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第3話『おっさん、王宮への御用改めについて聞く』前編

更新停止宣言をしましたが、ちょっとだけ……。

短い上に主人公が出てこないので、サブタイトルに無理はありますが、そこは見逃してください……!

「御用改めである!」


 その日、テオノーグ王宮門前に天網監察官の声が響いた。

 十名で編成された監察隊はすべて帝都所属のエリートたちで、マーガレットやテレーザの姿はない。

 隊員たちの隙のない所作からそれぞれかなりの使い手であることがわかる。

 シゲルが見れば問答無用で訓練所に誘い出しそうな面々だった。


「し、しばしお待ちを……」

「案内は無用だ」


 リーダー格らしき男はそう言うと、衛兵を無視して歩き始めた。


「ちょ、困りま――」


 数名いる門番のひとりが進路を遮ろうと立ちはだかったが、すべてを言い終える前に首が落ちた。

 衛兵たちのあいだからどよめきがおこるなか、隊長のすぐ後ろにいた隊員のひとりが、いつの間に抜いたのかサーベルの血振りをして刃についた血糊を飛ばす。


「無礼者。この紋所が目に入らぬか」


 彼は静かに、しかしよく通る低い声で集まった衛兵たちに告げ、腰に佩いた鞘の側面に浮かび上がる桜の紋を誇示しながら、サーベルを収めた。

 衛兵たちがたじろぐなか、天監たちは何事もなかったように歩き始める。

 監察隊が敷地内を進むにつれ、各所に配置された兵士が集まってきたものの、ひとり斬られたことがすでに周知されているのか、彼らはただ遠巻きに見守るだけだった。


「な、なにをしておるのか――」


 そんな中、王宮内からそこそこ高い地位にありそうな者が駆け出してきたが、即座に頭部の上半分が焼失した。

 下顎のみを残した、炭化した頭部からプスプスと煙を上げながら、男の死体はバタリと倒れた。

 監察隊の中に杖を掲げる者はあったが、全員歩みを止めることはなく、淡々と進んでいく。

 静かに歩く監察隊とは対照的に、衛兵たちのどよめきはさらに大きくなった。


「馬鹿な……、敷地内は魔術を封じられているはずだろう……?」


 各所で似たような声が上がった。

 王宮敷地内ではセキュリティ上の都合により、魔術の使用が禁止されている。

 にもかかわらず、隊員のひとりは魔術を行使した。

 しかも人の頭を一瞬で焼失させるような、威力の高い攻撃魔術を、である。


「あの杖に秘密が……?」

「それならいいが、もしあの桜の御紋に仕掛けがあるとすれば、ヤバいぞ」


 魔術士だけが魔術を使えるのと、全員が魔術を使えるのとでは話がかなり違ってくる。

 それぞれかなりの使い手だとしても、たかが十人。

 最悪王宮内で迎え撃てば、闇に葬れる可能性がゼロではなかった。

 しかし、それはお互いが魔術を使えないという前提の話である。

 仮にひとりふたり魔術師がいたとしても、玉砕覚悟で全衛兵が戦いを挑み、かつ王都内の兵士を呼び寄せればなんとかなるかもしれない。

 しかし自分たちは一切の魔術を使えない中、相手は攻撃魔術を始め、防御魔術から支援魔術、回復術まで使えるとなると、その戦力差は天と地ほどに開き、たとえ王都中の兵士を集めてもこの十人に勝つことはできないだろう。

 結果、衛兵たちはなすすべなく監察隊を見送ることになったのだった。


**********


「天帝はお怒りである! これよりさき、行く手を阻む者は三族まで死罪とする!!」


 王宮に入ったあとも、監察隊は淡々と進んでいった。

 本来王宮というところは防衛的な理由から迷路のようになっていることが多い。

 とくに王族のプライベート空間となると、多少慣れた者でも少し油断すれば迷子になってしまうほどだ。

 しかしそんな中を、監察隊はあらかじめ地図が頭に入っているかのように迷いなく歩いた。


 王族に直接仕える使用人たちだが、衛兵に比べて戦闘能力は低いものの忠誠心は高い。

 行く先々で、命がけで隊員たちの行く手を遮る者が現われた。

 そして十名ほどを成敗したところでうんざりした隊長は、先のような言葉を発したのだった。

 自分だけならともかく、家族にまで累が及ぶとなると、さすがの忠臣たちも二の足を踏むようだ。


「控えよ!!」


 そこに新たな声が響いた。

 通路の奥からひとりの男が監察隊に向かって歩いてくる。


「おお、エリオット殿下」

「王子、よいところに……!」


 第一王子の登場に、使用人たちが色めき立つ。

 エリオットは凜とした態度のまま、畏れをひとかけらも見せず監察隊へと歩み寄っていく。

 心強い援軍の登場に、にわかに明るくなった使用人たちだったが、王子が監察隊に近づくにつれ彼らを取り巻く雰囲気は加速度的に暗くなっていく。

 このままでは王子も斬り伏せられるのでは……? と、忠臣たちは不安に思ったが、それは杞憂に終わった。

 王子が監察隊に膝を折るという、意外なかたちで。


「お勤めご苦労様です。ここからは私がご案内します」

「お心遣い、感謝します」


 王子は立ち上がると踵を返して歩き始め、監察隊が後に続いた。

 使用人たちは、そんな彼らを唖然とした様子で見送るのだった。

と、こんな感じでたまにですがちょこっと更新するかも知れませんので、そのときはよしなに。


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