16話
壊れた浴槽の近くにある、くすんだ水と火の魔石。お風呂を使うとき、その魔石に魔力を流して、浴槽にお湯を張っていたんだな。
なら、魔石はそのままにしてお風呂を直そう。
実は、風呂にはちょっと憧れがあった。
転生前に海外映画を見て、いつかはその浴槽に浸かってみたいと思って、よくネットで見ていた。
――猫足のバスタブだ!
お風呂を見て黙ってしまった僕の足元で「どうするっす……?」と不安げな目を向けてくるラテに、僕は「大丈夫だ」と小さく頷いた。
――よし、はじめるぞ。創造魔法で憧れを再現だ!
「ラテ、今から、お風呂を直すね」
「はい、お願いしまっす」
魔法を発動し、猫足バスタブのある風呂を創造する。
水と火の魔石はそのままにして、水色のタイルの床と壁、真っ白なバスタブ、金色の猫足……。
洗面所も近くに設けて、お風呂のイメージが固まったところで魔法を使う。僕の体が魔法を使用したことで光り、創造通りのお風呂が出来上がる。
「おお! 見たことがない風呂? っす」
始めて見たお風呂にはしゃぐラテと、自分でも満足のいくお風呂の仕上がりに、僕は大きく頷いた。
「すごくいい~。あとはトイレ、お風呂を綺麗に保つためには、どうすればいいかな?」
――おしえて神様、トイレとお風呂を綺麗に保つためには、毎回クリーン魔法を使えばいいですか?
《正解! クリーンの魔法は、使い魔の子も使えそうです。毎回サッとかければ、新品同様に戻ります》
――なに、新品同様⁉︎ それはいい。神様、ありがとう。
でも気はになるから、一週間に一度は掃除した方がいいかも。運動にもなるからね。次はキッチンの修繕だと、ラテと一緒に向かおうとしたけれど、日はすっかり暮れて辺りは薄暗い。
僕はアイテムボックスを開いて、中から充電式のランタンを取り出して、灯りをつけた。
「ラテ、キッチンを直すのは明日にして、お腹も空いたから、そろそろ夕飯にしようか」
「ご飯ですか? いいっね。俺っちも手伝います」
「それは助かるよ。じゃ、一緒に夕飯を作ろう」
屋敷を出て僕達はエアーフレームテントに戻り、消した焚き火にもう一度火を付け、夕飯作りを始めた。




