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目的の達成と帰還、そして王都観光ツアー

 当初の目的であってレアメタルをゲットした俺は後ろから付いてくるキースを若干置き去りにしつつ死霊の館のチェックアウトをするべく鍵をフロントに返しに行く。

 荷物は王子と愉快な仲間たちと会った時に一緒に持ってきていたから後は鍵を置いてさっさと帰るだけだ。


「あー、だる。本当、なんで毎回こうもクソみたいな目に遭うんだろうか……どう考えてもキースが悪い」


「まぁ、俺も大人だからよ。

否定はしないけど、ジェラルドも何かやらかす頭数にキッカリ入ってるんだから自覚しような」


 妙に達観した顔でそう告げるキースに足払いをかけてすっ転ばし、一人フロントへ急ぐ。フロントには死霊の館のオーナーであるオーランドが未だに散らかっている調度品を片付けていた。俺が叩き落とした茶器からこぼれた紅茶がカーペットのシミになっている。


「いよう、まったくもって最悪の宿だったぜ。次来ることは二度と無ぇけど、時間の経過によってマシになってる事を期待するぜ」


「いや、宿が酷いと仰りますがあなたも大概酷いことしてますからね……」


 とカーペットと俺を交互に見ているオーナー。


「まぁ、まぁ、これだけ教会のやつらに館全体をボロボロにされてたんだから変わりゃしないって!それに、何か悪そうな教会のヤツやっつけてやったから、もう変なの来ないだろ?」


 そんな事を言っているとすっ転ばしたキースがようやく到着。


「おい、ジェラルド……暴力に訴えるのは辞めようぜ……俺らもそろそろ良い歳だしさ」


「いやだって、お前殴りやすいし癖になってるから止められんよ」


「……まぁ、それに関しては不治の病気だろうから置いておくとして、オーランドさん。このキース、あなたの依頼を完了しましたよ!!」


 キラキラとムカつくエフェクトが付きそうな笑顔でドヤ顔を決めるキース。それを聞いてオーランドもつられてにっこりと笑う。


「えぇ、この宿を借りるといって国軍の方達がここを拠点にされるとは思いもよりませんでしたが、一般人が知っていい程度に情報をくれてやるとそれの詳細は聞かせて貰いましたよ。一部の教会の人達が嫌がらせを行っているのを止めて頂きましてありがとうございました」


 そう言ってオーナーはペコリと頭を下げる。そして下げた後にふと独白のような言葉をクビをかしげながら言う。


「あれ?……でも、教会の人が嫌がらせを行ったと言いましたけど、それだけでよくマクア枢機卿の一派が原因だって分かりましたね?まさか出たとこ勝負でたまたま正解だった……なんて事はないですよね?」


「え……あ、あぁ……ももも、モチのロンよ!こ、この最強剣士たるキース様が出たとこ勝負の結果論でたまたま正解を引き当てただなんて分かりやすいことする訳なななないじゃないかぁ!なぁ、ジェラルド!!」


 必死の形相で同意を求めていくスタイルのキース。オーナーの言ってることが100%混じりっけ無しの正解なだけあって焦りが半端ねぇなこいつ。


「めんどくせーから、そういうことだ、オーナー。まぁ、どうあれ結果は良かったろ?」


「……まぁ、結果が全てだからね世の中。うん、過程がどうあれキースさんありがとう」


「いやいや、俺ちゃん当然の事をしたまでさ!それでさ!報酬の話なんだけど!」


 キースが報酬の話を切り出した所でオーナーはえ?みたいな顔をした。キースも釣られるようにえ?という顔をする。俺に至っては達観した僧侶のように目を閉じる。そして続けてこう言った。


「キースよ……依頼を受けるとか言ってたけど、ギルドを通さない個人の依頼については報酬について話を付けてないで受ける依頼ってのは基本ボランティア扱いになるからな。ギルドを通さない依頼を受ける時はきっちり話合ってからやれ。というか、こんなこと近所のガキでも知ってるレベルだぞ」


 俺が当たり前の情報を伝えるとオーナーも同意する。


「うん、僕も報酬を切り出されなかったからボランティア……というか期待してなかったし雰囲気的に冗談で言ったんだと思って本気で取り合ってなかったんだよね」


「ええええぇぇぇぇぇぇ!!嘘やん!」


 慟哭しながら灰になるキース。

 っていうか、マクア枢機卿を倒したのはキースでも国軍でもなく俺だからな。報酬云々の話をしていたとしても、倒したのお前じゃねぇんだから受け取るのは俺になるだけだろ。そこん所忘れるんじゃねぇよ。


「まぁ、このアホは放っておいて、俺らは帰るから鍵返すわ。んじゃ、あばよー」


 未だに灰となって動かないキースを置いて俺は死霊の館を後にするのであった。



「おい、置いてくなよジェラルド!!」


 後ろから五月蝿いのが来た。



--オマケ--


「ようやく紫峰山と俺達の村までの中継点くらいまで来れたな。さっさとオサラバしたい所だが、暗くなってきやがった」


「んー、それじゃ今度こそ泊まるかいジェラルドー」


「あぁ、そうだな。じゃあそこらの宿に泊まるとするか」


「すみませーん、2名ですが泊まれますかー?」


「あ!お客さん!すみません!たった今“王都観光ツアー”の方々が王都に戻るとのことで、この辺一帯の宿は全て“満室”となっております」


「ぐあああああああああああ!二度ならず三度までも“王都観光ツアー”絶対潰してやるぅぅぅぅぅ!!!」


 この後めちゃくちゃ追い出された。

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