「350話」
タイトル修正したつもりが……(´・ω・`)
「クロはすっごい強いんだよー……その顔は信じてないねー?」
「む……いや、しかしな?」
いかついお義父さんも娘には弱いのだろうか。遥さんがむーっと頬を膨らますと、お義父さんは少し慌てた様子をみせる。
ただやはりというか、娘に言われても俺が猫と一緒にダンジョンに潜っているということはにわかには信じられないようである。
「……まあ、猫ですもんね。犬とかならまだし───イデッ!?」
太郎とかみたいにでかい犬ならお義父さんも納得していたかも知れない。
クロはぱっと見はただのかわいいお猫様だからねー……と、しょうがないよねと思っていたら、俺の足にぽんとクロの肉球がおかれ。にょきっと伸びた爪がズボンをぶすりと貫通してきた。
地味に痛いやつ!
「ん、ああ。動画があったね」
俺が一体何をしたというのだ……と涙目になりながらクロの言い分を聞くと、百聞は一見にしかず証拠みせりゃ一発やろ。ということだった。
「とりあえずこの間の生放送のアーカイブですが」
「むぅ……」
幸いなことに中村のチャンネルを開けばクロが戦闘している動画はいくつもある。
ただ動画は中村が編集したものなので、一切いじっていない生放送のアーカイブを見せることにした。
最初はしっぶい顔をしていたお義父さんであったが、動画をみていくにつれクロが強い……それも尋常じゃなく強いということは理解してくれた。
「お父さん以外は驚いてないねー?」
「何度か動画みているからね」
「あ、私もみたよー」
「映画じゃなかったのねえ」
まじか。
お義父さん以外にあの放送見られてたんか。やべえ、今更だけどすっごい恥ずかしくなってきた。
SNSの垢が身内ばれしたようなもんだからな……ど、動悸が激しくなってきたぞ。
「あ、そうだ島津くんの戦闘シーンみせてもいい? ドラゴン戦の」
「え、あれ……動画あったんですね?」
「アマツさんが確保してたらしーよ」
「なるっほどー。あ、動画はもちろんいいですよ……ちょっとグロいかもですが」
遥さん的にクロだけじゃなくて、俺の戦闘シーンも見せたかったようだ。
それもがちのやつ。
あれ腕が落ちたりして、結構えっぐい動画だよなーそんなん見せて大丈夫かなー? って思ったけど、普段からあんな斬りあいしてる人だし別に平気かと考え直し、一応観覧注意でっせと警告した上でお義父さんにドラゴン戦の動画をみせたよ。
なんかすごい熱量のこもった目でみつめられたよ。
「なるほどなあ……自宅の庭にダンジョンが出来るとは。凄い偶然もあるものだ」
「あれの出現位置って最初はランダムでしたからね……色々あって今の位置に移動したんですけど」
首筋がぞわぞわする感覚から逃げるように、なんでクロがダンジョンに潜るようになったのかを庭にダンジョンが出来たあたりから話してあげた。
幸いお義父さんの興味はそちらに移ったようで、ぞわぞわ感はだいぶ収まった。
「猫がスマホを……最近の猫は凄いんだのう」
ダンジョン潜ってると頭もよくなるんですよ! ってことを証明するために、クロにスマホを操作してもらった。
なんかちょっと理解がずれている気がしなくもないけれど、クロは賢い! ってことをわかってくれたのであればそれでよし!
「クロだけじゃないかなー……」
「太郎はどうなんです?」
スマホ使ってるところを見たことないけど、一応使えるよね?
