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時空戦艦『大和』  作者: キプロス
第11章 戦時の大和~1947年
155/182

第149話 第一次ハワイ沖海戦(後)

 第149話『第一次ハワイ沖海戦(後)』



 【1947年、それは運命の年だった。遂に大日本帝国はアメリカとの戦争に舵を切り、生存を賭けた戦いにその身を投じることとなったのだ。それは限りなく多くの命を犠牲とするであろう悲劇的な大戦へと発展することは想像に難くなかった。実際、そうなってしまったのだから、私が背負うべき責任はあまりにも重かった。私はそのことについて日々後悔し、懺悔を続けている。だがあの日――日米開戦の戦端となった3月1日に「遂行した任務について後悔しているか?」と聞かれれば、私はその日を「意味のある日」であったと答えるだろう……】


 (伊藤整一口述回顧録/第18部1章『太平洋戦争』より抜粋)



 1947年3月1日

 アメリカ合衆国/ハワイ準州


 「圧巻だな……。アメさんの空母は」

 オアフ島北方約170海里上空。そこで帝国海軍の関行男少佐は、眼下に広がるエセックス級航空母艦『レキシントンⅡ』の巨躯を二式艦上攻撃機『流星』の風防越しに確認した。目を見開き、思わず感嘆の声を漏らす彼だが、数十秒後には突撃態勢を整えるまでに至っていた。

 関行男は史実では帝国海軍の艦爆・戦闘機パイロットという人物だった。1938年、海軍兵学校に入学、そして3年後となる1941年に卒業を果たしている。その兵学校の同期には『管野デストロイヤー』の渾名で有名な豪傑パイロット、管野直もいたという。そしてその2年後にあたる1943年には、霞ヶ浦海軍航空隊に入隊。翌1944年には艦爆の訓練課程を修了させて霞ヶ浦航空隊の飛行教官に。更にその後は台南空、第二〇一空等の海軍航空隊に配属され、南方で戦うこととなったのである。しかし戦況悪化や資源不足に伴い、徐々に敗北の道を歩み始める1944年末期に関は『神風隊』――と呼ばれる帝国海軍初の特攻攻撃隊の隊長となり、1944年10月の『レイテ沖海戦』において彼は僚機とともに米艦隊に特攻攻撃を仕掛け、『真の意味で『一億総特攻』の魁として散華したのだ。

 しかし大日本帝国がEU(ヨーロッパ同盟)の一員としてソ連と戦った今物語において、関は特攻部隊を率いるのではなく、本業の艦爆隊を率いた訳だった。関雷撃・爆撃の双方を可能とする『流星』を巧みに操り、米海軍の新鋭空母『レキシントンⅡ』に迫り来るその姿はまさに勇ましく、優雅であり冷酷でもあったのだ。

 「急降下爆撃用意! 高度維――くそッ!?」

 無線を握り締め、そう下命しつつ何食わぬ様子で視線を上げた関は、猛然と迫り来る灰色の機影を目前に、慌てて操縦桿を押し倒し、右フットバーを力の限り蹴り込んだ。一閃、赤色の火箭が左手を貫くようにして通過し、それに続いてF6F『ヘルキャット』戦闘機の機影が一瞬のうちに駆け抜けていった。

 「……やれやれ、かな」

 敵機との思わぬ邂逅に冷や汗を隠せない関だったが、制空隊所属の三式艦上戦闘機『紫電』の活躍によって米海軍機は一掃され、その視界はオアフ島の澄んだ碧空を取り戻した。高度4000mの高みから翼を翻し、眼下の『レキシントンⅡ』めがけて二式艦上攻撃機『流星』はダイブした。

 「五式50番爆弾――投下ッッッ!!」

 エリコンFF25mm機銃とボフォース40mm機関砲が奏でる旋律をもろともせず、関を始めとする『流星』は群れを成して上空から雪崩れ込んだ。刹那、複数の五式50番500kg対艦爆弾が投下され、空母『レキシントンⅡ』の飛行甲板に降り注ぐ。艦橋が崩壊し、飛行甲板上で次々と爆発が引き起こされた。無論、その被害は飛行甲板が使い物にならなくなっただけでは済まず、艦内にも甚大なダメージが及ぶ。ダメコンチームの出動で消火は比較的早かったものの、機関部への損傷と浸水についてはどうしようもなく、飛行甲板も滅茶苦茶となっていたため、『レキシントンⅡ』艦長は総員退艦を下命した。

