17話
――焚き火の火もいいけど。調理をするから、もう少し灯りがあってもいいかな?
充電式のライトを何個か、アイテムボックスから取り出した。
次に、僕はさっき考えた夕飯の献立通りに作るため、開いたままのアイテムボックスから調理に必要なフライパン、菜箸、まな板、包丁――それから生姜焼き用の豚ロースと玉ねぎ、生姜焼きのタレを取り出す。
米は三合炊きのメスティンで炊き、味噌汁は手軽に即席のもので済ませよう。前世の冷蔵庫に残っていた白菜は、塩昆布と和えて、ポリ袋で浅漬けに。
――えっと、三合炊き用のメスティンと米、即席の味噌汁、白菜と塩昆布。炒め油、シェラカップを出せばいいかな?
道具を準備して、隣で待機しているラテに話しかける。
「さぁ、夕飯を作ろうか」
「かしこまりましたっす」
僕は三合炊きメスティンに、三合分の米と水を入れて焚き火にかけた。こうしておけば料理が出来上がたときに、ご飯が炊けているだろう。次は白菜を細く切って、ポリ袋の中に塩昆布と入れて軽く揉む。
「ラテ、この袋を軽く揉んでくれる?」
「はい。この袋を揉めばいいんですね。お安いご用っす」
モミモミと、白菜と塩昆布入りのポリ袋を揉むラテの隣で、玉ねぎと豚肉を食べやすい大きさに切った。メスティンをかけた隣にフライパンを焚き火の上に置いて、油をひき豚肉を焼いて色が変わったら玉ねぎを入れて焼き、生姜焼きのタレをまわしかけて生姜焼きの出来上がりだ。
生姜焼きのタレは使い切ったら終わりだけど、冷凍の肉もあるし、後一回は生姜焼きが楽しめるだろう。
「ほぉ、嗅いだことがないけど、とてもいい匂いっす~。早く食べたい」
「ああ、この生姜焼きの匂いはたまらないね。そろそろ、ご飯も炊けたかな?」
メスティンを火から下ろしてひっくり返し、タオルに包んで十五分ほど蒸す。フライパンで作った生姜焼きを焚き火の端に置いて、空いたところに水を入れたヤカンをかけた。
着々と進む夕飯……たまらない匂いと、視覚で僕のお腹は限界に近い。
――伯爵家にいた頃は、こんなにお腹がすいた感じはしなかったな。やっぱり、自分で使っているからかなぁ?
「十五分だったね、ご飯にしよう」
「はいっす!」
テーブルの真ん中に、生姜焼きのフライパンをドンと置いた。沸いたヤカンのお湯で即席の味噌汁を入れたマグカップにそそぎ、白菜の浅漬けを皿に出して、シェラカップに山盛りのご飯をよそった。
「出来た! ラテ、食べよう!」
「早く食べたいっす」
料理が乗ったテーブルをアウトドアチェアで、ラテと囲み「いただきます!」と食べようとしたとき――
「なんですか、このお腹が空くいい匂いは? おや? 前からあった、誰もいないボロ屋敷に灯りがついてる?」
と、何処からか女の子の声が聞こえてきた。