じゃないとDパッド使えないし……こっちも見たことないけど。
「くわえて走り回るねー」
「そっかー」
そっかー。
その後しばらくお喋りしながら寛いでいたけれど、さすがにそろそろ良い時間だから……とお暇することにしたよ。
お義母さんからは泊っていかないの? と言われたが、さすがに親公認? とはいえまずかろうと……まあ、無人島ですでにお泊りしてはいるのだけど……あれはノーカンだよノーカン。
まあ、それは置いといて……クロのおトイレとかもないんで、今日は帰ります。と断っておいた……そんな残念そうな顔されても困ります。ほら、お義父さんのこめかみぴくぴくしてるしっ。
刀を持ったお義父さんに追い回される……そんなイベントは発生することなく、無事家にたどり着いた。
「キャベツおいしかったねえ……って、クロは食べてなかったか」
布団のど真ん中でへそ天しているクロを構いながら、今日の料理を思い出す。
どれも抜群に米に合う料理で、とてもおいしかったが……米にあうようなおかずはクロにとっておいしいとは限らない。
現にクロは猫まんましか食べてなかったわけで。
「猫が喜ぶキャベツ料理ってなんだ……?」
……スマホで検索してみるが見つからなかった。
一応キャベツ自体は猫が食べても問題はなく、なかには好んで食べる子もいるということは分かったが……さて、どうしたものか。
クロ的にはキャベツなんぞどうでもいいとか考えてそうだけど、一切食べさせないってのもねえ?
うーむ。
「よーし、今日のお昼はキャベツ焼きだ!」
一晩悩んだ結果、俺はキャベツ焼きを作ることに決めた。
これならソースかけてないところはクロも食えるし、何より俺でも作れるのがでかい!
具材も豚肉とキャベツに粉と卵ぐらいと実にシンプルなのもよい。
とりあえずキャベツを……歯ごたえ残したいから厚めにざっくざく切っていこうかな。
キャベツがメインみたいなもんだから、そっちのほうが美味しい気がする。
ざくざくぼりざくぼりと軽快にキャベツを……んん?
「ぼり?」
なんか明らかに切る音じゃないのが混ざってた気が……ああ。
「……キャベツの芯おいしい?」
なんぞ? と思い視線を音のしたほうに向けると、後で細かく切ろうと思って避けておいたキャベツの芯をクロがぼりぼりと咀嚼していた。
うなうなと返事していたので、味は良かったらしい……。
「ん、うまいぞキャベツ焼き」
とまあそんなトラブルもあったけれど、無事キャベツ焼きは完成した。
そして味も抜群に良い。
しっかり焼いた豚肉が油が抜けてサクッとした歯ごたえで、生地はふんわりとしていて、厚めに切ったキャベツもよい感じである。
「お好み焼きより好みかも……クロさんや、おかかが飛んでるだけど」
クロも割と気に入った……のかなあ??
フンフンと鼻息荒く食べているので不味くはなかったんだろうけど。
……まあお昼にたまに作るのには良いかな? 簡単だし、美味しいし。
キャベツはまだ大量に残っているし、なくなる前にあと1~2回作るとしよう。
そしてキャベツ収穫から数日後。
「で、ったあああああ!!?」
ついに2枚目のワームカードがドロップしたのだ。
……地味にワームカードの効果で自身が焼かれるせいでかなーりしんどいものがあった……いつぞやの周回しまくってげろ吐きそうになっていたのと良い勝負なぐらいしんどかった。
だがその苦しみも今日で終わりだ。
「よぉぉっっし……これで次の階層に進める」
俺とクロのカードがそろったいま、この階層にとどまる意味はない。
げろ吐きそうだからとどまりたくない。
次に進みたいでござる。
「21階からドラゴンシリーズが続いていたけれど、次はなんだろうなあ……やべえのきそうだなあ」
ドラゴンって、ファンタジーだとかなり終盤の敵ってイメージあるよね。
それより上の敵となると……それこそボスとか? あとは今まで出てきてない天使とか悪魔とかそういうの。
神様系は……まあさすがにないだろう。
生首みたいの出てきたら泣くぞ、俺。
「とりあえず事前にポーション飲んで、龍化もしてっと」
何が出るかは分からないけど、間違いなく強敵がいる。
なので出来るだけ準備はしていく。
いざとなったらシーサーペント戦のように撤退も視野に入れておくべきだろう。
「じゃ……いくよ」
深呼吸をして早鐘を打つ心臓を沈め……盾を構えて、そっと扉に手をかける。
クロは俺の斜め後ろでいつでも動ける体勢だ。
軋んだ音を立て、扉が開き……最初に視界に飛び込んできたのは、城や教会を彷彿とさせる恐ろしく広い一面の壁や天井。
そして―――
宙に浮かぶ、妙に顔色の悪い男の姿。
「―――よくぞ」
男はこちらに視線を向けると、おもむろに口を開き……俺とクロが同時に放ったブレスに飲み込まれていった。