 数十分後、空母『レキシントンⅡ』は流星艦攻隊の航空魚雷による第2波攻撃によって――撃沈された。エセックス級空母もそうだが、米空母は水中防御に難があり、更にトップヘビーが祟って復元性も劣悪だった。更に実戦において空母への雷撃・撃沈を経験していなかった今物語においては、エセックス級空母における水中防御対策はさほどなされておらず、今回のような結果となるのは当然と言えるだろう。

 500kg爆弾8発・250kg爆弾4発・九一式航空魚雷4発の爆弾計12発、魚雷計4発の爆雷撃を受けて撃沈された『レキシントンⅡ』に対し、同級空母で初期型たる空母『ハンコック』もまた、同様に帝国海軍艦攻隊の猛烈な爆撃と雷撃を受け、満身創痍の状態に陥っていた。懸命なダメージコントロール作業が行われたものの、九一式航空魚雷2発の雷撃で早くも機関部を破壊され、数ノットしか出せなくなった『ハンコック』にもはや明日は存在し得なかった。数分後、雷撃の1発が弾薬庫に誘爆。突如、大爆発を起こした。その船体内部はズタズタに引き裂かれ、飛行甲板は粉砕され、『ハンコック』は見るも無残な光景へと変わってしまった。

 そして数分後、『ハンコック』艦長は『レキシントンⅡ』同様、総員退艦命令を下したのだった。



 「敵機接近ッ!! 数50ッッ!!」

 米海軍第8艦隊がエセックス級空母2隻を喪失する中、帝国海軍第八艦隊でも甚大な被害を被っていた日。空母『サラトガ』、『インディペンデンス』の計2隻の米空母を瞬く間に喪失。更に戦艦『ネバダ』、『ニューヨーク』、『アーカンソー』、重巡洋艦『ペンサコーラ』、駆逐艦3隻が撃沈された。そして現在、その攻撃の魔手は帝国海軍第八艦隊旗艦――空母『幻龍』にまで迫っていたのだ。

 「対空戦闘用意! 対空砲撃ち方始めッ!」

 東の空を埋め尽くす胡麻粒の点々は、時を重ねるごとにその大きさを増し、形を含み出す。やがてそれがF6F『ヘルキャット』、F4U『コルセア』、F4F『ワイルドキャット』、SB2C『ヘルダイバー』、TBF『アベンジャー』の戦爆連合だと気付く頃には、既に空母『幻龍』とその直衛艦の対空砲火は始まりを告げていた。無数の曳光弾が天を駆け上り、米軍機の鋼のわき腹を抉り抜く。刹那、上方より突如として出現した帝国海軍の『紫電』がその頭上より鋼鉄のシャワーを浴びせ掛けた。天と海、双方からの激烈な攻撃に敵戦爆連合の編隊は次々と崩れていく。

 しかし米海軍はそれを持ち前の物量で補い、力押しで突き進む。数は着実には減るが、それはそこまでの話。壊滅などには至っておらず、逆に米海軍戦闘機の反撃を受けて撃墜される『紫電』が多数出ており、むしろ押されそうなのは帝国海軍の方だった。

 「相手はノーガードのボクサーだ」

 空母『幻龍』防空指揮所に立ち、眼前の激戦を見据える第八艦隊司令長官の藤伊一大将は、静かに呟いた。「防御を犠牲にしている分、撃たれ弱いが相手に向ける攻撃が強いのは明らかだ……。正直、これを防ぎ切れるかは疑問だな」

 敵戦爆連合はまるで大津波の如く艦隊上空を一瞬にして飲み込み、やがて艦艇へと殺到し始める。刹那、耳を劈くサイレン音が戦艦『ペンシルベニア』を支配し、上空に多数のSB2C『ヘルダイバー』艦上爆撃機がその姿を現した。900kg爆弾を搭載したそれは、1946年度までに幾多もの近代改装を施されたとはいえ、旧式戦艦たる『ペンシルベニア』には荷が重過ぎる相手であった。本来ならば重厚なエアカバーを以て対空砲で牽制するのが基本戦術だが、それも空母撃沈や航空兵力不足でままならなかった。

