347話
どうにか日曜中に投稿できましたね('ω')
寝てないからまだ日曜!せーふせーふ!
そんな思わぬところからとばっちりを受けた俺であったが、日々のワーム狩りやクロとのふれ合いによって数日経った頃にはどうにかバレンタインのことを頭の中から追い出すことに成功した。
だがしかし。
「あ、新作増えてるー」
バレンタインの魔の手はダンジョン内にまで及んでいたのであった。
なんか喫茶ルームの商品増えてるなーって思ったら、大量にチョコ製品が並んでやがりましたよ。
まじがっでむ! アマツのばかちん! 虫歯になって歯医者のお世話になれ!
「島津くんは何買うのー?」
「とりあえずクロ用にプリンと……こっちのフルーツタルトあたりを」
チョコを選ぶわけにはいかんと他のやつを探したけれど、新作がずらっと並んでいて探すのに手間取ってしまった。
普通のショートケーキとかあればよかったんだけど、ぱっと見なくてさ……って、あんなすみっこに居やがった。普通のケーキ屋さんとかなら売れ筋商品なんだろうから、いくらバレンタインの時期って言ったってもっと目立つ位置に置けばいいのによう……。
遥さんに感づかれなきゃいいけど。
「プリン食べるんだ……」
「割と好きなんですよね。本当は猫に食べさせたらダメなんですけど……あとでポーション飲むから平気だそうで」
「あー、なるほどねー」
置いといたら食われたって人は結構いそうだけど、まじであげないようにね。
うちのクロはお腹壊してもポーション飲めばなんとかなるけれど、一般的なご家庭じゃそうもいかんだろうし。
まあクロの場合……ダメっていっても勝手に冷蔵庫あけて食べちゃうし、下手すりゃってか下手しなくても自分で買うこともできちゃうわでどうしようもないけど。
「なんか新作チョコばっかだね」
「そうっすねえ」
話題がクロの話しになって安心していたら、遥さんがチョコが大量なことに気が付いてしまった。
これはもう……いくら遥さんでもバレンタインだと気が付くだろうか。
気が付くよな普通は。
とりあえず何かあっても表情に出さないよう気を張っておこう。
「ん-……あ、そっかバレンタインか」
「いわれてみればそんな時期ですね」
「おいしいチョコいっぱい並ぶから嬉しいけど、ちょっと買いにくいよねー」
「ははは……」
その後、遥さんと別れた俺は自宅に戻り、どさっとソファーに座り込んだ。
ただデザートを買っただけのはずなのに、疲れがドッと出てきたよ。
……たぶん、あの時の俺の顔は引きつっていたと思う。
世の中の男性諸君は毎年こんな気分を味わっていたのか……俺はほぼ男子校みたいな環境だったし、チョコなんぞ貰える環境ではなく、周りも貰ってなかったからそこまで気にせずに済んでいた。
だから知らなかったんだ。
「くそ……中村め」
沖縄いったら中村をボードにしてサーフィンしてやる。
「……おやつにするか」
さっきからクロが箱のふちをカリカリと爪でかっちゃいてはよ食わせろと訴えている。
あの爪がいつ俺に向けられるか分からんし、疲れたからか俺も甘いものを食べたい気分だ。
とりあえず飲み物用意して食べるとしようか。
「素直にチョコ欲しいって言っちゃう……? さすがにないよなあ」
買ってきたタルトを食べ終え、プリンの容器をてちてちと舐めるクロの様子を眺めていたが、だんだん思考がバレンタインの方へと流されていく。
仮にドストレートにチョコください! って遥さんに言って、断られでもしたら……その場面を想像すると恐ろしくて実行できそうにはない。
俺のハートはガラス製なのだよ。
「どう思う? クロ」
猫に聞くのはどうかと思わなくもないが、聞ける相手はクロぐらいしかいない……中村に聞いてもたぶん死ねええええ!とかしか返ってこないだろうし、生首は論外だ。
んで、肝心な答えはというとだ……「自分で買って食え」とのことだ。
それ、やると一番悲しくなるやつ……どうやらクロはバレンタインについて知らないか、まったく興味がないようだ。
まあたぶん後者だろう。チョコも食いたそうにはしていないしな。
……よし、決めた。
当日何も貰えなかったら、恥を忍んで思い切って遥さんに話すことにしよう。
いつまでもうだうだ悩むのはやめだやめやめ!
