「353話」
来週の土日は会社のイベントで不在となります。アヒィン
たぶんアマツさんが何かしら対策しているとは思う。でもアマツさんだからもしかするとワンちゃんあるんでね? と思い、とりあえず開幕会話キャンセルブレスぶっぱしてみたのだけど。
(防がれてる……?)
膜越しに前と違って健在な男の姿が見えた。
俺とクロの放ったブレスは男の前で散らされているようだ……男を中心に球状の透明な壁がある気がする。
倒すまで行かなくとも多少ダメージはいればと思ったが残念だ。
「我が名は―――」
ブレスがダメでも投げナイフはどうか? そう思い投げつけてみるが……これもあっさり防がれてしまう。
こう、ぐにっとナイフの軌道が曲がる感じに見えたので空間を捻じ曲げてるとか、そんな系統の防御なんじゃなかろうか。
クロが魔法を放ってみるがこれも結果は同じ。
男には傷一つ付いていない。
防御だけじゃなく、攻撃にも使えそうな能力だ。
実際に使われたら防ぐ方法あるのかどうか……これがアマツさんの開幕会話キャンセル不意打ちぶっぱ対策であれば良いのだけど、本当にこの男の能力だとしたら相当厄介だぞ。
「―――勇敢な者よ。ここより先に進みたくば我を倒してみせよ」
……色々考察している間に男の会話が終わっていた。
やべえな、ほぼ聞いてなかった。
名乗りを上げていたところもスルーしたから名前も分からない。
よくよく考えると前回のセリフの続きからっぽかったし、もしかすると俺らが再び来るまでの間あそこで固定でもされてたんだろうか?
そう考えると結構酷いことしてしまった気もする……アマツさんとの関係を聞くつもりだったけど、大丈夫かな? 血管びっきびきになってるし、相当ぶち切れてそうだから答えてくれなさそうだけど……。
まあ、ダメ元で聞いてみるか。
ついでだから名前も聞いてしまおう。
「えー……一点聞いてもいい?」
俺がそうたずねると、男は先を促すようにくいっと顎をあげる。
「あなたはアマツさんの知り合いか何かなので? それとも生首の関係者? あと名前聞いてなかったんでもう一度教えて貰っても……」
そこまで言ったところで、男の顔がすっごいことになった。
まちがないなくブチ切れですわこれ! 血管切れてるし!
「……我が名はキョゴウ」
しばらく何かをこらえる様に荒い息遣いをしていた男であったが、やがて落ち着いたのか俺の質問に答えてくれた。
相変わらず顔はすっごいことになっているが。
てか知らない名前だな。
てっきりアマツさんとかと同じように聞いたことのある……いや、よく考えたら生首の名前はあんま聞いたことのないやつだったな?
「アマツとイースが争い傷つき弱ったところに不意打ちを掛けるもあっさりと返り討ちにあい、土下座して許しを乞うた結果このダンジョンのゲートキーパーとして配置された者だ」
「…………?」
……んんん?
なんて? 今なんて??
不意打ちして返り討ちにあって、土下座した……?
そんなブチ切れ顔で言われても反応に困るんだけど……え、まじで言ってますの?
「嘘は付かず出来るだけ詳しく答えろと言われたのでな」
「あ、はい」
まじかよ。
そっかー、アマツさんに不意打ちねえ。
それであんだけ笑い転げてたのかアマツさん。
お仲間相手だとしたらひでえ野郎だとかひそかに思っていたけれど、誤解だったようである。
とりあえずアマツさんのお仲間ではなく、どちらかというと生首枠だなこいつ。
……生首枠かあ。
ってことはやっぱあれだよなあ。
「ええと……じゃあ一応神様? なので?」
「一応ではなく正真正銘神である」
そういうや否やキョゴウと名乗った男は、腰に手を持っていく。
手の向かう先にあるのは鞘に収まった剣である。
その手がぐっと鞘を握った瞬間、剣が抜き放たれていた。
一瞬遅れて腹に線が走り、小さな爆発と共に俺の体は上下に別れる。
「がっ!?」
泣き別れになった下半身を無理やり上半身に押し付ける。
激しい痛みに意識が持っていかれそうになるが、無理やり押さえつける。
この程度の痛みは何度も味わった。慣れたくはなかったが慣れている。
それよりもだ。
さっきのこいつの攻撃まったく見えなかった。
反応できないほどの速さで振りぬいたとかそんなんじゃない……握って、剣を抜いて、斬り付ける。最初と最後の動作だけ残して、途中を全て省略したような。そんなでたらめな攻撃だ。
「安心するが良い。人の子に対して神の力を振るうつもりはない」
男は剣を手で弄びながら、こちらを見下した目でみる。
ああ、そうかい。本気になればいつでもやれるとそう言いたいのか。
その余裕なくしてやる。




