「341話」
「いやあ新しく作った施設がやっと盛況になってくれてうれしくてね! 見学ついでに広報用の動画を撮りにきたんだよ!!」
「なるほど?」
俺がアマツを訝しげに見ていると、アマツはそれを気にした様子もなくすごい笑顔で話しはじめた。
やはりこの訓練施設はよほどニッチなものだったのだろう。
人がなかなか集まらずしょんぼりしていたところにこの盛り上がりだ……アマツがはしゃぐのも仕方のないことだ。
てか動画ってもしかしてもしかしなくてもあの大惨事をってことだよな?
そして広報用ってぐらいだから、一般に公開するってことだよね??
大丈夫? 下手すりゃ俺のドラゴン戦よりやばい映像になりそうだけどさ。
「そんなわけで、皆の訓練風景を掲載してもいいかな!!?」
はたして俺の心配はアマツには伝わらなかったようである。
もう満面の笑みを浮かべて、にっこにこしながら皆に許可取り出したよ。
てか声でけえ。
近距離なせいで耳がキンッてなったぞ……。
「顔が出ないのであれば構わない」※意訳
「うちもそれで構わんが婿殿は?」
「あ、はい。問題ないです」
「ありがとう!!」
まあ、ほかの人がOK出しているし、俺も顔が出ないのであれば別に反対する理由もない。
……うっかり動画を見てしまった人がショックを受けてしまうかもしれないが、それは別に俺の責任じゃないし……ちょっぴりあったとしても、30人のうちの1人だし、ほぼ無実といって差し支えないだろう。
うん、問題ないねっ!
「ああそれと」
と、俺が脳内で議論を繰り広げていると、ふいにアマツがぽんと手をたたく。
なんぞ、まだ何かあるんだろうか。
「ユニークモンスターについては前向きに検討するよ!!当てもあるしね!!」
アマツの言葉に周りの人らから一斉に歓声があがる。
当てもあると言っているので、この前向きに検討するってのは断るのを前提に話す日本人的なあれとは違うのだろう。
なのでそう遠くないうちにダンジョンにユニークモンスターが実装されることになると思う……しかし、アマツの当てねえ?
……なんか一瞬自宅にいる生首のことが頭をよぎったが、あれはまあたぶん違うだろう。
何せ生首だし、まともに戦闘はこなすことはできない。
せいぜい対峙した相手の心に傷を負わせるぐらいのもんだ。
ろくなもんじゃないな!
その後、しばらく飲み食いを続けていたけれど、さすがにもうお腹一杯ということで解散となった。
酔いつぶれとかじゃないのが怖い。
「ただいまー……」
色々あって肉体はともかく精神的にへろへろになっていた俺だけど、どうにか自宅にたどり着いた……ただ大分遅くなってしまった。
ギリギリ日付はまたいでないけれど……クロはさすがにもう寝ているかな?
「あ、まだおきてた」
と、思いリビングに入るとクロはソファーの上で毛づくろいをしていた。
眠そうな感じもないので、単に寛いでいるだけだろう。
「疲れた……むん」
ただまだまだ平気そうなクロとは違ってこっちはだいぶおねむだった。
なのでクロのそばに寝転がるとそのままモフリとお腹に顔を埋める……すぐさま抗議の肉球パンチがべしっと飛んでくるが、そこまで威力はない。
まだ本気で嫌がってはいないのだろう。
俺はそのまま顔を包む幸福感を味わうよう、ゆっくり息をして……。
「いでっ!?」
喉元への猫キックで目を覚ます。
どうやらうっかりそのまま寝そうになっていたようだ。
下手すりゃよだれとかついちゃうし、さすがにクロもそれは許容できなかったらしい。
「あー……ごめん。まじで寝るとこだった」
ぷりぷりと怒るクロに謝ると、クロは仕方ないな次はないぞ?と鼻をならす。
まあ、そうは言いつつもたまになら許してくれるあたりまじ天使なのだが……っと、それはさておき。
「ねえ、クロ。アマツさんがさダンジョンにユニークモンスター追加するらしいんだよね」
さっきの出来事をクロにも共有しておこう。
「何来ると思う?」
俺の想像があたるのは嫌なので、クロにも聞いてみるがかえってきたのは「うにゃ」と短いこたえだけだった。
「そりゃそうだよね」
ようはアマツの考えることだから分かる訳もないとのこと。
なんというか、俺とかの予想の斜め上をいくというか……斜め下というか。
とにかく予想がつかないのだ。
何せデートスポットに恐竜とか出してくるからな! しかも夜のいい感じの時間帯に!
「むう」
予想はつかない……が、ただ気になるのはある。
さっき頭によぎったあれだ。
もちろんアマツが生首をダンジョンに投入することはないだろう。そもそもアマツ本人が絶対嫌がるし。
ただねえ……アマツがいて、生首がいて……おそらくほかにもいるはずなんだよなあ。
こう、下っ端とかを無理やり投入とか……ないよな?
アマツに聞けば分かるかもだけど、教えてくれるかは分からない。
そうなると……。
「んん? なんだねなんだね? 私に聞きたいことでもあるのかねえ??」
「ないわ。煎餅でもくっとれ」
「おうっ!?」
ちらっと部屋の隅でぴこぴこゲームで遊んでた生首に視線を向けると、なんか妙に食いついてきたので思わずお土産の煎餅をすこんっと頭に当ててしまった。
「……なあ」
「ん? ……なんだい、やっぱり聞きたいことがあるんじゃないか」
そのまま聞くのはやめておこうかと悩んだが、やはり気にはなる……ので、ぼりぼりと煎餅を食べる生首に、声をかけるとにんまりと嬉しそうに笑みを浮かべ、近寄ってくる。
……生首が近寄ってくるのって冷静に考えるとホラーだよな。
まあ、いまさらだけど。
それよりもさくっと気になることを聞いてしまおう。
まずは他にもいるのかどうか、次にユニークモンスターのことを聞こうかな。
素直に答えるかどうかは微妙だけど、食いつき加減からしてこたえそうな予感はする。
「お前みたいなのって他にもたくさんいるのか?」
「いるよ?」
「…………いるんだ、これがたくさん」
「何やら失礼なこと考えてないかい?」
あっさりかえってきた答えに思わず頭を抱えそうになる。
アマツがいってた当てという言葉からして、自分でダンジョンにモンスターを用意する訳じゃないと思うんだよ。
たぶん他所から引っ張ってくるとかなんじゃないかな……アマツのお仲間的なのを。
「どうだろうねえ。おそらくアマツが頼んだとしてもやる奴は居ないと思うよ?」
と、思ったけど生首曰くそうはならないようだ。
そうなると……ダメだ。眠くて頭がまわらん。
後日考えるか……そのうち実装されたら分かることだし、忘れておくか。
とりあえずは今日は寝ておくとしよう……さすがにつかりた。