もうすぐキャベツの収穫手伝わないとだし、そっちに意識を集中するぞっ。
何せ収穫するのは売る商品だからな、うっかりで傷物にでもしようもんならハネ品になってしまう。
気合いれて収穫せんとね!
そんな訳で収穫当日。
「それじゃあ雪はこいつでどかすから、埋まってるキャベツ掘り起こしてそこに溜めといてくれ」
俺はじいちゃんから作業内容をふんふんと頷きながら聞いていた。
埋まってるキャベツといっても一面銀世界なので、ぶっちゃけどこに埋まっているか分からない。
まあ、じいちゃんが雪をどかしてくれるので、その下にあるってことなんだろうけど。
「そしたら婆さんがコンテナ持ってくるで、積み込んどくれ。売りもんだからなるべく丁寧に頼むでな」
「おっけー」
俺が返事をすると、じいちゃんはすぐ機械を操作しだす。
地面の雪はすぐさま除けられ……キャベツはまだ姿を現してはいない。
ってそりゃそうか、キャベツが見えるまで雪をどかしたら、キャベツごりっと削っちゃうしな。
あとは人力で傷つけないようにキャベツを掘り起こす必要がある……掘り起こす面積によるけど、結構な肉体労働な気がする。
俺のダンジョンで鍛えた肉体が役に立つね!
5%とは言え、レベルアップの影響もあるし……人間重機とまではいかないけれど、羆並みのパワーはあると思うよ。
「キャベツこんなでかかったっけ」
うおおおおっと雪をかき分けキャベツを掘り起こすが、どうも気のせいかキャベツがでかく見える。
ずっしりと重みもあるし、大きさもでかめのスイカぐらいありそう。
やっぱ気のせいじゃないよなこれ。
「肥料をあれに変えたからねえ」
「あ、そっか。こんな変わるんだねえ……1玉2kgぐらいありそう」
俺のつぶやきが聞こえたようで、ばあちゃんが俺の疑問に答えてくれた。
そっか、あれか……なんだっけ、ぐんぐんアマツになーるとかそんな恥ずかしい感じの名前の肥料。
効果自体はしっかりあるって聞いていたけれど、ここまで違うのか……味もよくなってそうだし、これに関してはアマツいい仕事してると素直に思う。
名前はどうにかならんかったんかと言いたいが。
「ほれ、これもってけ」
「ちょ、さすがに多い多い」
帰り際にお駄賃と、大量のキャベツを貰ってしまった。
どれぐらいかというと、でっけえのが10玉である。
一人暮らしじゃどう考えても消費しきれん量だ。
さすがに多いからといくつか戻そうとするが……。
「彼女におすそ分けでもすりゃええべ」
遥さんの分も含まれてたようだ。
それにしても多すぎるとは思うけど。
だって全部で20kgあるんだよ?
お店で消費する量だよこれ。
「……どうよ? ちったあ進展あったんか」
「むっちゃ興味津々じゃん……まあ、この前海にデート行ったぐらいには」
「ほう!」
キャベツどうしよう……と悩んでいると、何やらじいちゃんがきょろきょろ辺りを見渡したかと思うと、俺にこっそり耳打ちするように遥さんとのことを聞いてきた。
さっきのはばあちゃん居ないか確かめてたんだな。居たら孫に何聞いてんの! って怒られるだろうし。
なんつーかじいちゃんって、ポーションでちょっと若返ったこともあって、ちょい悪おやじ? みたいな雰囲気があるんだよな。昔はこんなキャラじゃなかった気がするんだけど。
猫でも被ってたんだろうか。
「でもさ、意味わからんことに恐竜が出てきて結局……じいちゃん?」
デートの時のことでもちょっと話そうかと思ったら、じいちゃんはどこか遠くを見るような目で空を見上げていた。
なんだろうね? 孫がすっかり大きくなって……とか考えてるんだろうか。
それともすっかり元気になって、普通に過ごしているのを知って……とか。
……あの時は色々と迷惑をかけてしまったし、そのうちもって良い報告出来るようになりたいものだ。
今はバレンタインのチョコを貰えるかどうかで必死になっている孫だけど。
あ……またバレンタインのこと思い出しちゃったよ。
ま、いいかあとはなる様になーれだし。
「……ひい爺ちゃん、か」
「じいちゃん???」
ちょっと気が早すぎませんかねえ??
色々すっ飛ばし過ぎだろがい!




