシーとラテの二人だけ。でも、魔法が使える誰かに見られたら……目をつけられる可能性がある。
――それは、ちょっと面倒だな。
「チェルシー、この光るのって、どうすれば治る?」
「訓練すればいいと思う。昔、叔父様も魔力量が多すぎて、どんな魔法を使ってもピカピカだったの。でも、師匠と一緒に訓練して、ちゃんと抑えられるようになったわ」
「治るんだ。じゃあ僕も、その訓練をすれば……。具体的に、どんなことを?」
「そうね……ノエールは「魔力制御」と「魔脈」の訓練をした方がいいわね。魔力の流れをイメージして、通す量を意識的にコントロールできるようにするの」
「魔脈?」
「ああ、「魔脈」っていうのはね、体の中を流れる魔力の通り道のことよ」
「……体の中の魔力の通り道か。なるほど。光を抑えるに、魔力制御と魔脈の訓練かぁ……」
一人でやるには、ちょっと難しそうだなと思って腕を組んで考えていると、チェルシーが提案してくる。
「……まぁ、ラテも一応、教えることはできると思うけど。私がしばらくここに通ったほうがいいかしら? そうなると、あれとアレを早く納品しないと……」
何かをぶつぶつ言いながら、考えるチェルシーに、
「チェルシー、無理はダメだよ。こっちはのんびりやってるし、時間もあるから、ゆっくりでいいよ」
とやんわり断る。
だって、チェルシーが請け負った仕事を疎かにしたら信用に関わるし、次の依頼に響くかもしれない。それに僕には固有スキルの「おしえて、神様」があるから、わからないことは神様に聞けばいい。
「あら、そう? なら……魔法を使うとき、魔脈を意識してみて。それと、私みたいに魔法の媒介に「魔法の杖」を使ってみるのも手かもしれないわね」
そう言って、チェルシーは水色の石が光る魔法の杖を、手の中に取り出してみせてくれた。
――おぉ、あれが本物の魔法の杖⁉︎
なかなかカッコいいなぁ。あとで創造魔法で、試しに作ってみようかな……。




