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帰還

 俺たちが必至こいて王都から村へと旅立ってから翌々日の夜も更けた良い時間(要するに深夜)に、ようやくキーロフの村に辿り着いた。行きも時間が掛かったが、やはりキースが足を引っ張ったせいで帰りが遅くなってしまった。本当は置いていっても良かったのだが、キースの親御さんに宜しく言われているので放っておくわけにもいかず………まぁ、過ぎたことはしょうがない。帰れたんだから、それで良しとしよう。

「いやっほぉぉぉぉうっ!村に帰ってこれたぜぇぇぇっ!!」

 俺は喜びのあまり雄たけびを上げる。それを顔面が土気色になったキースが虚ろな目で何か言いたげにしていた。

「まったく………とんだ時間を食わされちまったが、ようやく愛しの我が家に帰ることが出来るってのは素晴らしいもんだなぁ」

 ウキウキ気分でついついスキップをしながら俺は家路を急いだ。

 え?キースはどうしたって?

 村まで連れてきてやったんだから、あとは野垂れ死のうが知ったこっちゃ無いね。


             

―――――――――――

 スキップをしながら村の中央まで足を運ぶと、ようやく冒険者ギルドが見えてきた。流石にこんな時間(深夜)にギルドは開いていないが、とにかくこのギルドが見えてくれば家までの道のりは残り半分といったところなのだ。

「いやはや、3日程度しか王都に行ってないってのに一年ぶりに帰ってきた気がするぜー」

 何となく懐かしみながらギルドを眺めていると、突然バリンという音が聞こえてきた。

「な、なんだっ!?」

 俺はビックリしながら辺りを警戒する。

 バリンという音から察するに、何か皿のような物が割れた音だろう。

「ま、まさか泥棒かっ!?」

 こんな田舎で盗みなんぞ働いたって大して稼げないだろうにご苦労なこったと思いながら、ギルドの様子を伺う。

 すると小さいながらも人の声が聞こえてきたのだった。声を聞くに、どうやらギルド長とその妻らしい。ふむ、泥棒ではなかったようだ………けど何やってんだ?こんな時間に?

 俺はもう少し様子を伺うことにした。

            

              

            

「アンタッ!また給料を下げられたのかいっ!!駄目亭主にも程があるだろっ!!」

「な、なんだとぉっ!!誰が稼いでると思ってんだっ!!」

「アタシの稼ぎで食ってる癖に何威張ってんのよ、このクソハゲがぁっ!!」

    

―ッシュ―

            

      

―バリン―

―バリンー

―ガン―

―ガス―

―ドゴォ―(連撃が決まったような音に聞こえる)


                

―ゴン― 


         

              

―グチャ―           

           


「ぎゃああああああああああああああああああああああああ~~~っっ!!!!」


           

「………………………」


 俺はそっとギルドを後にした。


                 

――――――――――――

 家に帰ると扉に鍵が掛けられていたので、奥義その①で扉を破壊して(武道大会決勝戦で使ったアレ)家に侵入した。

 扉をぶっ壊したあたりで何事かと飛び起きてきた親父の熱烈な歓迎(拳)を避けながら自室に戻る。

「ふぅ~………まったく疲れたぜぇ~」

 見たくも聞きたくも無い村の名物(詳しくは設定と裏設定 ギルドレイド・マクシムを参照の事)に遭遇した俺は何だか一気に疲れ果ててしまった。

 王都に行くハメになってしまってから色々あったが苦労ばかりしていた気がする。

「まぁ、それでも得られた物もあったけどな」

 そう、5000万ゴールドもの大金を手に入れた俺は、これで念願の鍛冶工房を手に入れることが出来るのだ。

「ぐふふふふ………今から楽しみだぜ」

 俺は悦に浸りながら、明日は大工に工房の見積もりを出してもらおうと心に決めて寝たのであった。

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