 「敵機直上ッッ!! 総員衝撃に備えぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」

 戦艦『ペンシルベニア』艦長の久保田俊道大佐は防空指揮所で絶叫し、慌てて身を屈めた。その眼前には8機のSB2C『ヘルダイバー』。そのパイロット達は次々と急降下を開始し、レバーを勢い良く引いた。次の瞬間、SB2Cから900kg爆弾が分離され、宙を舞う。それを追うが如く放たれる無数の曳光弾。その苛烈な対空砲火の前に2機のSB2Cが撃墜されたものの、900kg爆弾の降下が止まる訳でもなく、2000ポンドの衝撃が戦艦『ペンシルベニア』の船体に次々と直撃する。その一つは防空指揮所にも命中し、久保田艦長とその幕僚達は等しく戦死した。また艦橋が倒壊、各部砲塔や機関部にも甚大な被害を受け、『ペンシルベニア』は撃沈された。これにより帝国海軍第八艦隊は全4隻の戦艦を喪失した。

 「報告します。戦艦『ペンシルベニア』が撃沈されました」

 「……これで4隻の戦艦を失ったか」

 空母『幻龍』にて、駆逐艦『ランドルフ』からの報告を伝令兵から聞いた藤伊はそう呟き、彼方にポツポツと立ち昇る黒煙に目を向けた。戦火はすぐ傍まで迫っている。決断の時は近いだろう。そう考えた藤伊は隣に立つ伊藤に顔を向け、口を開いた。

 「……乗員の救助と敵の攻撃に耐え切った後、全速力でトラック諸島まで離脱する」藤伊は言った。「ハワイにおける作戦目標を達成し、敵空母2隻を撃沈した今、これ以上の戦闘行為は無意味だ。元々スクラップにする艦艇は惜しくは無いが、優秀な水兵を喪うのは辛いからな」

 それに対し、参謀長の伊藤中将は渋面を浮かべた。

 「トラック諸島までの航路には敵潜の哨戒ラインが幾つも存在します。旧式戦艦が撃沈された分、艦隊速度を上げることが出来るとはいえ、鮫の海の只中を突っ切るというのはそれなりのリスクを伴うかと」

 「全滅よりはマシだ。空母が標的にされるかもしれんがな」

 藤伊は言った。

 「閣下がそう仰るのならば」

 「では決まりだ」



 真昼の日差しは米海軍第8艦隊旗艦『ニューハンプシャー』防空指揮所にて戦闘指揮を執るレイモンド・A・スプルーアンス大将の頭上へと強烈に照りつけていた。彼は蒸れた頭に鉄兜を被り直し、再び双眼鏡を掲げる。水平線の彼方には無数の黒点と、いくつかの黒煙の筋が確認出来る。スプルーアンスはその都度、戦果報告を確認しつつ頭の中で作戦計画を構築し、戦闘指揮を続けていた。

 「戦艦4隻の撃沈か……。これで相手の砲撃戦力を全て奪い取ったことになる」

 スプルーアンスはそう呟いた。

 「正規空母2隻の喪失に似合う戦果です」参謀長のトーマス・C・ウェイン少将は言った。「このまま押せば、更に多くの敵艦艇を撃破することが出来るでしょう。しかし、報告によると我が艦隊も航空機150機近くを喪失しており、その点での見極めも重要かと思われます」

 「パンチを受け過ぎたか……」スプルーアンスは痛烈に反省し、溜息を吐いた。「しかし、ハワイの陸上航空兵力が到着すれば、その問題も一挙に解決する。ここは地の理も活かし、多少の犠牲は承知の上で敵に大打撃を与えることが肝要というものだろう」

 両司令官の方針はここに対極を成した。即ち――退却と進出である。その命運を分けるのは、時間であった。第八艦隊が撤退の態勢を整え、トラック諸島に逃げ切るまでの時間と、ハワイからの増援が第8艦隊へと到着するまでの時間だ。そこから考えても、この“時間”を制する者がこの海戦を制するといっても過言では無いだろう。

