14話
焚き火の火を消して、僕達は屋敷へと入る。ラテに「好きな部屋を教えて」と言うと、彼は楽しそうにあちこち部屋を見回り。埃が乗ったベッド、穴が空いたボロボロなカーテンが付いた小さな客間を見て、ここがいいと話した。
「ノエール様、俺っちこの部屋がいいです」
「ラテはその部屋だね。だったら僕は隣にしようかな? その隣の倉庫をキャンプ道具入れにするか」
あとは、キッチンとトイレ、お風呂はすぐに使えるようにしたいな。今トイレをしたくなったら、キャンプ用に買った、防災用の簡易トイレが二つあるから急にもよおしても困らない。
この屋敷のトイレやお風呂、キッチンも、僕がいた世界に近い見た目をしている。この世界には魔法があるからだろう。
だが、ここで問題なのはそれらを動かす魔物からとれる、水を流すために必要な水魔石、火を起こす火の魔石、トイレ後に使う浄化石――それらを持っていない。
冒険者になって、魔物を狩って魔石を手に入れる手段もあるけれど、どうせなら、魔石がなくても使えるようにしておきたい。
――一応考えてみて、どうしようもなかなったら、ここは神様に聞けば解決するかな?
創造魔法で、僕達の部屋を直してから聞こうと決めて、ラテの部屋から魔法で修繕したが。僕の創造があれなのか……この部屋に元からあった分厚いワイン色のカーテンから。転生前に使用していた、爽やかな青いカーテンとレースカーテン、パイプベット、水色のソファとローテーブル、真っ白な壁紙とフローリングを生み出してしまった。
――あ、しまった。これじゃ、全然、異世界らしくない!
「おお、素敵な部屋っす」
まぁ、ラテが気に入ってくれたのなら、それでいいっか。次に僕の部屋も同じように修繕する。……十五年も過ごした部屋を思い出さず、転生前を思い出したのは、久しぶりに見たキャンプ道具のせいかもしれない。アイテムボックスにしまっていたキャンプ道具には、どれも思い出が詰まっていた。
――だからといって、転生前に戻りたいとは思わない。毎朝の満員電車に乗らなくていいし、なにより会社のデスクに積み重なった、書類の山を見る必要もない。今はここで、のんびりキャンプができれば、それでいい。