 最初に行動を起こしたのは第八艦隊であった。駆逐艦がフル活用され、対空火力の増加と救助活動への人員増援が行われたのだ。更に生き残った空母2隻では、敵艦隊攻撃から帰投した機体の速やかな収容作業が開始され、いよいよ撤退の準備が進められた。

 一方で、米第8艦隊は残存の航空兵力を集め、第2次攻撃隊の編成と兵装の搭載作業を開始。スプルーアンスは犠牲覚悟の上、第八艦隊への第2次航空攻撃を画策したのだ。また、潜水艦部隊が第八艦隊の背後へと回り、退路を断たんと水面下で行動を起こしていた。これが成功すれば、たとえ退却が成功したとしても多大な被害を第八艦隊を被るのは想像に難くなかった。

 しかしそのことは藤伊も承知していた。彼は随伴していた潜水艦部隊と駆逐艦を差し向け、米海軍の鮫対峙を開始する。これによって退路の憂いを断つことに成功はしたものの、已然として危機が去った訳ではなく、むしろ追い詰められていることに変わりなかった。

 「敵機接近ッ! 数20!!」

 見張り員の絶叫と同時に藤伊は頭上を見上げ、愕然とした。そこには急降下の態勢に入ったSB2C『ヘルダイバー』とF4U『コルセア』の大群の姿があったのだ。紺碧の空を背に襲い掛からんとするその光景は、恐怖そのものであった。

 「対空戦闘始め!!」

 次の瞬間、無数の閃光が空母『幻龍』上空に迸り、空が漆黒に覆われる。そこに『紫電』が突入し、空を蹴立てて敵戦爆連合に苛烈な攻撃を加えた。

 「守り切れぇぇぇぇぇッッ!! コイツを失ったら、本土の奴らに申し訳が立たんぞッ!!」

 藤田怡与蔵少佐は叫び、操縦桿の機銃スイッチを目一杯押し込み、20mm機関砲の銃撃をF4U『コルセア』の逆ガル翼に叩き込む。と同時にF4Uの主翼は真っ二つに切断され、火を噴きながら悲鳴を上げて墜ちていく。そんなF4Uを背に藤田は更なる獲物を探し、空を疾駆していった。

 『敵機直上! 急降下ァァァァッ!!』

 SB2C数機が『幻龍』直上から急降下を開始する。その胴体には900kg爆弾が積まれており、直撃すればただでは済まないだろう。

 「面舵30!」

 艦長が叫ぶ。ボイラーが悲鳴を上げ、強烈な蒸気によってタービンが回転。30ノット以上の快速を得た排水量4万tの巨艦は大きく右に傾き、900kg爆弾の雨から逃れようとした。数秒の後、回避行動を始めたところで2発の900kg爆弾が後部飛行甲板に直撃。収容作業を行っていた乗組員と収容機体を吹き飛ばし、その飛行甲板に大きな穴を穿つ。それは格納庫まで到達したものの、開放式格納庫を採用していたこともあり、被害を最小限に抑えることに成功した。

 「各部被害状況知らせ!」

 『第2格納庫命中ッ! 火災発生中!』

 『機関部に損傷。されど被害は軽微なり。修繕作業中!』

 開放式格納庫と自動消火システム、そして艦内区画化による被害の分散により、その攻撃は最小限の損害に抑えることが出来た。とはいえ敵はそんなことは気にもしていないし、更なる攻撃を加えてくることは当然のことだった。第2陣のSB2C『ヘルダイバー』が豪快な急降下を以て900kg爆弾を投下した頃には、第2格納庫の消火作業は大方完了していたが、その攻撃によって無駄に終わることとなった。

 『第2格納庫命中!! 弾薬庫誘爆ッッ!!』

 「何だとッ!?」

 火災はその勢いを増し、第2格納庫を煉獄へと変えていく。ダメコンチームも増員を図ってこれに対処しようとしたものの、そんな努力を嘲笑うかの如く火の手は強くなり、やがて格納庫全体を呑みこんでしまった。ホースによる放水も焼石に水を体現するかのように意味を成さなかった。

 『左舷雷撃機接近ッ!』

 「クソッ……面舵30!」

 全長270m以上の巨艦が全長13mにも満たないTBF『アベンジャー』雷撃機に翻弄されるというのは、航空母艦の脆弱性を実に証明していた。TBF編隊は海面すれすれを飛び、計8本の航空魚雷を投下。その航空魚雷は鮮やかな航跡を描き、『幻龍』左舷から真っ直ぐに迫り――そして直撃した。

 『魚雷直撃ッ!! 左舷機関停止!!』

 遂に『幻龍』の命運も尽きようとしていた。左舷機関室に魚雷が直撃し、航行不能に陥ったのだ。動けない空母など、もはや“大きな的”に過ぎない。藤伊は決断した。

 「艦長……このままだと……」

 「分かっております……。総員……退艦命令」



 炎上し、沈みゆく空母『幻龍』を背景に遠ざかる一隻の艦影。それは重巡洋艦『ソルトレイクシティ』だった。その前部甲板には、『幻龍』から救助された乗組員でごった返している。その集団の中には第八艦隊司令長官の藤伊一大将と参謀長の伊藤整一中将の姿もあった。

 総員退艦命令発令の後、『幻龍』は自沈された。米軍に第八艦隊の存在や、帝国海軍の技術を与えないための対応策だった。なのでその気になれば曳航して回収することも可能だったのだが、トラック諸島への速やかな撤退には足手まといなのは明白であり、苦肉の策として自沈命令が下されたのだ。それは『日ソ戦争』に勝利し、北方に一大植民地を築いた大日本帝国の経済・工業力としても看過し難い行為であった。

 とはいえ、この空母『幻龍』自沈の後、第八艦隊は撤退態勢を万全として速やかに戦域を離脱、トラック諸島に向けて針路を取った。途中、米潜水艦の攻撃を受けて駆逐艦1隻が撃沈されたものの、それ以外には何の支障もなく、第八艦隊はトラック諸島へと到達することに成功したのだった。



 1947年3月1日。大日本帝国はアメリカ合衆国に対し、宣戦を布告。EU(ヨーロッパ同盟)は大日本帝国のEU除名さえ決議しなかったものの、英仏を始めとする主要国は中立を表明。対して独伊は米国に対し、宣戦布告を表明、ここに日独伊対米国の構図が成立したのだった。なお、『真珠湾攻撃』についてはワシントンDCの駐米日本大使館より攻撃1時間前に宣戦布告を大統領に伝えていたが、米マスメディアはこの行為を“卑劣な奇襲攻撃”として痛烈に批判し、史実までとはいかないものの、国民世論に強い反日意識を植え付けることに成功していた。結局、歴史は繰り返されたのだ。


 そして3月1日未明、ハワイ準州オアフ島近海にて勃発した今回の日米艦隊の衝突だが、大本営発表には出されなかった。理由は多々あるが、もっとも大きいのは第八艦隊の情報秘匿にあった。今回の海戦後、トラック諸島に到着した第八艦隊は解散。艦艇は本土に戻って全艦スクラップにされ、乗員達は各艦隊に編入。更に第八艦隊の存在を示す記録文書の一切が処分された。『大和会』とともに逆行してきた『夢幻の艦隊』――その艦艇によって構築された第七・第八艦隊の存在は闇に葬られたのだ。


 一方、米国政府は同日オアフ島近海にて勃発した海戦を『ハワイ沖海戦』と呼称し、大々的に公表した。何しろ敵戦艦4隻、空母3隻、重巡洋艦1隻、駆逐艦5隻を撃沈したのだ。この大戦果を公表しない方がおかしいというものだった。この大戦果に気を良くしたトルーマン大統領は、太平洋艦隊司令長官ウィリアム・S・パイ大将を更迭し、後任としてレイモンド・A・スプルーアンス大将を指名。第8艦隊の後任にはアーサー・W・ラドフォード中将が着任した。ここに米海軍太平洋艦隊はスプルーアンス・ハルゼー・ラドフォードの三巨頭体制が完成したのである。



 ――かくして異なる歴史を経て、ここに『太平洋戦争』は開戦を迎えた。




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